第二十四話 愚王 帝国崩壊編
「ん、、ど、どこだここは?」
確かレビンとシャルロットがすごいスピードで移動して呆気にとられて、ここにいた。
「レスティア。」
牢屋のようなところだ。隣にはレスティアがまだ気を失っている。
彼女はまだ何も、知らないだろう。
自分達の正体を、力を、その力を使えばこんな牢屋から抜け出し無傷で元のところまで戻れるだろう。
「ん、、アレス?」
微かな自分を呼ぶ声で頭が冷える。
まだその時ではないと。
彼の中に巣食う悪魔がまた奥に沈んで行った。
「おはようレスティア。
怪我はないか?」
「うん。ここは?」
「分からない。僕もさっき目覚めたところだよ。」
「魔法で抜け出す?」
「うん、そうだね。僕がやるよ。
デスフレイム。、、無理みたいだね。」
業火の焔、本来の力ではない。
火が牢屋の柵に当たる寸前に消滅してしまった。
「大人しく助けを待とうか。
気づいたら誰か来てくれるよ。」
そう言って二人、少年は落ち着いて、少女はパニックを必死に抑えて、静かに牢屋で佇むことにした。
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エリスは、家族の次に出会った友達だ。
今までずっと一緒にいた。
家族と同じくらい大切だ。
少年は身に妖精の力を宿し、擬似的な魔眼を得ていた。
精霊の目
空間把握能力の向上。
この能力で少年はエリスを見ながら向かっていた。
「エリス!父さん!」
「レビン。無事だったか。
今から王を追う。お前はイルダーナのとこに行け。レビィアは俺とこい。」
「はい。エリスをお願いします。」
「ええ分かったわ」
「行くぞ!」
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「はぁ、はぁ、あの化け物共め。
本当にこの世界が救われるんだろうな!
こんな予定じゃなかった、どうなってる!
答えろフォビルート!」
王は王の間で虚空に向かって叫ぶ。
「仕方ないですよ、彼はイレギュラーですから。それより何体解放できますか?」
虚空から音もなく元々そこに居たように、
白マントの男が現れる。王を哀れな家畜を見る目で見下ろしている、しかし王はその事にも気づかないほど焦っていた。
「四体だ。か、解放するのか⁈」
「ええ、貴方にしかできないこと、貴方にしかこの世界は救えない。」
「今すぐか、、いや、今すぐやろう。
コード・禁書目録・リベラシオン!
解放されよ七龍帝!」
鎖が硬く巻き付いていた一冊の本から、禍々しい魔力が吹き出す。
「こ、これで世界は、、」
やりきった達成感に満ち溢れた顔で見上げてくる。笑ってしまう。滑稽すぎる、、
「ク、クハハハ、、悪い。
ああ、お前のお陰で世界が滅亡する!
しっかりと俺達の世界を救ってくれた。
礼を言おう、ありがとう愚王よ。
もう用済みだ。」
グシャ。
肉塊が一つ出来上がる。
「この兵器四体相手では私も危ないですね。
一旦引くとしましょう、、
いい愚王振りでしたよ。さあアンセムよ滅ぶがいい!」
高々と笑い声が王の間に響き渡り、
一つの影が消えた。
「ここは、そうか封印が解かれたか、
フハハハハ!我、第七席ドゥルク目覚めたり‼︎」
雷を纏った龍神が空へ旅立つ。
「ここは、アンセム。
第六席ラプシヌ、殲滅を開始する!」
水を操る龍神が空へ旅立つ。
「やっとか、第五席ヴァーフスキ。
侵略を開始する。」
毒を操る龍神が空へ旅立つ。
「第四席ニーズヘッグ、計画を遂行する。」
壁を破り四つの影が戦場へと旅立った。
異邦から侵入した厄災そのものが。
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「こ、これは、まさか⁈」
「ああ、レビィア、未完成だが復活してしまったな。レビン達が危ない!」
ザッ!
「貴方達ですねイレギュラーと言うのは。
死んでもらいます。」
闇を纏う現最強の生物が二人の目の前に降り立った。
「レビィア、、俺の家まで戻れ。行け!
モード・オプスクーリ!」
目が紅に染まり、体から黒雷がほとばしる。
「そうですか、貴方でしたか!
アンペラールを継ぎし憎き末裔‼︎
殺す!
オプスキュリテ!」
「シリカと同じ、真の固有魔法か。
神聖時剣・ウラノス!
はっ!恨んでいるのはお前だけじゃない!」
闇の太陽を宇宙の様な深淵が切り裂き、
そのまま龍神に襲いかかる。
「常闇の力よ、今こそ我に力を示し、我の力となるがいい。デス・シュバルツ!」
「黒雷・神威!」
深淵の闇と常闇がぶつかり、周りの景色が闇に覆われる。
「グフ、、油断しましたね、、こんな時に同士討ちとは、、、ヴァーフスキ。
後悔しますよ、絶対に!」
そう言って血を吐き、今にも倒れそうな龍神は東の空へ消えた。
「これで俺が第四席だ。お前は何者だ?」
「わ、私は、エリスよ。」
無知なる少女が天使の力を受け継ぎ闇を晴らした。
そこには辺り一面、彼女が守った場所以外、腐敗し、死んでいた。
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「シャルロット、俺達は、、、」
「心配でしょう、行ってください家族の元へ。私は地下の二人の救出に向かいますから。」
その少女は困った様に笑って、
「そんな迷わないでもいいんです。
今は愛する家族の元へ行くのが貴方の役目だと思います。」
「、、そうか、ありがとう。
これが終わったら本当の事を話そう。」
男は教会へ、少女は王城へ、それぞれ全速力で駆け抜けた。




