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†中二病で最凶の転生者†  作者: 碧猫
第1章 「始まりの戦争」
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第1章-1 「平和は突如として……」

─やっちまった……。


少年は高校生活最後の夢と希望と未来を失った。

就職試験なんて勉強できて喋れれば簡単に受かると思ってた。

いや、普通は受かる、「普通は」

そう、少年は普通じゃない。

何故なら少年は、


暗黒邪王(ダークサイドルシファー)!」


そう、この少年「一之瀬 春華」は中二病だ。

中学二年の時に図書室の本で「ルシファー」と言う名を見て以来、中二病なってしまったのだ。


─いや、ルシファーだよ?堕天使だよ?かっこいいじゃん!イカしてるじゃん?


それ以来春華は自分が悪魔の王になった(ような)気分。

昔から本が好きだったからか勉強はそれなりにできたし運動神経は中の上くらい。

中二病を除けば普通よりスペックの高い男子高校生。


「うん、今日も俺様はかっこいいな」


若干ナルシシストではある。


今日は大切な就職試験だったが、面接試験で質問をされる度に中二炸裂してしまった。

もちろん結果は不合格に違いない。

春華は、自分の中二病の痛さを実感しつつも片道バスで1時間の道をとぼとぼ歩いて帰っていた。

一緒に試験を受けた人とバスで鉢合わせたくなかった。


─帰ってアニメ観て寝よ


夕陽がそろそろ落ちて夜になりそうな静かな河原の横道を歩きながら深いため息を付く。


「母さんに今日のことなんて伝えよう……」


そう考えるだけで帰り道は憂鬱だった。

中二病だと自覚している分普通の中二病よりも辛い。

治したくても治せない不治の病、それが中二病なのだ。


─いっそここで死んでしまいたい…。


深いため息をつき、そんな憂鬱な気持ちになっていたその時だった。

空から黒い羽が一枚落ちてきた。

それはカラスの羽のような艶やかな羽ではなく、見ていると吸い込まれてしまいそうな真っ黒の羽。

光をも呑み込んでしまいそうな真っ黒なその羽を見て春華は目を光らせ、


「悪魔か!ついに俺様の存在に気づき迎えが来たかっ!」


その期待の目を空へと向けた。

しかし、そこには紅色に染まった空と雲、カラスが三匹飛んでいる光景しか見えなかった。


「まさかな…」


と、ぼそっと呟いて前を見て歩き始めた瞬間、春華は何かにぶつかった。

春華の目の前には人が立っていた。


「うぁっ!すみま…、悪い、地獄の呼び声に耳を澄ましてよそ見をしていた。」


慌てて中二病風に謝罪を言い直すと、落ち着いて前の人を見た。

そこには身長190センチはありそうなスラッとしたイケメンが立っていた。

髪は金色のロングで、目は赤、服は真っ黒なローブを着たまるで漫画やアニメに出てきそうな男性に思わず見とれてしまった。

しかし、よく見ると背中には黒く細い羽が左に3本右に3本付いていた。


─え?レイヤー?レイヤーなのか?レイヤーだな?脅かせやがって、俺が考えご…、悪魔との交信をしていなければ危うく殺していたぜ…。


春華は、「やれやれ」とため息をつき、もう一度その男に顔を向けた。

そして春華は悟った。


─こいつは絶対にヤバい奴だ。


春華が言えたことではないが、間違いなく目の前のその男はヤバいとしか言い様の無い存在だった。

よく見ると、肌は白く、目は死んだ魚の様に淀んでいた。

とにかくヤバい。

絶対関わってはいけない。

そう本能が言っているかのように身体は考えるより先に動いていた。

春華はその男から逃げるようにして男の横を横切ろうとした。

その瞬間だった。


「キミ。」


その声は底のない沼のように冷たく、それでいて何処か寂しさの感じる声だった。

その声を聞いた瞬間急いで横切ろうとした身体が、氷ってしまったかのように止まってしまった。

背筋が氷るとはこういうことなのか。


5秒程の沈黙が続いた。

春華にはその時間が1分位に感じる程、頭の中はパニックになっていた。


─何か言葉を返さないと。


そうは思うが、言葉は出ない。

「はい」と返事すれば良いだけなのだが、春華はそれが言えない程に頭の中は真っ白で、口が強張り何も言えなくなっていた。

そんな春華に追い討ちを掛けるかのように横の男は言った。


「キミには(ゲート)を潜る資格があるようだ。」


その言葉は、普通の人が聞けば「は?」となる言葉だが、春華はそれを一瞬で理解した。


この人は仲間(中二病)だと。


門と書いてゲートと読む。

中二病なら絶対に使うワードNo.4だ。

春華の心は嘗て無い程に舞い上がっていた。

何故なら彼は、


「我は暗黒邪王(ダークサイドルシファー)なり!閉ざしていた我の力に気づいたこと、褒めてやろう!」


春華は目をキラキラさせながら、一歩後ろへ下がり、左手を額に当て、右手の人差し指を目の前の男に指してそう言った。

完璧に決まった。

春華はどや顔を隠しきれずに、にやにやしてしまう。


男は春華の言葉に答えるかのように、右手を春華の前に差し伸べて言った。


(ゲート)を召喚する。」


男の素振りと言葉の意味を瞬時に理解した。

どうやら男がゲートまで連れて行ってくれるらしい。


─コイツも俺と同じでとことん堕ちた中二病だな!


そう悟った春華は「ふ、やれやれだぜ。」と言いつつも嬉しさを隠しきれないにやけ顔で、突き出したその右手でその男の右手を掴んだ。

あれだけ怪しいと思ったその男の手を何の迷いもなくだ。

何故なら春華は中二病だからだ。

今まで中二病仲間に出会ったことがない春華にとって、同じ中二病仲間だと思ったその男の手を掴むことはとても容易だった。

春華は男の差し出された手を敬意を持って掴んだ。

その時、


─!!???


その男の手を掴んで数秒のことだった。

突然辺りがゆっくりと捻曲がっていき、河原だったその場所は虹色に歪んだ空間へと変わった。

辺りには何もなく、360度永遠と淀んだ虹色の空間が広がっていた。


─おいおい、いくら俺の創造力が豊だからって創造が鮮明に見えすぎじゃないか?


これまでに幾度となく創造の世界で異次元を作ったことのある春華ですらその光景は現実とは思えない程にリアルだった。

流石の春華も「これはヤバい。」と感じる程だった。

その空間に唖然と立ち尽くしていたその直後だった。


─!!!?


猛烈な頭痛と吐き気が春華を襲った。

まるで頭の中を芋虫が這いずり回るような気持ちの悪い感覚と激痛。

吐き気がするのにそれを吐き出すことが出来ず、エンドレスにやってくる吐き気。


「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


春華は、その場にうつ伏せで倒れ、もがき、苦しみ、発狂した。

余りの痛さに涙が溢れ出てきた。

声も出ない。

吐き出しそうなのに吐き出せず、春華の口からはよだれがだらだらと流れ出す

「これはヤバい」と感じた時、既に遅かったのだ。

春華はようやく後悔した。

あの時あの手を取らなければと。


手を差し伸べたその男は、もがき苦しむ春華の手を離そうとはしなかった。

固く握られた手は、とても冷たく、気持ちの悪いものだった。


余りの痛みや吐き気に春華の身体は失神を起こし始めていた。

意識も徐々に薄れていき、握った手の感覚も次第に無くなっていった。


そんな苦しむ春華に微笑むかのように男は言った。


「キミは選ばれたんだ。」


言っていることが理解できなかった。

何も考えられなくなる程に春華の頭の中は混乱していた。


─こいつはマジモンだ。


それだけは理解できた。

その時ようやく自分が置かれた状況を、空想ではないのだと気づいた。

徐々に麻痺していく感覚にいつしか春華は、死を感じた。


─こんな訳の分からない結末で死ぬのかよ!


春華は近づいてくる死の恐怖に、


『死にたくない。死にたくない。』


と、頭の中で何度も繰り返し願う。

夢であってほしい。

こんなのは悪い夢だ。

そう言い聞かせるしか春華には出来なかった。


幻聴か、不吉にも春華の頭の中に「ふふふっ」「あはは」と、子供の笑い声の様な声が響き渡った。

春華は目の前の男の笑みに、笑い声に怒りが沸き上がって来た。

顔をゆっくりと上げ、最後の力を振り絞り殺意を込めた言葉をぶつける。


「てめ…ぇ、ころ……してやるっ!」


夢か現実か分からないこの現状で、非現実的な言葉だったが、今の春華にはどうでも良かった。

殺意と怒りが増していく中、春華の意識は徐々に徐々に薄れていく。


─あぁ、終わりなんだ。


そう思いながらも意識が無くなっていく春華の頭の中には、木霊するかのように笑い声が響き続けた。

もう何も発せられなかった。

もう何も考えられなかった。

頭に響く笑い声も徐々に薄れていった。

目の前が暗くなった。


春華の意識が途切れる間際、頭の中で微かな声がした。


─み……をす……くれ……。


春華は死んだ。

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