第十三話 イレギュラー 精霊界編
瀬崎 薫
かつてのクラスメイト。中学からのよしみで
高校でも仲が良かった。委員長などのあだ名をもらうほど真面目で、メガネを付けていた中学では色恋沙汰はなかったが、コンタクトに変えてからは物凄い人気が出た。
そんな瀬崎が目の前で大泣きしすがりついて来ている。
「ちょ、ちょっと落ち着け瀬崎、何でここにいる?」
「あっ、ご、ごめんなさい。朝教室に入ったらなんか裂け目があってそこに吸い込まれたの。」
裂け目俺と同じだ。
「どう言うこと?この子はさっき言ってたチキュウという別世界の人間なの?」
「ああ、こいつは、ってうるさいぞ瀬崎!」
わあわあ喚いている横の子を注意する。
「弥、来たわよ。」
落霊だった。今度も風だった。
「どうやったの?やっぱり魔法なの?
いまの何ですか?さっきも来たんだけど。」
「ああ今のは落霊っていうお化けみたいなもんだ。それと、この世界は魔法があるぞ。
それに俺が住んでいる世界もここじゃない。」
「ちょっと待って?さっきも来たんだけどたていったけどその時はどうしたの?」
「この子が倒してくれたの。出て来ていいよ。」
「むう、苦しゅうなかったぞ。
我の名はシュリア。四聖の一人、天撃のシュリアである。薫と契約した聖である。」
薫は学校用の鞄を持っている。その中から小さな女の子が飛んで来て百三十センチぐらいになった。
「よろしく。弥だ。こっちはイーリス、俺のパートナーだ。」
「ところで四聖ってなんだ?」
「シュリア様⁈契約なされたのですか?」
「ああ。汝は我の名を知っておるな。」
「はい。もちろんです。」
「だから四聖って何なんだってば。」
「神聖に最も近いと言われている聖です。
シュリア様は空の聖と言われています。」
太陽の聖ウルズと同格ってことか。あの太陽と同格には見えないな。てか、人型になるんだな。
「今ウルズと比べたな。彼奴と比べるのは許さん。しかもお前達が見ているのはウルズではないぞ。ウルズの本体はあの太陽の中におるんじゃからな。」
なるほどウルズさんも人型と。
「シュリちゃんそんな態度はダメよ。」
「うー。」
威厳が見られないのは気のせいだろうか?
ただの小学生に見える。
「で、元の世界には帰れるの?夏目君。」
「帰れないと言われた。」
「誰に?」
「精霊王の思念体に。」
「思念体を見たの?」
「どうしたんだよイーリス。」
「精霊王が先代の思念体を見た人を見つけようとしていたの。」
「なんか言ってたな。よし!連れて行ってやろう。」
「そんなこと出来るんですか?」
そうか!連れて行って貰えばそこで選定の儀が行える。
「道案内だけな。」
転移とかそうあまくはないらしい。
日差しが暑い。もう随分歩いた。
だがまだ森を抜けていない。話によると丸三日はかかるらしい。それと一つ勘違いをしていたらしい。この世界の魔力と元の世界の魔力はまったくの別物らしい。精霊界との相性がよければ多くの魔力が手に入るらしい。
二日目、、昨日は野宿した。よく眠れるわけもなく俺は寝不足だが、瀬崎はこの世界に来て疲れていたのだろう、すぐに寝てしまった。太陽はいつの間にか消え、一点の星明かり以外の光源がないとても幻想的とは言えない夜空だった。
「何時頃に教室に来たんだ?」
「五時半ぐらいね。」
「自習か?」
「ええ。」
瀬崎はこういうやつなのだ。誰よりも努力する、そしてみんなに認められる結果を残す。
時間の流れは、地球の一時間が、この世界、アンセムでは一年。親は心配しているだろうか?朝起きたらいきなり息子が消えている。
普通に行方不明になるんだろうな。
「考え事してるの?」
「いやなんでもないよ。それよりまだ森を抜けれないのか?」
「森は抜けれないぞよ。今は森の中心部に向かっておる。」
「元の世界にっていうのはアンセムにってことだよな。」
「そうじゃ。ここはアンセムの中の空間の一つだからの。」
歩き続けて三日目の昼、
「ここですか。」
「ここっぽいな。てか、瀬崎、口調戻ったな。」
顔を赤面させながら。
「あ、あれは忘れてください!誰でも異世界なんかにきてしまったらパニックになるのは当たり前でしょう!」
「お前ら選定の儀にきたのか?」
図太い声がした方を見ると、おっさんが立っていた。やたらガタイが良く威圧感のあるおっさんだ。
「もく爺!久しぶりだな。」
シュリアが飛んでいく。
「爺と呼ばれるほど年はとっていない。
それで二人ともか?二人共すごい魔力だな。」
姿形は選定の儀の時に契約者の魔力の質によって半分以上ランダムで決まるらしい。
精霊は動物など。聖は人型らしい。
「ああ、私の方はイレギュラーだから私と契約する。元の世界に戻るだけだよ。」
安心するとなのか心を開いた相手になのか分からないが、シュリアの口調は色々だ。
「そうか。今さっきもイレギュラーが目の前で裂け目から出てきて今は精霊王と話している。そいつもすごい魔力だった。」
その人も地球生まれの人なんだろうか?
「で、俺の世界には魔力と電力を互いに変換できるものまであってさ。」
懐かしい声、二度と聞こえるはずのない声がした。
「こんなとこで何やってんだよバカ親父‼︎」




