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†中二病で最凶の転生者†  作者: 碧猫
第1章 「始まりの戦争」
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第1章-4 「想源念力(プレアネクスティマ)」

──今から400年程前、魔族と人族が共存していた頃の話。魔族は【魔力】【怪力】【硬力】人族を遥かに上回る力を持っていた。人族は【知力】【術力】【属性力】魔族を遥かに上回る力を持っていた。二つの種族はお互いの弱さを補い種を繋げる為に共存し、人族は知力を尽くし国を発展させ、魔族は力を尽くし国を発展させた。その世界に大きな争いはなく、全ての小さな争いは力有する者達の手により解決してきた。そんな平和が200年続いたある日の事だった。強力すぎる物理的力を持つ魔族を人族は危険と判断し、天使族を召喚し魔族に負けない力を得て魔族を滅ぼす計画『エリヌスの裁き』を立てた。人族は固く禁じられていた天使族の『エリヌス』召喚してしまった。エリヌスは人族に膨大な力を与えた。与えられた【魔力】【筋力】【知力】は魔族の力を遥かに凌駕した。人族はまず、魔族の王を殺した。次に王家の力有る者達を次々に殺した。人族の計画は順調に進み魔族を滅ぼし尽くすと誰もが思った。しかし、魔族の長【魔神族】がその計画を見過ごさなかった。魔神族は力の無い人族を魔族の目の前で次々に処刑した。人族は魔族を殺し、魔神族は人族を殺し、そうして人族と魔神族の始まりの戦争『決別の戦争』が始まった。戦争は3年続き、勝敗は付かずその結果6割りの人族、魔族が死んだ。そして人の畏れから始まった争いは400年経った今も続いている。



────────────────


「物語は以上だ。」


ヴィルは静に目を閉じ話しを終わらせた。

しかし、春華は納得がいかなかった。


「人が戦いを仕掛けたってのか?」


「そうだ。強い力に怯えて禁忌を犯したのは人間だ。そして最初に仕掛けたのも……」


「そんなことって……」


同じ人である春華には信じたくない話しだった。


「その話しだと魔族側の都合の良い話しにしか聞こえないんだよ。魔族だって何かしら悪さしたんじゃないのか?」


「さっきも言っただろ。小さな争いは力を有する者が修めていたと。」


「でもそれは語り継がれて来た過去話しだろ!?誰も真実なんて…」


そう、真実は誰も知らない筈なんだ。

誰かが語り継いできた話に信憑性なんてないのだから。

しかし、


「私たち魔族は長生きする種族なんだ。人族は80年前後の寿命だが、私たちは300年近く生きれるんだよ。魔神族は1000年近く生きるとも言われてる。」


「じゃぁ、この話しは今も生きる誰かが見てきた話だって言うのか?」


「そうだ。それに、人族の言い伝えでも人族側から仕掛けた争いと伝わっているそうだ。」


春華はうつむいてしまう。

信じたくないが信じるしかなかった。


「俺は人間なんだよ…。姿は悪魔でも心は人間なんだ……。」


悔しかった。同じ人がそんなことをすることが許せなかった。

胸が苦しくなり何処にもぶつけられない苦しさが胸に残る。


「いきなり転生されて訳が分かんねぇよ。」


「その転生したって話だが、転生者はこの世界にちらほらいるらしいぞ。」


─!??


春華の肌に電撃が走る感覚がした。

「今何て?」とヴィルに聞き直し、春華は疑問をぶつける。


「俺以外の転生者がいるのか!?」


テーブルに手を着き前のめりになり興奮した様子の春華。


「いる……が、転生者は全て人間だ。ハルカみたいな魔神族の角の生えた転生者がいるという話しは聞いたことがない。」


「俺は紛れもない人間だ。この角は異例か何かだろ?」


「いや、それはない筈だ。」


興奮する春華にヴィルが落ち着いた表情で言葉を返す。


「何故なら転生者は全て天使が召喚するからだ。」


時々出てくる天使がどんな存在なのか分からなかったが、かなりの力が有る存在なのだとは理解できた。


「その天使が俺を悪魔に変えたってか?」


「天使に魔族の召喚は不可能だ。魔力が正反対だからな。」


「なら魔族側で俺を召喚したってことなのか?」


「それはない。転生術式は光の魔力を伴う。そして魔族に光の魔力は存在しない。魔族にとって光の魔力は弱点なんだよ。」


疑問は増えるばかりだ。

何故召喚されて、何故この姿なのか。


「転生者は何故召喚されてくるんだ?それが分からねぇ……」


春華には、ただの人間が召喚されてくる理由が分からなかった。


その問いにヴィルは、


「転生者は魔族を倒す『切り札』と言われてる。」


「切り札?」


「天使が天使者に力を与えるらしい。」


「力?どんな力が与えられるんだ?」


少し興味があった。

春華にとって能力と言う言葉は魅力的な言葉だったからだ。

しかし、春華は能力どころか今の今まで何も感じなかった。


「その力は想源念力(プレアネクスティマ)と人族は言うらしい。」


「プレアネクスティマ?」


「どんな能力かはわからないが、その(プレア)は何の力もない者が魔族を殺す程の力を得られるらしい。」


「俺にもそんな力が秘められているのか……」


「分からないが、ハルカが転生者ならその可能性は高い。」




大体の話しは理解した。

この世界では人と魔族が敵対していて、天使が魔族を殺す為の『転生者』を異世界から召喚すること。

そして春華は人間でも魔族でもないということ。

するとヴィルは、


「ハルカはこれからどうするんだ?」


「どうって?」


「転生者とか人間とか魔神とか以前に、生がある以上生きるための生活は必要不可欠だ。」


なるほど。そこまでの考えに至らなかった。

今からどうするかではなく今どうなってるのかが一番問題だったからだ。


「人にきけば転生者について詳しく知れるのかな?」


「私よりは知ってる筈だからね。それに他の転生者もいるみたいだし。」


「なら答えは決まったぜ!」


春華は転生者について、この世界について、そして『想源念力(プレアネクスティマ)』について詳しく人族に聞くことに決めた。


「そうか、ハルカが悪さしないんなら家に居ても良かったんだがな。」


「いや、流石にそれは悪いよ。人でも魔族でもない俺がいつまでもここにはいれない。」


「分かった。ハルカがそう決めたなら止めはしないよ。」


ヴィルは微笑み春華に言った。


「ありがとうヴィルさん。ほんとに助かったよ。ほんとに…」


春華はヴィルに深々と頭を下げてお礼をした。


「素性の分からない俺なんかを助けてくれてほんとにありがとう!」


「あぁ、こちらこそ、久しぶりに誰かと話ができて楽しかったよ。」


ヴィルは春華の両肩に両手を「ぽんっ」と置きありがとうと言った。


そして春華はすぐさま身支度を始めた。

布団の近くに置いてあった黒い書類バックを持ち、玄関へ走るようにかける。


「またな、ヴィルさん!また会いに来るぜっ!」


「あぁ、またな。」


ヴィルの手を振る姿を背にして春華は玄関を飛び出した。

振り返らずただただひたすらに春華は走った。


───春華の冒険は始まったのだ。

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