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酒場の従業員は請負人  作者: カズトモ
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6

 






 俺の里で改変が起きた、先代の忍頭のゼツガイ様が病により天寿を全うされた、そこで次代の忍頭として選ばれたのがゼツガイ様の娘のミズネ様であった。

 俺はゼツガイ様の右腕として、ゼツガイ様の遺言通りに次代の忍頭ミズネ様の右腕としてミズネ様の力になることを決めた。

 忍の里は長と民を守るために忍がいる忍を統率するリーダーとして忍頭と呼ばれる者がいる。忍は里の利益のため己の力を使い、依頼仕事により金を得る。依頼は多種多様な物があり、暗殺、護衛、時には忍がいる里と敵対して戦をすることもあり、里のために働く。

 ミズネ様が忍頭に就任して初めて忍の上役連中との会議で現在の隣の忍里との戦を停戦条約を結ぶことにより停戦する提案した、忍の上役たちはこれに反発、上役の言い分はこれまで戦で命を落とした者達のためにならないと言うことだった。

 ミズネ様は上役の反論に聞く耳を持たず、里の長の許可を取り、隣の忍里との停戦条約のために多大な金と捕縛した忍たちの返還を行い停戦条約が結ばれる。

 今まで拮抗していた戦をこちらが敗北したかのように条約が結ばれたことに上役たちは悔しがっていた。そしてミズネ様をゼツガイ様の子ではないと批評しだす、ミズネ様の耳には届かないように俺がしたのだが、ミズネ様は自分がバカにされていることは気付いているだろう。

 俺もミズネ様の涙を見ていなかったら上役たちと同じように批評していたかもしれない。『忍は涙を見せるべからず』これは里と里長を守るためと依頼を確実に成功させるために決められている掟。

 掟に従うのは忍の本質、ミズネ様もゼツガイ様が亡くなっても涙を見せないミズネ様は強いお方だと感じた、停戦が決まる前に寝る間も無くゼツガイ様が残した資料を読んでいたミズネ様の部屋に連絡のために向かった時のことだ。

 ミズネ様はゼツガイ様が残した首飾りを握りしめ啜り泣いていた。ミズネ様は首飾りに謝っていた、『ごめんなさい父上、私はみんなが私のために里のために命を落とすことが耐えられません、私は戦のない平和な暮らしのために、各忍里の忍頭との会談を実現させてみせます!』

 各忍里の忍頭の会談など1度も行われたことがない、過去には領地拡大のため何度も戦があった。忍頭の会談、15歳の少女がこんな考えを持つものなのか?俺はそこで誓った、俺は40歳今まで手を幾度とも汚してきた、それが忍の生き方だと諦めていた、だが少女が、ミズネ様がそれを望むなら俺はミズネ様のために命を賭けようと。



 ミズネ様の考えが甘いものだと考えさせられることが起きた、上役の連中がミズネ様の命を狙い暗殺を仕掛けてきたのだ、俺は妙な動きをする面をした忍5人を追ってそれがミズネ様が籠る資料室に入ろうとしたところで気絶させて捕縛、面を外すと上役が飼っている忍達だった。

「シントウ、その者達は?」

 資料室からミズネ様が出てきて捕縛した忍達を見ると怪訝な顔を浮かべていた。

「ミズネ様、こやつらは上役が送り込んだ刺客かと思われます。」

「そうか、私は邪魔だと言うことか・・」

「ミズネ様、反乱の疑いとしてこやつらの飼い主の処置を私にお命じ下さい!」

「ならぬ、その者達も返しなさい、同じ里の忍だ。」

「しかし、それでは・・!」

「シントウ、これから私はこの忍里の改革を行います。それに伴い、忍里の風習は残してはいけないでしょう、でもね人は残して行きたいのよ。」

「ミズネ様・・」

「よろしいですね?」

 ミズネ様は資料室に戻っていった。

「シントウ様。」

「もう目が覚めたのか?」

「殺してください」

「駄目だ、それがミズネ様の意思だ。」

「・・ミズネ様の話は聞いていました、私は命令とは言え忍頭の命を・・!殺してください!」

「駄目だと言ってるだろ、自害もなしだぞ・・そんなに死にたいなら死んでみろ、ただし1度己を殺し、ミズネ様のために生きてみないか?」

「・・はい。」

 ソイツは他の捕縛した奴を連れて出ていった、俺は夜の間ずっと資料室の前でミズネ様の護衛をしていた。



 ミズネ様が忍頭になり5ヶ月が経った、暗殺を仕掛けてきた上役は大人しいものであれ以来、さしたる動きもない。ミズネ様は各忍頭会談に向けて次なる1手を打つためにミズネ様の書状の受け取り拒否をしていた忍里に自らが赴くことを決めた。上役たちは表面上は危険だから止めた方が良いと言っているが瞳の奥にはミズネ様が他里に殺されれば良いと思いが見えた。

「本当に行くのですか?」

「ここまで来て何を言っているのですか?私は行きます。」

 目の前には書状を受け取らなかった忍里の入り口がある。

「わかりました。むっ!?」

 突如、今から向かう忍里が煙を上げて爆発した。

「シントウ!」

「はいっ!距離を取りましょう!今は様子を・・」

「違います!あの里の者の救援に行きます!」

「それは危険です!お待ち下さいミズネ様、くそっお前らもミズネ様を追え!」

 ミズネ様は里に向かって走り出してしまったので俺も護衛の部下に指示を出す。

 里内に入ると悲惨な物だった、家は焼け、人の死体が転がり、地面の所々に穴が空いている。ここは忍里において一番の実力者を有する里だ内乱でもあったのか?

 瓦礫のせいでミズネ様を見失ったが、何とか見つけることが出来た。

「ミズネ様!ご無事で!?」

「あなたたちは何者ですか?」

 ミズネ様が誰かに問いかける、目の前に赤髪の男と茶髪の女がいた、女の方は刀を握っている。

「この里の忍か?」

「違うわ、彼女は確かゼツガイの娘よ。」

「なら無関係か。」

「待ちなさい!これはあなたたちがやったのですか!?」

 その場を立ち去ろうとする2人をミズネ様は呼び止める。

「そうだ。」

「そうよ。」

 2人が答えるとミズネ様は手で印を結ぶ。

地遁(じとん)縄縛結(じょうばくけつ)!』

 地面から蔦が生えて怪しい2人を捕縛した。

「これが忍術って奴か?」

「印の結びが速いわね。」

 捕まったと言うのに会話をしている。

「シントウ、生き残りがいるかもしれないから救援に行きなさい。」

「しかし、捕らえたとは言えミズネ様1人では・・」

「もうみんな死んでるぜ。」

 目を離していた2人はいつの間にか蔦をすり抜けて蔦がある隣に立っていた。

「いつの間に!?」

「くそっ、『地遁・・』」

「2度は効かない。」

「くっ!」

 男に腹を突かれてミズネ様が倒れこんだ。

「貴様!『水遁・水胞子(みずほうし)』」

 俺は口から泡を吹き出して男を狙うがかわされてしまう。

「ミズネ様!」

 倒れこんだミズネ様は気絶しているだけなので安堵する。くそっ部下たちは何をやっているんだ!

「あんた話を聞きそうだから言っておく、俺達に関わるな。」

「・・何故忍里を狙った?」

「関わるなと言ったはずだ、あんたらが手出ししないなら俺達も手出ししない。」

「・・・・・・」

 俺は去っていく2人の背中を見ているしかなかった。



 ミズネ様を担いで急ぎ里に戻ると里の中が騒がしかったので近くの仲間に聞く。

「どうした何を慌てている!?」

「じっ実は停戦条約を結んでいた忍里が襲撃を受けて壊滅したと連絡が入りました!」

「なに!?」

「しっシントウ、」

「ミズネ様、大丈夫ですか?」

「えぇもう自分で立てるわ。」

 俺はミズネ様を下ろす。

「まさかあの2人が?」

「可能性は高いわ。」

 ミズネ様は殴られた腹を押さえて痛みを堪えている。

「こんにちは~!」

 後ろからさっきの男の声が聞こえたのでクナイを構えて振り替えるとやはりさっきの2人が立っている。

「貴様ら!この里も狙う気か!?」

「シントウ、様子が違うわ。」

 2人の男女は勾玉を手にこちらに向けている。

「あれは?忍頭の勾玉?」

「ゼツガイにお目通り願えるかしら?」

 ゼツガイ様にお目通り?ふざけてるのか?

「ゼツガイは、父は死んだ!用件は忍頭の私が聞こう!」

「死んだ?だから約束の場所にいなかったのか。」

「娘が継いだのね。あなたこっちに来なさい。」

「わかったわ。」

 ミズネ様が女に手招きされて向かおうとしたのを止める。

「お待ち下さい。」

「あの2人は忍里を潰すだけの力がある従うしかないわ、心配ならあなたも来なさい。」

 ミズネ様に続いて女の元に向かうと女に肩を握られた。

『風となりて私は誘う、理を覆し、空が転じる』

 一瞬視界が白くなったと思ったらどこかの酒場にいた。

「驚いたでしょう、私の転移魔法で移動しただけだから心配しないで。」

 女は俺達に椅子に座るように促してきたのでミズネ様だけ座って貰った、男がお茶を出してくる。

「あなたたちは父に用があったのでしょう?それはどんな用件なの?」

「見て貰った方が早いわね。」

 女は何も書かれていない真っ白な紙をミズネ様に手渡した、ミズネ様は紙を受け取った瞬間に呆けた顔をしていた。なんだ?まさか?

「ミズネ様に何をした!?」

「止めなさいシントウ。」

「ミズネ様大丈夫ですか?」

「えぇ父がステラさん、カイルさんに依頼した内容は伝わりました。父はあの子供の人体実験を行っていた里を潰して、民を救うように頼んだのです。」

 人体実験?それに何故、2人の名前を知っているんだ?

「この紙にはゼツガイが娘に残した思いがあると言っていたわ、紙に術式を施していたのよ。」

「そんなことが・・」

 ミズネ様は俺を見て頷いた。

「私達の用件はひとつよ、ゼツガイに依頼された時にも言ったけど忍里で私達が保護した人達は忍の滝と呼ばれている場所に集めているわ、その人達の保護をあなたたちの里でお願いするわ。」

「わかりました、あなたたちが手にした物については口出ししないことも約束します。」

「さすがゼツガイの娘ね。それに・・・」

 ステラが俺を見る。

「忍のことは忍に任せるから。」

「はいっ!」

 俺は話がわからないがステラに渡された紙を抱き締めるのを見てミズネ様の傍らにゼツガイ様がいるのを感じた。



 ステラの転移魔法で帰った俺達はミズネ様の命令の元に滝にいる人を保護した。2つの里の生き残りは多く、それに伴いミズネ様の里は大規模な里になる。

 2つの里が無くなったことにより他の里も戦を構える必要もなく、各忍里同士で同盟が締結された。

 ミズネ様の考えであった各忍頭会談が行われて、ミズネ様の地位も名声も忍里の歴史に残るものとなる。


 里に帰る転移前に俺は2人に何者かを聞いたら、

『見ての通りの酒場の従業員』と返ってきた、2人は何者でゼツガイ様といつ知り合ったのか?死ぬ間際、ミズネ様が忍の国を作り王となられた勇姿を見たら、そんな謎もどうでもよくなった。


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