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酒場の従業員は請負人  作者: カズトモ
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 僕はこの国に対して怒りを感じていた。

 国王は自分の私欲のため貴族に重荷を背負わせ、その貴族は自分の領地の民に対して重税を課している。

 元々このジーニアス国は砂漠の檻と呼ばれる砂漠地帯で水があっても殆どが塩湖と化していた、そのため数少ないオアシスと呼ばれる所に人は身を寄せ合い生きていた。

 オアシスで生きる者達は広大な砂漠のせいで砂漠から出られず、一生を砂漠で過ごしていた。

 そこに改変が起きた、1人の魔法使いが砂漠で産まれる。その人こそがジーニアス国の礎を築くことになる。

 魔法使いは己の魔法で水を生み出すことができた、それによりオアシスで生きることしか出来なかった人間に潤いをもたらすことになる。

 魔法使いはオアシスで生きていた人間を束ねて街を形成することに成功した。砂漠の中心に出来たその街は発展を重ねていくことになる、そうしている内に砂漠の面影は無くなっていく。

 人工的に作った水路には今まででは考えられないほどの水が流れて河を成していき、緑が生まれ、作物が育つ。

 魔法使いが街を形成して20年も経つ頃には、他国の人間も来るようになり、外交が生まれる。外交により人が増えていった。

 街は拡がり海に面したり、山に面したりといつの間にか国となった、魔法使いはその国の国王となる。人は砂漠の檻を水の都と呼ぶようになり、潤いに感謝した。

 魔法使いに子供が産まれる、魔法使いは喜んだ、だが子供は魔法が使えなかった。

 魔法使いは国のことを考えた、国の発展と共に老いていく自分の姿を見て、自分が死んでも今や大国と呼べるほどにも発展したこの国は己の子供が導いてくれるだろうと、しかし元は砂漠の檻とも呼ばれた国だ。魔法が無ければ砂漠に戻るかもしれないと。

 子供が成人した時に魔法使いは己を捨てた、自分の力を城にある宝木に込めたことにより死んだ、宝木は根から水を生み出すことができた。その宝木を持って国はいつまでも繁栄していくものだと思っていた。これが己の命をかけて国を想っていた初代国王ジーニアスの話だ。



 僕は話に聞いた路地の中にある酒場へと足を運んだ、店内は薄暗く人の気配も感じない。

「あれーここは酒場なの、坊っちゃんいくつ?ミルクしか出せないよ。それに今日の営業は終わりよ。」

 薄暗い店内の中目を凝らして見ると、そこに座る胸元を開けたドレスを着たこの小さな酒場には似合わない品のあるお姉さんが僕を見ていた。

「・・・・・僕は、『ここに集う迷い人』」

「お客さんね、付いてきて。」

 お姉さんは椅子から立ち上がり僕を店の奥へと誘ってきたので、付いていく。

 酒瓶の立ち並ぶカウンターの中を通り開かれた扉を通る。

「ここだよ。」

 薄暗い通路を歩いているとお姉さんが不意に止まり、1枚の扉を指差し通ってきた通路を戻っていった。呼び止めようとしたがお姉さんは薄暗い通路に消えてしまう。

 僕は震える手でその扉をノックした。

「入れ。」

 低い男の声が中から聞こえる。扉に手をかけて開く。

「よく来たな。」

 左目に傷があり黒のタンクトップを着ていて太い筋肉を惜しみ無く露出している男が笑みを浮かべてソファーに座った状態で僕を手招きしてきた。それに従い男に近付く、男はこの国にしては珍しい赤髪をオールバックで決めていた。

「僕は・・・」

「まぁ座れ、話はそれからだ。」

 男に言われて対面のソファーに座ったら、目の前のテーブルの上にお茶と茶菓子が出てきた。

「今のは?」

「魔法だよ、あーこの国じゃ珍しいんだったっけ?とりあえず悪いものじゃないから。」

「ありがとうございます。美味しい!」

「だろ?俺はこの店の従業員のカイルだよろしくな。」

「僕はミルコ・・・です。」

 僕がお茶の感想を言うとカイルはまた笑みを浮かべていた。


「ミルコか・・で落ち着いた?ミルコはまだ12歳ってところだろうからこんな厳つい顔をした俺の前で緊張してたろ?」

「いえそんなことは・・・」

「気ぃつかわなくていいぞ、その歳でこんな場所に来てしまうんだからな。訳ありだろ?」

 笑うカイルの目付きが一瞬鋭くなるのを感じた。

「・・・調べてほしいことがあるんです、この国の宝木についてです。」

 自分の声が震えているのがわかる、でも自分じゃ何も出来ないのもわかっている。

「宝木ねぇ、水を生み出す30センチくらいの白い木のことだよな?」

 カイルは両手で木の大きさを表現してくる。

「はい。」

「で、何で?」

「・・・あれはいや、城にある宝木は偽物じゃないかと噂が出ているんです。」

「俺も、街には出るが城からは水が流れている、デマじゃないのかな?」

「違います!今、流れている水は偽物の宝木から流れているように見せかけて街の中の水を循環させているだけなんです!」

 思わず声が大きくなってしまう。

「違う・・か。」

 カイルの顔には笑みがなかった。

「・・・君は何者だい?その身なりからしても、どこかの貴族なのは間違いないな。坊っちゃんって言葉が似合いそうだ。」

 お姉さんにも坊っちゃんって呼ばれた、僕の格好は普通じゃないんだ。隠し通せないそう考えて僕は口を開く。

「ミルコ・ジーニアス、この国の王の息子です。」

「国王の息子が宝とも言える宝木の存在を疑うなんてねぇ。」

 カイルは腕を組み顎を掻いている。

「・・・父さんは、自分の私欲のために宝木を他の国に売っんだ!」

「売った!?」

 カイルは驚いている。

「宝木は2週間前にこの国から他国の貴族へと渡りました、父さんは母さんが僕を産んで、死んでしまってから変わったと使用人達は言っていました。女を買い酒に溺れて借金して、それを諌めた家臣を殺す。」

「本当なら酷い話だな、民には慕われているようだが?」

「慕ってくれているのは、城を中心として廻りにある街の人間だけです。父さんは水の流れを制限して循環することにより、少ない水の量でも街の人間が困らないようにしたのです、そのせいで水の流れを制限された村や街はたまに降った雨水のみで水に飢えるようになってしまった。山の水もない元は砂漠の中心です、酷い状態になっています。それだけじゃない、循環している水が尽きればこの国は終わります。」

 カイルは懐からタバコを取り出して吸い始めた。


「・・・それでお前さんはここに来たのか?」

「はい、噂に聞いた迷い人を救う酒場にこの国を救って頂きたい、宝木を取り戻してください!」

 ソファーから降りて床に頭を付けてカイルに頼み込んだ。

「取り戻すと言っても金は無いんだろ?」

「・・・はい。」

「うちに払う金も無いんだろ?」

「・・・はい。」

 カイルの問いに頭を伏せたまま答える、馬鹿な願いだとは思っている、でも父さんが私欲のために金を使いだしてから父さんが爵位を与えている人間も私欲に走るようになり、父さんを諌める者はもういなかった。子供である僕には力がない、頭を下げるしか出来なかった。

「ミルコ、お前は国をどうしたいんだ?」

「・・・正したい!初代様が命をかけて繋ごうとしてくださったこの腐敗した国を正したいです!」

「頭を上げな。」

 ゆっくりと頭を上げると笑みを浮かべたカイルの顔があった。

「気持ちはわかった、俺はお前に力を貸そう。まずは宝木を取り戻さないとな。」

「はい!ありがとうございます!」

 気付いたら僕は涙を流していた。



 カイルに連れられて酒場に戻ると明かりが点いており、お姉さんが声をかけてきた。

「また金にならない依頼を受けたようね。」

「そう言うなよステラ、依頼人のミルコだ挨拶しろ。」

「はーい坊っちゃん、私はステラよろしく。」

「・・・よろしくお願いします。」

「依頼人だぞ、坊っちゃんは止めろよ。」

「金が無い子は坊っちゃんで充分よ。」

 薄暗い時には見えなかったステラの茶髪でウェーブのかかった髪は背中まで伸びておりどこかの貴族と思うほどステラの着ているステラの豊満な胸を隠す赤いドレスは似合っている、ステラは品定めするような目付きを僕に向けていた。

「で、坊っちゃんが私達に頼んだ仕事は?」

「この国の宝木を取り戻したいだそうだ。」

「宝木を?奪われでもしたの?」

「売ったそうだ。」

「売った!?バカじゃないの!」

 ステラは僕を睨んできた。

「ミルコが売ったわけじゃねぇよ、ミルコを睨むな。国王様が売っちまったんだよ。」

「それを取り戻すわけね、お金で?それとも実力で?」

「実力行使で!」

「馬鹿、奪うことになるからこの国に宝木が戻るとその貴族様がうるさいじゃない。」

「そこはなんとかする。」

「なんとかって・・・誰なのよ宝木を買った貴族ってのは?その貴族が自国の王にでも渡してたら厄介よ。」

「ミルコわかるか?」

「ホウルミン・・・」

「あのじじぃか。」

「なら簡単ね。」

 2人はホウルミンを知っているのか、頷き合っている。

「どうするんですか?」

「まぁとりあえず向こうに行くか?」

「そうね。」

 カイルは僕の肩を掴んで、ステラの手を握った。

『風となりて私は誘う、理を覆し、(くう)が転じる。』

 ステラが唱えると、ステラの体が光だしたと思ったらカイルと僕の体も光輝いていた。

「ミルコ、ミルコ。」

 光に驚き目を閉じていたらカイルが呼んでいるので目を開ける。

「ここは?」

「隣の小国クイミングの俺の酒場だよ。」

「えっ!」

 辺りを見渡すと先ほどいた酒場と変わらない造りの場所に僕はいた。

「転移魔法・・・」

「どうだ?すげーだろ。」

「私の魔法よ、自分が凄いみたいに言わないで。」

「ハハハ、さぁ行くぞ!」

「えっ何処へ?」

「何処へ?って、宝木を手に入れた奴の所にだよ。」

「僕も行くんですか!?」

「当然だろ、国を守りたいのはミルコなんだし。」

「坊っちゃん、甘えてばかりじゃダメよ!行動しなさい。」

「はい!」

「よし行くぞ!」

 カイルに肩を掴まれたまま酒場の外に出ると、本当に僕の街ではなく、人が行き交う商店街に目を奪われた。

 カイルはどんどん歩いていくので僕は運ばれているようだった、ステラは後ろから付いてきていた。



「さぁ付いたぞ。」

 大きな屋敷が僕の目の前にある。

「ここに宝木を買った人が?」

「そうよ。」

 ステラは屋敷の門前に立つ警備兵に歩みより、「恩人が来たと伝えなさい」と言うと、5分も待たずに門が開いた。


 白髪混じりの男性使用人に連れられて屋敷の中に入る、入り口から真っ直ぐ歩き、階段を上がる、緊張している僕をカイルがずっと支えて誘導してくれている。

「旦那様、お客様をお連れしました。」

 使用人がノックすると掠れた声が聞こえてきた。

 使用人が扉を開き抑えてくれているので中に入る。


「良くきたのぉ。」

 白髪を頭の上の中心から一本だけに束ねていて顎に白髭を蓄えた老人がカイルに向かって手を振る。

「生きてたか?」

「馬鹿カイル、失礼よ!」

「何だよお前だってじじぃって言ってたじゃないか?」

「余計なこと言うな!」

「いてっ!」

 ステラがカイルの脇腹を摘まむ。

「ふぁ!ふぁ!本当のことだから構わんよ。まぁ座りなさい。」

 老人の対面に座ると使用人の人がお茶を出してから部屋を出ていった。

「お主らが来るのは珍しいのぉ、一体何用じゃ?」

「ホウルミンの爺さん、あんた宝木を持っているだろ?」

 ホウルミンはさっきから自分の白髭を撫でていたがその手が止まる。

「持っておるぞぉ、宝木が欲しいのか?だがお主が求める物とは違うはずじゃが?」

「俺が欲しいんじゃない、この依頼人のミルコだよ。」

 カイルは僕の肩を叩くとホウルミンの目がこちらに向いた。

「まだ子供ではないか?」

「ホウルミン様、彼はジーニアス国の王子でございます。」

「ならん。」

 ステラが僕のことを伝えるとホウルミンの目付きが鋭くなった。

「なぜだ爺さん?」

「あの国は腐敗しておる、滅びる運命じゃ!」

「やっぱりな、ミルコ、この爺さんは曲がったことが嫌いな人種なんだよ。腐敗した物は何でも正そうとはするがやり方がひでぇ。」

 カイルはホウルミンを指差し、指差した手をステラに叩かれる。

「ジーニアス国の民は関係ありません、何卒、宝木の返還を。」

「これはカイル、ステラの頼みでも聞けんのぉ。これはあの国への罰じゃ、民は王と共に散るもの・・・あの国は終わりじゃ」

「相変わらず偏屈な爺さんだなぁ。なら盗むか?」

「やってみるか小童が!」

 ホウルミンの肉体が筋肉質に変わっていく。

「ジョークジョーク!爺さんとやり合いになるのは御免だ。」

 ホウルミンの肉体が元に戻る。

「お願いします!民のために宝木を僕の国に返してください!」

 僕は床に頭を付けてお願いする。

「ならん、あ奴の子供など信用できん。民のためと言うが自分の私欲のためじゃないのかのぉ?」

「おいおい爺さん、こんな子供が頭を下げてるのに。」

「頭を下げるなど赤子でも出来るわぃ。」

「・・・そうです、自分のためです。」

「聞いたかカイル?この子供は・・」

「僕は民が苦しむ姿を見たくない!これが私欲と言うのなら僕は何でもやります!お願いです!宝木を民の命を、どうかどうか・・!」

「・・・・・・」

「・・・ミルコ。」

「ふぁ!ふぁ!儂の負けかのぉ。ミルコとやら頭を上げぃ!儂はお主を信じよう、だが今の国王がいるまでは宝木は渡せない、さぁお主ならどうするかのぉ?」

「僕は・・・父さんを追放します。」

「お主に出来るのか?」

「父さんは母さんを奪った僕を恨んでいるでしょう、でも民を苦しめる父さんは許せない、僕に国の貴族たちをまとめる力はまだ無いかも知れない、それでもやるしかないんです!」

「良く言った!」

 ホウルミンが自分の膝を強く叩いたので音が部屋に響き渡った。

「宝木はお主に返そう、そして儂の力を貸そう微力な物じゃが、国を成していくお主に尽力してみとうなったわ。」

「何が微力な物だよ、いてっ!」

「黙ってなさいよ!」

「ありがとうございます!」

 カイルとステラが何か言っていたが僕は力一杯ホウルミンに頭を下げた。



「カイルさん、ステラさんありがとうございました!」

「おう、俺のおかげだな。」

「あんた何もしてないでしょ。」

「いや、爺さんだって俺がいたから・・・」

「ステラで充分じゃ。」

「そんな・・・」

「僕は感謝しています!」

「ありがとうなミルコ!」

 カイルに抱き付かれた。

「さて、儂も準備するかのぉ。」

「爺さんも行くのか?」

「当たり前じゃ、兵士達だけには任せられない。たくさんの貴族を捕縛することになるからのぉ。」

「兵士ですか?」

「そうじゃ、お主の要請を受けて儂は動く、腐った物は刈り取らなければならないからのぉ。」

「さすが生涯現役を謳う爺さんだな。」

「カイルさん・・」

「ミルコ・・お前は国の王になることになる、綺麗事だけじゃないからな。」

「・・・はい!」

 カイルの顔は何か知っているような、語っているような顔をしており、僕は覚悟があると伝えるため力強く返事をした。


 使用人が入ってきた、手にケースを持っておりホウルミンの前にケースを置いて出ていった。

「これが宝木じゃ。」

 ケースを開けると中に透明な筒で水に包まれた宝木が入っていた。

「まずはカイルに預けておきなさい、7日後に儂は兵士を連れてお主の国へ行くからのぉ。それとカイルの寂れた家に身を寄せて置きなさい」

「爺さんひでぇな、一応住んでるんだぜ。」

「坊っちゃん・・・坊っちゃんとはもう言えないわね、ミルコ、ホウルミン様の言うとおりにしなさい。」

「はい、わかりました。よろしくお願いします。」

「おう、帰るか。ステラ頼む。」

「ちゃんと掴まっててね。では失礼しますホウルミン様。」

「ふぁ!ふぁ!じゃあのぉ。」

『風となりて私は誘う、理を覆し、空が転じる』

 目を開くと、酒場に戻って来ていた。


「あー疲れたわ~。」

「お疲れさん、ステラ酒飲むか?ミルコはミルクな。」

「飲む。」

「ありがとうございます。貴方たちのおかげで宝木が戻りました。」

「いーてことよ。」

「あの依頼料は・・・」

「ミルコ、気にしなくていいわよ。」

「でも・・・」

「ミ~ルコ、依頼料は出世払いでいいからな、ほらミルク。」

「はい!ありがとうございます、感謝してもしきれません。」

「むず痒くなるな。」

「そうね。」

「あのカイルさんもステラさんも一体何者なんですか?」

「ただの酒場の従業員だよ。」

「ただの酒場の従業員よ。」

 2人は酒の入ったコップを傾けながら答えてくれた。

 そういえばこの酒場のことは僕はいつ、誰に聞いたんだっけ?気付いたらここに足を運んでいた。合言葉は・・・知っていた?



 それから7日間、酒場の奥の一室を借りて寝泊まりをしていた、しかしカイルがいない1日だったりステラがいない1日を繰り返すように過ごしていた。

 7日経ち、ホウルミンは1000人もの兵士と国にやってきた。それからは早かった、たちまち汚職をしていた貴族を捕縛していった。

 そして、父さんを・・・父さんは頭が可笑しくなっていたのか、自分の立場もわからないくらいになり奇声を発しながら、ホウルミンの兵士に連れて行かれた。



「ほら、宝木だ。あるべきとこに戻しな。」

「はい。」

 僕はカイルより宝木を受け取り、元あった場所に戻すと宝木から水が溢れでて街に国中に流れていった。

 ステラも見守ってくれている。

「やりました、やりましたよカイルさん・・・」

 振り替えるとカイルとステラの姿は何処にもなかった。

 近くにいると思い探したが2人はいない。

「探しても無駄じゃよ。」

「ホウルミンさん・・・」

「あの2人は依頼が済んだら依頼人から姿を消す。それよりもお主はこれから忙しくなるぞぃ、儂も手伝ってやる。民のために尽くしなさい。」

「・・・はい。」

 僕は空を見上げて届くかわからない言葉を綴った。

『ありがとう』



 それからは本当に忙しかった、新しい部下や貴族の選別、民から出た不満の声の処理、ホウルミンがいなければ上手くいかないことばかりと感じた。

 12で即位した王位、気付けば6年経ち、僕は成人し信用できる部下も得た。ホウルミンは少しずつ口を出さなくなり国王として国を治められるようになった。



「お待ち下さい、この後、北の国より賓客が・・・」

「すぐに戻る。」

 僕はマントを羽織ると城から出ていつもの場所へと赴く。

 いつもここに足を運んでしまう何もない路地へ、あったはずの酒場を求めて、僕を救った2人を求めて。


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