脇役なりに人生歩んでます
確かに異世界転移して、元の世界に帰って、そしてまた縁があるのか、同じ異世界に転生した。
でも私は主人公には程遠くて、ただこの世界で平凡に暮らしていた。
『あなたが日本からの転生者?』
不躾な質問だ。確かに間違ってはいないが、私はそれを大々的には話していない。知っているのは、血縁者とごく数名の知人だけ、の筈だった。
(まあ、口止めしてた訳じゃないし)
黒髪黒目、平たい顔。典型的な日本人っぽい。一人でなくなると途端に強気になるのも、凄く日本人っぽい。
『何かご用でしょうか?』
『・・本当に日本人なんだ』
肯定の代わりに日本語で返事をすれば、少女はヘタリとその場に座り込んだ。
「アカリ、大丈夫か!?何か言われたのか?」
「大丈夫、なんでもない」
心配そうに側に駆け寄った青年は、手入れの行き届いた髪と肌をしている。着ている服もデザインこそはシンプルだがかなり質が高い。
定番として捉えるなら、王侯貴族か。
「あなたの話が聞きたいの」
「・・よろしければ中へどうぞ、大したお持て成しは出来ませんが」
中へ招き入れれば、後ろの方でバツが悪そうにしていた幼馴染も最後に玄関の扉をくぐった。
「一人暮らしなもので、座る場所もないのですけど」
「俺らは立ったままでいい」
「そう、お久しぶりね。キース」
「・・ああ」
態度からして話したのは幼馴染のキースで間違いないだろう。別に責めはしない。が、どうにも面倒事のようで辟易する。
コップは予備も含めて2つしかなく、飲み物は水しかない。断りを入れて会話の中心となるであろう私自身とアカリと呼ばれた少女の前にコップを置く。
「それで、何を聞きたいのでしょう?」
「あなた、日本人なのよね?」
「元、ですけど。今は普通の帝国臣民ですわ」
「そう、割り切ってるんだ」
「そうですね、今は違う人生です」
「あなた、この世界は二度目なんでしょう?」
「ええ、そうですね」
「つまりは一度地球に、日本に帰ってるのよね!?その方法を教えて!」
「残念ながら、貴女の求めている結果にはならないかと思います」
「どうして?」
「貴女は多分、元の世界の家族の所へ、そのままの体で帰りたいのでしょう?」
「・・それって」
「私は確かに日本に戻りました。こちらで死んで、あちらに転生したのです。時代も少し離れていましたし、何分子供でしたから、前の家族に会うことは出来ませんでした。それでも会いに行こうとして、不慮の事故で私は再び死を迎え、そうして気付けばこちらの世界に転生していたのです。勿論これもまた時代が違いますから、転移の時にお会いした方々に巡り合う事は出来ませんでした」
同じ世界だからこそ、混乱もあり変な子供だと不気味がられた。何故か受け継がれる記憶は枷でしかなく、転生先の両親にはどちらの世界でも気味悪がられて遠ざけられた。
だから今もこうして一人暮らしている。
「同じ世界に転生した事も、記憶を引き継いでいる事も、意図した結果ではなく偶然に過ぎません」
それが幸運だったとか、選ばれたからだとか、そういった自惚れを一切感じられない程に「この現象」は私に何も齎す事はなかった。
「私がお役に立てる事はないかと」




