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酒場の従業員は請負人  作者: カズトモ
2/11

2

 






「は~はっは~、」

 木に寄りかかり息を整える、私は逃げている。もう2日も食べ物も、水さえ口にしていなかった。このまま森の中で野垂れ死ぬ運命なのかと考えがよぎった。



「あらあら、死にかけてる子がいるわ。どうしましょう。」

「どうしましょうって言ってる場合か?」

「力仕事は男の仕事よ。それにあなた手に水筒を持ってるじゃない。」

「仕方ないな、おい水だ飲みな。」

 だれ?霞む目のせいで目の前が見えない、音も聞こえずらい。

「動けないのか。」

 私の口に冷たいものが当たっている、水?もう何も考えられない。




 気付いたら私は柔らかな物に包まれていたので這い出る、毛布に包まれていたようだ、微かにランプの灯りのおかげで周囲を見渡せた、人間の男?ランプの灯りのせいか男の髪色が赤く見える。寝ているのか?たまに首が動いているが寝息をたてている。

「起きたか?」

 突然、観察していた男が目を開いたので驚いて私は声が出せなかった。

「声が出ないか?無理もないか、何日も水を口にしてないようだから無理に返事はしなくていいよ。勝手だが君が寝ている間に点滴を打っていた、外してはいるけど、着替えもあったし、断じて俺が着替えの手伝いはしてないから、ステラって女がいるんだけどそいつに頼んだから心配しないでくれ。」

 男は顔を赤くして焦りだし捲し立てるように喋る、無害そうな人間だ、私はそう思った。

「・・あ、りがとう。」

 声が上手く出ない、喉が少し痛い。

「どういたしまして。食欲があるならスープでも作ろうか?」

 ぐーと私のお腹が鳴る、恥ずかしい。

「ちょっと待っててね、あっ君が身に付けていた物はそこの棚の上に置いてあるよ。」

 男は部屋から出ていったので私がいるベッドのすぐ隣の棚に私の服と道具を入れたチョークバックが置いてあるのを確認した。腕輪もある良かった。服は何日も森をさ迷ったので汚れていたはずだが綺麗になっていた。さっきの男、もしくはステラと言う人が洗ってくれたのか?

 同族に追われた自分が人間に助けられるとは泣けてくる。


「お待たせ~、あれ何で泣いてるの?」

 不意に男が部屋に入って来たので慌てて袖で涙を拭う。

「カイル、あんた何かしたの?」

「えっ?俺は何もしてないよ。」

 人間の女が入ってきた彼女がステラ?男はカイルって言うんだ。

 ステラは部屋の明かりを点けてランプの灯りを消してからベッドに近寄ってきた。

 カイルの髪はランプの灯りのせいではなくて真っ赤な色をしており、ぴっちり纏められていて固そうな髪質だ。

 ステラは茶髪にウェーブがかかって、私の種族に近い白く透き通った肌をしている美人。

「大丈夫あなた、どこか痛む?」

「だ、いじょ、ぶです。」

「あらごめんなさい、喉を痛めてるのね、無理に喋らなくていいわよ。カイル早くベッドにテーブルを付けなさい。」

「スープで手がふさがっているから手伝ってくれよ。」

「仕方ないわね、ほらこれに乗せなさい。」

 ステラは部屋の中央にあったテーブルを私の横に付けてカイルが座っていた椅子に座る。カイルがテーブルにスープを置くとステラは器とスプーンを手にしてスプーンでスープを掬うと私にアーンとジェスチャーをしてきた。

「じぶ、んで。」

「ダメよ、ほら病人は言うとおりにしなさい。」

 大人しくステラに従い、スープを飲ませてもらう。

「よく飲んだわ、後は薬と水よ。はい。」

 粉状の薬を水で飲み込む。

「さっきあなたが寝ている間に着替えさせたから、今日はまだ寝てなさい。」

 頷くとステラは満足したような顔を見せて、明かりを消すとカイルと共に部屋を出ていった。真っ暗な部屋の中、直ぐに私は眠りについた。





「あっあー。」

 朝、起きると喉の痛みもなく声もスムーズに出る。ベッドから立ち上がり、棚に置いていた自分の服に着替え直してベルトにバックを掛け腕輪を付けると扉がノックされ開く。

「あれ?あっそっちか、もう起きて大丈夫なのか?」

 カイルはベッドに私がいないことに驚くが私を見つけてホッとしていた。

「あぁ大丈夫だ、世話になってすまないが私は行かなければならない、謝礼として見合うかわからないが私の里で造られたピアスだ、銀が使われているから値は付くはずだ。受け取って欲しい。」

「えっ?えっ?」

 カイルは受け取ろうとしないので無理矢理ピアスを手に握らせた。

「では私は行く。」

「まーちなさい。」

 部屋を出るとすぐにステラに肩を掴まれて止められる。

「すまないが急ぐんだ。」助けてもらった人間を巻き込む訳には行かない。

「まぁまぁ、朝食食べてからでも遅くないでしょ?それに出ていくなら食料も用意するわよ。」

「わかった。だが金になりそうなのは彼に渡したピアスだけでな、この腕輪は・・・渡せない。」

「心配しなくてもエルフ族、それもエルフの(おさ)の家系に伝わる腕輪なんて受け取れないわよ。」

「何故それを!?」

「まぁまぁ、食事中でも話せるわ、行きましょう。カイル~。」

「おう。」

 ステラに手を握られ引っ張られながら移動すると酒瓶の立ち並ぶ棚やカウンターが目に付いた。

「酒場?ここはどこの街なの?」

「あなたを見つけた森の中よ。」

「森の中?こんな建物があったらあいつらが!」

「心配しないで、ここは見つからないようになってるから。」

 カイルが料理の皿をテーブルの上に並べていく。その前の椅子に座らせられた。

「・・・お前達は何者だ?」

「ただの酒場の従業員よ。」

「質問を変えよう何故、腕輪のことを知っている?私達エルフ族は、人間と関わりなど持たない。」

「話は後にしろ、飯食うぞ。」

「しかし・・・」

「年上の言うことは聞くもんだぞ。」

 カイルは頂きますと食事を始めた。

「・・・・・・」

「カイル、あんた勘違いしてるでしょ?」

「何が?」

「このエルフ族の彼女の歳よ。」

「14~16くらいか?」

「・・・・・・」

「やっぱり、エルフ族は長命で見た目がそうでも実際は、」

「私は127歳だ。」

「ぶふぁ!」

「汚いわね!」

「127?はは、あり得ない。」

「もう馬鹿カイル、いやバカイルはほっといて、」

「ちょっと待て、その略称は嫌だ!」

「黙りな!」

「はい。」

「あなたの名前が知りたいな、私はステラ。こっちはバカイル。」

「カイルです、よろしく。」

「・・・イリス。」

 なんなのだこの者達は、特にこの女は何故、エルフ族の腕輪のことを知っているのだ。まさか?あいつらはコイツらを雇ってまで私を殺しに・・

 椅子から立ち上がり後ろに飛び、バックから小太刀を取り出して構えた。するとカイルはキョトンとした顔を見せ、ステラは溜め息混じりに頭を抱えていた。

「お前らはあいつらが雇った人間だな!この腕輪を渡すわけには行かない!」

「えーと、俺ら仕事なんて受けてないけど。」

「ややこしくなるからカイルは喋らないで、イリス私達は敵じゃない。」

「うるさい!この腕輪は父さんから託された私の里の宝なんだ渡すものか!」

 出口を探すが辺りには扉がない、さっき入ってきた扉もなかった。ならば力づくで!私は生き残らなければならない、今だにスプーンを握り無防備なカイルに小太刀を振るう。カイルの右腕に小太刀が当たる、っ!?

「アブねー、なになにいきなり!」

 嘘っ、小太刀は右腕に当たったまま力を込めても斬れていない。

「ちょっとごめんよ!」

 小太刀は私の手から弾かれて、カイルにいつの間にか拘束されてしまった。

「くそっ!」

「暴れるなよ。」

「イリス、話を聞きなさい。」

 ステラが拘束を剥がそうとしている私の頬を両手で抑えて目を合わせる。

「私はあなたの敵じゃない、敵なら傷ついたあなたを拾って治療なんてしないわ、ねっ。」

「俺もな。」

 力を抜くとカイルは拘束を解いてくれる。

「びっくりしたぜ。」

「イリス、座りなさい。」

 暴れてテーブルから落ちたお皿をカイルが回収し始め、ステラは椅子を立て直して座るように言われたから大人しく座る。

「話を聞かせて貰える?」

 ステラの優しい口調、治療してもらった恩もあり私は話すことを決めた。

「私の父さんが死んだ、里の仲間に殺されたんだ。父さんは里のリーダー、つまり里長だった。父さんは仲間に攻撃されボロボロになりながらも私を抱えて里を出て森に入った、追撃されながらも父さんは襲撃者達を返り討ちにしていたでも、限界がきたのよ。隠れるために入った洞穴で父さんはこう言った、

『腕輪こそ長の証だ、腕輪を持ちダイハクが治めるエルフの里に行け、俺の部下達は野心に取り付かれた化け物に成り果てた、ダイハクの力を借りてあの罪人達を止めてくれ、すまないお前には重荷を背負わせることになる。』と、私は死にゆく父さんの姿をほってはおけず、父さんの願いを断ると父さんに頬を撫でられた、父さんは洞穴から出ていき、洞穴に残った私に聞こえたのは父さんの断末魔だった、恐ろしくなり私は逃げた。慣れ親しんだはずの森がいつもの森とは感じれなくなり本当に怖かった。」

「あなたを逃がすために最後の力を振り絞って洞穴から身を出したのね。」

「暴れてすまなかった、助けて頂いて感謝している、私は行かなければならない。生きているのなら父さんの願いを聞いてあげたい。」

「そのダイハクってエルフがいる里はどこにあるんだ?」

「この建物は森のどこに建っているんだ?」

「綺麗な湖の近くよ。」

「まさか、私の里で伝わる祭りを行う湖か?」

「見れば早いかしら?」

 ステラは壁に向かって腕を振るうと壁に窓が出て外に私が知っている湖が見えた。建物などなかったはずなのに。

「ダイハクさんが治める里はここから南に10㎞ほど行った山の麓にある。」

「そうか、なら出発するなら飯を食ってから行きな、道中の食事も用意しておくから。」

 カイルはまた食事をテーブルに用意してくれた、私が渡したピアスも置かれる。

「これは受け取れないよ、もしかしたら大事な物かも知れないからな。」

「だが、私にはお礼できるものが手元にはない。」

「いいわよ、お礼なんて拾った人にお礼を求める奴なんていないわ、食事をしなさい、早く行かないといけないんでしょう。」

「・・・この件が片付いてまたここに戻ってくる。」

 生きて戻ると誓いをたて、食事を取る。食べていると食料を包みカイルが持ってきてくれた。

「馳走になった、出口はどこにある?」

「今出すわね。」

 壁の形が変わり扉が現れた。

「行ってきます。」

「気を付けてな。」

「行ってらっしゃい。」

 2人に見送られて外に出ると、建物はなかった。ステラが言っていた見えないようになっているとはこういうことなのだろう。

 南の里に行くには湖を渡ることは出来ないので迂回して森の中を通って行くことになる。父さんを裏切ったエルフ達が私を探しているかもしれない、でも私はとにかく走り抜けるだけだ。

 森に入り木から木へと飛び移りながら南の里を目指す、走る道中に森のざわめきを幾度と感じた、父さんを失い森が嘆いてくれている気がする。父さんのために私は走った。


 体感で1時間、あいつらと鉢合わせすることなく、南の里に着いたので門兵に話しかける。

「ダイハク様に至急お伝えしたいことがある!お目通り願えないか!」

「お前は?ダイハク様に報告しろ!」

 門兵が中にいたエルフに頼むとそのエルフは里内に消えた。

「ありがとうございます、っ!」

 私はいきなり門兵に拘束された。

「何をする!」

「まさか生きてここに来るとはな、クーデターを起こした連中は何をしていたのか?」

「何故、お前が知っているんだ!」

「ふん、何も知らないガキだな。」

 なんだコイツは何を言っているんだ?

「凄いなぁイリスちゃん。」

 ダイハクが拍手しながらこちらに歩いてきた。

「ダイハク様!これはなんの真似ですか!?」

「この状況でまだわからないかい?」

 ダイハクは腕を広げる、その隣に立っているのは父さんの腹心のツバキだった。

「ツバキ!?まさか父さんに反逆したのはお前らが!」

「そうですよお嬢様、あなたの父上は里を治めるには甘すぎる、だから退場してもらったのですこの世からね。」

「くそ貴様~!」

「イリスちゃんから腕輪を外してこちらに持ってこい。」

 門兵の一人が私から腕輪を外そうとする。

「やめろ!」

「大人しくしてなさい、そうすれば殺しはしない。俺が欲しいのは腕輪だからな。」

「たかが腕輪のために父さんを殺したのか!?父さんの友だったお前が!」

「たかが?これだから価値の知らないガキは困る、この腕輪は森を統べる王の元に在るものなのだ、この腕輪のおかげで昔、我らエルフは世界を獲る寸前まで行けたのだ。」

「世界を?ふざけるな、父さんは争いを好まぬ誇り高いエルフ族だ。そんなことをしてみろ私はお前を許さない!」

「うるさい口ですね、いい機会です腕輪の実験体にしてやりましょう。」

 ダイハクは腕輪を右腕に付けながら私に近付いてくる。

「実験体?」

「この腕輪はですね、死体を蘇らせることが出来るのですよ。」

「死体を・・蘇らせる?死者への冒涜だぞ!」

「ふふふっ、わめき散らかさなくてもあなたの里で捕らえた民もすぐに後を追わせて俺のゾンビ兵にしてやるよ。」

「私の里?民を捕らえた?ゾンビ兵?ふざけるな!」

「ふふふっさようなら。」

 ダイハクの持つナイフが私目掛けて降り下ろされる。ごめんなさい父さん私駄目みたい。目を閉じて父さんに謝る。

 キンッと金属音が聞こえる、ナイフで刺されたら感じる痛みがない。私が目を開くと目の前に赤髪の男、カイルがナイフを腕で抑えていた。突然、拘束の力が緩くなり体が自由になる。

「大丈夫?イリス。」

 ステラが私を拘束していたエルフを持っている血がついた刀で斬りつけたようだ。

「うん。」

「まだちょっとじっとしててね。」

「何をやっている早く賊を抑えろ!」

 ダイハクはカイルから離れて門の中に逃げて指示をだした、門兵だけじゃなく、里の中から武装したエルフが出てきたがステラに刀で斬られていく。カイルは近付いてくるエルフを殴り飛ばしていく。

「カイル!殺しちゃ駄目よ!」

「わかってるよっと!」

 凄いこれだけの敵の数の中、傷を負っていない。

「なんなんだこいつらは!?俺の邪魔をするな!俺は世界を統べる王となるのだぞ!」

 ダイハクは腕輪にナイフを突き付けて腕輪から外れた赤い玉を飲み込んだ。

「あいつは何を?」

「カイル!あんたが捕まえてないから!」

「悪かったよ、エルフのあんたらも逃げた方がいいぞ。」

 ダイハクの体が波打つようにボコボコと音を立てて大きくなっていく。

「なんなのあれは?」

 私は変わり果てたダイハクの姿に腰を抜かした。

「カイル!イリスを!あなたたちも早く距離を取りなさい!」

 カイルは私を抱き抱えて3メートルもの巨人で胸に大きな赤い玉を埋め込み、到るところから角を生やしたダイハクから距離を取る。

 ダイハクの体中の角が電気を帯びていて電気が辺り一体を轟音と共に更地に化した。里も半壊していた。

「ステラ、エルフ達は!?」

「巻き込まれたわ、用心しなさい死んだエルフが死人となって襲ってくるわよ。」

 焼け焦げた死体が起き上がってくる。

「うぉー!」

 ダイハクいや、化け物の雄叫びと共に死人はたどたどしい足取りでこちらに向かってきた。

「カイル、狙いは私達よだからあなたが化け物の相手をしなさい、私は生き残った里のエルフを安全な場所に誘導するわ。」

「頼んだ!」

「どうするの?あんな化け物相手に。」

 カイルに抱えられたまま私は声を張り上げた。

「イリス、封印結界は使えるか?」

「使えるけど、あんな大きな化け物相手には・・・カイル!私を湖まで連れていって!あそこはエルフ族の力を高めてくれる神湖なの!」

「わかった!あいつを誘導しながらだな。任せろ!」

 カイルは近付いてきた死人を殴り飛ばして化け物目掛けて跳躍した。

「わぁー!」

 いきなり地面が遠くなる。ゴスッと鈍い音と共に化け物の右腕が地面に落ちた。

「こっちだぞ!」

「うぉー!」

 化け物は雄叫びと共に右腕をちぎったカイルに迫ってくる。カイルはヒットアンドアウェイを繰り返しながら化け物を誘導している。化け物はボロボロになりながらもカイルに迫る。

 湖に辿り着く。

「カイル、化け物を湖の中へ。」

「任せろ、ここで待っててな。」

 カイルは私を下ろして化け物に突っ込み鉄拳を浴びせ、足を持ち上げて湖に放り投げた。

「うぉー!」

「今だ!」

『森の意思を守る一族の名において、邪悪な物をここに封じる』

『邪封封印!』

「うぉー!」

 湖全体が光だして化け物が落ちた所に黒い穴が開いて化け物を穴の中に引きずり込んでいった。

「やった・・」

「良くやったな、アレは不死の存在だ、時間が経てば体は修復してしまう。お前はすげーよ。」

 カイルは座り込んだ私の頭を撫でてきた。

「はっ里のみんなが!」

「大丈夫だよ、イリスの里で捕まっていたエルフは助けている、捕まった人はダイハクの計画を阻止しようとしたイリスの父さんの部下だったから、君の生死をとても心配していた立派な人達ばかりだよ。」

 父さんを裏切ったのは里のみんなの総意じゃなかったんだ、良かった。

「終わったようね。」

「おう、ステラそっちは?」

「あっちの里のエルフも無事よ、ダイハクに逆らって里の奥に閉じ込められていたから、死人も止まったわ。」

「・・・ありがとう。エルフ族を代表してお礼を言います。でも何で2人がここまでしてくれたの?」

「仕事の、いてっ!」

「拾った人は最後まで責任持たなきゃ駄目なのよ。」

「・・・里に戻ってあげな、みんなイリスを心配していた。」

「はい!2人も来ていただけますか?」

「後から行くよ。」

「えぇそうね。」

 私は深々と頭を下げてその場を後にした。里に戻った私を迎えてくれたのは里のみんな、みんな涙を流して私の帰還を喜んでくれた。すぐに父さんの部下を集めて、起きたことを説明した。

 父さんの死を伝えるとみんな嘆いてくれた、そして里の、長になることを私は決めた。

 里の長となり南の里も長を失ったので私が統治することになった、部下の中には南の里のエルフを森から追放しようとの声も上げてきた者もいたが、私はそれを止めた、ダイハクのせいで苦しみを味わった者もいる、私は憎しみを残したくなかったのだ。

 里に平穏が戻る中、2人は私の元にくることはなかった。

 会えると思って湖にも足を運んだが、姿はなかった。

 この事件はダイハクの汚名と共に2人の人間の英雄伝としてエルフの里で語り継がれていくことになる。




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