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親友殴りに異世界へ  作者: ヒナの子
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第二十七話 魔王 親友編

彼は小さい頃、親友の父親の行方が分からなくなった日。彼の運命は狂い始める。


その夜彼は夢を見た。雑風景な白い部屋。

そこには自分ともう一人、女性の影が一つ。


何かを女性が叫ぶが、それも虚しく彼は聞き取ることが出来なかった。


「逃げなさい!」その言葉を。


彼は女性の影がきえ、一人の少年、彼より少し年上の幼顔の少年が現れた。

その少年は彼に言った。


「助けてくれないか?」と、その声は心に響き残る酷く冷たい声だった。

しかし、純粋な彼はそんな事を疑いもせず救いの手を差し伸べた。


同時に人格が掌握された。彼は少年を認識することが出来ず、、、一人となった。


ある夜、彼はいつもは親友や彼女を呼ぶその部屋に呼び出された。


あの時の少年。寸分変わらない姿で歩み寄って来て彼の心そのものに手を伸ばしてくる。


その化け物は力が回復し彼の人格を作り変え、自分の人格で塗り潰す。


そして完全に少年となった彼は別世界でかつての親友を殺すために魔王になった。



本当の目的に気付かず、疑問も何も抱かずに、、、、






空中魔城ガルザ…

完全に隔離された虚空に一つの城が浮いている。



「魔王様、異界の干渉があったと思われます。四人ほどこの世界に迷いこんだかと。」


女の魔人が豪華な席に座っている男にこうべを垂れている。


「そうか、エデンかアンセムか。まあいい、

場所はどこだ。」


「一つはすぐに領域内から離脱し、それを追うようにもう一つも離脱されました。

後の二つは防壁都市の辺境の村に滞在しています。」


防壁都市、人類が持つ唯一つの都市。


「映像は無理なんだな。」


「はい、申し訳ありません。」


「いや、分かっていたことだ。俺が見てこよう。」


「そんな!魔王様にそんな事をさせる訳にもいきません!」


「俺が決める。」


冷たく放たれたその言葉と視線に気圧され、女の魔人は押し黙ってしまう。


「も、申し訳ありません。出過ぎた真似でした。どうかお許しを。」


「ああ、いい。もう退がれ。

それと後の二人もいつでも呼べるようにしておけ。」


「は!有難き御言葉。失礼します。」


ヒュン。一礼してその場から消え去る。



「俺は、、、、時は来る。宝玉も後一つ、

まあ、今日は偵察だけだ。」


かつての親友、最も殺意が沸く相手の顔を思い浮かべ不敵に口角を上げ、部屋を出た。


異世界からの奴らが敵と成り得るか見定めるために、危険かどうかを見定めるために。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「彼は大丈夫なのか?」


ある小屋の一室。一人の少年が寝込んでいる隣の小屋を見ながら彼女達は深刻な顔を見合わせている。


「分からないわ。彼は置いといて私達はどうすればいいの?」


彼女は少年の問題を最優先とはせず、先の事を考えている。


「そうか。私達、人間側に世界を越えるほどの空間系の異能を持つ人はいないわ。魔人側なら分からないけど。」


「他に魔道具とか、手段はないの⁈」


「魔道具というのが何か分からないけれど、

遺跡の遺品、それも二大迷宮の最奥の宝具と言われるものなら、、でも、二大迷宮の最奥に辿り着いた人はいないわ。」


この世界は魔法を使える人が少ない。全体の三割にも満たないかもしれない。

彼女は三将と言われる最強の異能者の一人だ。今は魔人達が攻めて来た時用の防壁の守護のためこの地に留まっているらしい。


「そう、今すぐに戻るという訳には行かなそうね。彼の様子を見てくるわ。」






コンコン。

ノックの音が聞こえた。

誰が何かを言い扉が開く。


どうでもいい。何もかも。

彼は親友が世界を渡る術を持っていて今も地球にいるかもと微かに思っていた。

親友に純粋な殺意を向けられたあの日から心の大部分で、親友に恐怖を抱いていた。


彼は五歳の時、親友と出会った。気が弱そうな感じだったが、一緒に遊んでいるうちに明るくなり、すぐに友達になった。

親を亡くした時もいつも隣で支えてくれた。

中学に入ってからは二人ともクラスの中心にいた。そんな親友が失踪したと聞いた時は嘘だと思いあらゆる所を探した。


そんな親友はこの世界にいる。

嬉しくない訳じゃない。決して嬉しくない訳じゃない、、、はずだ。

親友の名前を聞いた時、彼は心にトドメを刺された。

二度目の人生で出会った幼馴染が危険にさらされている内情を一瞬で伝えられた。それがもたらす精神へのダメージは並ではない。そして戦場からの離脱からの混乱。


溜まりに溜まった精神への負荷が爆発し彼の心を折った。


「答えてくれないのね、れ、弥。」


そう親友に何があったのか記憶の中の親友は答えてくれない。答えが見つからない恐怖に彼の心は埋め尽くされていた。




「その様子だとダメだったのね。」


「ええ、どこか上の空で一言も話してくれませんでした。」


さっきの小屋ではなく外に出ている。子供達はもう寝ている時間だ。


「そうか。悪い事をしてしまったかな。」


「何度も言っていますが、千代さん。貴女に非は全くありません。彼自身しか解決できない問題ですから。それより魔王が現れたのはいつ頃ですか?」


「二ヶ月ほど前だったかな。人間の持つ都市が一つになった日だった。魔人達を率いて水上都市を潰し宣戦布告に来やがった。」


水上都市は潰した。次はお前達だと。

三将は王都に集まっていたので一斉に攻撃したが、全て無効だったらしい。



「今すぐに襲われる可能性はないの?」


「イーリス!出て来たの?」


「ええ、あの時からずっと顕現しているわ。それよりも今すぐに攻めてくることは絶対にないの?」



「ええ、そうそう魔人が攻めてくることはないわ。攻めて来ても魔物達でしょう。まあ、

小手調べと言うところ。」


「では、いつ頃始まると思われますか?」


「後一カ月もすれば攻めてくるだろう。

現状は絶望的だな。」


「そうですか、何か対抗策はあるのですか?」


「対魔砲と言うものがあるが、全ては王都にある。」


「そんな⁈一日も攻められたら持たないわよ!」


「そうです、何か弱点はないんですか?」


「それは、夜しか」


ザッ!


三人が一斉に戦闘態勢に入る。三人の目線の先は壁の上空にたたずむ一つの影だ。


「俺の名は村秋泉。アマネ、アンセム、エデン、この中で聞き覚えはあるか?」


バン!


「泉!」


「クッ、ハハハ!アマネ!よくぞ来たな!

三日後、全兵力を持って人類を殲滅する。

首を洗って待っていろ!」



虚空に浮かぶ城に王が帰還し、戦争の号令がかけられた。


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