悪役は、転生しても悪役なのです。
失敗した。
何もかも性急過ぎた。そしてあからさま過ぎた。
それを自覚した時は既に手遅れで、引き換えにしたのは自らの命だった。
「最後に言い残す言葉があれば聞こう」
「私を殺せば恐ろしい事が起こるわ」
悪逆非道を繰り返した彼女の名はカトリーヌ。ヴォワザン子爵家の末の娘だ。宝石商の夫を持ち現状爵位は持たないものの、豪華な邸宅はサロンとなっており、日夜パーティーで貴族たちが入り浸っていた。
「混乱が世に蔓延るわよ」
「毒婦め」
カトリーヌは後悔していた。
自らの行いで罪が裁かれる事を、これまで築いてきた全てが無駄になる事を。
振り下ろされる刃から逃れる事はできず、冷たく硬い感触が首筋に食い込む。案外痛みは感じないらしい。恐怖も過ぎると感じない。
ああ、私は死ぬのか。
◆
頬を伝う雫は涙か。
涙を拭いベッドから起き上がる。頭がボンヤリする。私は何をしていたか、思い出せない。
「・・私、こんなに小さかったかしら」
鏡に写るのはまだ成人もしてない、幼い少女。
感じる違和感は何だろうか。
「まあお嬢様、もう起きていらっしゃるのですか」
「ええ、早く目が覚めたの」
「今日は旦那様がお戻りになりますものね」
「楽しみだわ」
結婚してから会う機会も減ってしまった。
「・・?」
あら、私はまだ十一歳よ。婚約者もいなければ、結婚もしていないわ。でもそうね、宝石商なのよね。色んな鉱石を手に入れやすくて、色んな事を試したわ。
「何を試したのだったかしら」
「どうされました、お嬢様」
「何でもないわ」
取り敢えず、今年の誕生日プレゼントは薬草園をおねだりしなくちゃ。もっと早く知っていればと思ってたのよ。そうすればもっと強い繋がりを作れた。
「お帰りなさい、お父様!」
「ただいま、カトリーヌ。良い子にしてたかい?」
「もちろんよ」




