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ネタ帳  作者: とある世界の日常を
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とある世界の苦悩と策

 時折、過去から時を越えて現代に目覚める人類が現れることがある。

 時を越えてとは言うが、実際は過去の失われた技術で現代まで眠っていただけであるが、その事実を知らぬ者に説明することは出来ない。その為大まかにはそう表現されている。しかし過去の人類はあまりの世界の変貌にその事実を受け入れることが出来ない。結果として過去の人類には事実を隠蔽し、ここを異世界とすることを決められた。その方が現代人にとっても都合が良かったのだ。

 そうして過去の人類は異世界からの来訪者として「稀人」と呼ばれ、突然異世界から迷い込んできた哀れな人として国家に保護されるようになった。


「稀人はどこから来るのでしょうね」

「表向きは異世界、実際は遺跡の未発見場所からの目覚めだろう」


 遺跡といっても失われた技術による建造物は現代のものよりも立派なものも中にはある。人類の歴史というものは一度途絶えており、その遺跡を研究解析することにより多くの真実が明らかになった。その大半は公表することの出来ない強大な事実で、そのときの事実を知る者達が中心になり国や宗教、組織を作った。その事実は後継者にのみ口伝で継承し、永い時の中で真実を知るものはごくわずかとなった。当時は噂が噂を呼び、建国時にはかなりの苦労と被害があったと王家にも伝えられている。


「保護という名目で、種馬か産む道具。稀人とは哀れな存在ですのね」

「仕方あるまい。人類を存続させるには必要な措置だ」

「必要だからこそ、従順な稀人が欲しいですわね」

「そればかりは運であろうな。大体が事情を知らぬが故、自らが選ばれた存在なのだと過信する。それによる行動は後先考えぬものであることの方が多いと伝え聞いている。自らが幸運であると疑いもなく行動する」

「過去の稀人もまさか、自らの行いが事細かに記録され、こうして纏められて教材となっているなど思ってもいないのでしょうね」

「頭の痛い話だ」

「記録によれば、前回の稀人が現れてからもうすぐ百年ですけれど、そちらの方が頭が痛くなるのではありませんかしら」

「ああ、そうだな。既に稀人による遺伝子の恩恵は薄くなっているだろうな」

「でしょうね、その影響をもっとも受けておいでなのはヨハネスお兄様なのではございませんこと」

「エリーゼは影響が低かったようでこの兄は嬉しく思う」

「どうして今更こんな教育を?本来このお勉強は王族から席を外し他家に嫁ぐ予定の姫には教えない事柄なのでは」

「必要になったからだ」

「・・続きの言葉はあまり聴きたくありませんわね」

「エリーゼ、お前は賢く勘も良い。常々なぜ女なのかと嘆いていたが、今回のことで神の存在とやらを信じたくなった」

「・・私も一国の皇女として生を受けたのですから、国の為に尽くさせていただきますわ」

「よろしい。一月後だ」

「謹んで拝命いたします。ハインケル皇太子殿下」


 本来であればエリーゼは貴族、または他国との関係を深めるための政略結婚をする予定であった。輿入れ先こそ決まっては居なかったものの、その候補として幾つかの王侯貴族がリストアップされていたのは知っている。それをなしにしてでも稀人の遺伝子を必要とする理由はここ数日で学び理解した。


「ゴブリンに襲撃された辺境の村・・」


 真実を知らなければ、たまにあることだと気にも留めなかっただろう。しかし真実を知った今ではそれが人類の未来を脅かす最初のほころびになるものだと理解できる。


「・・この世界は、緩やかに滅びに向かっているのね」

「そうだ。故に世界は好色の稀人を望んでいる」


 いつの時代にどちらの性別の稀人が現れても対応出来るだけの人材を、現存する各種族の長は常に確保しているそうだ。


「人族はまだ良い。元が稀人に近いからだろうな、退化が一番緩やかではある。次点でエルフやドワーフ、それ以降は似たり寄ったりだ。今回は人族の村であったがな」


 人族は姿形は稀人と全く変わらない為、どの時代でも一番恩恵を受けてはいる。そうして生まれた子は正しい遺伝子の種または苗床として、近隣国や国内の王公貴族へと差し出される。その遺伝子は薄れつつも引き継がれていき、人としての遺伝子を保ってはいるが、何分人族は数が多い。その為時折こうして滅ぶのだ。


「ここ暫くは女性の稀人が続いていたのですね」

「頭が痛いことだ。男と比べて生涯生める数に限りがあるからな。男であれば女の数十倍は遺伝子を残せる」

「男性は女性ほど選り好みもいたしませんしね」

「その通りだ。特にドワーフは焦っている。直接の接触が無かった分は遺伝子的価値の高い直系の男で補填はしたが、僅かに退化が早い。数が少ないからドワーフ国王の目も隅々まで行き届いているが、人族ほど数が多ければ危うかっただろう」


 ドワーフ族は皆小柄な体型をしている。どんなに成長しても140センチを超えることはない。その体格は太くなり、体毛も濃くなる。しかし個体差があり、体毛も薄く体の線も細い者もいる。そういった者は人族の子供とぱっと見は見分けがつかない。そういった固体は特に女が多い。

 だからこそ、稀人が男であれば繁殖が容易になる。体型がそれなりであれば多少顔が悪くとも化粧で誤魔化しが効くからだ。しかし化粧といってもやり過ぎてはいけない。なるべくナチュラルに見えるようにしなければならないのだ。あどけなさを残しつつも合法ロリなのだと認識できる程度の化粧。それはドワーフ王国で代々受け継がれ研鑚されている。


「(哀れではあるけれど、知らなければ彼らは幸せなまま。国の為に道具であり続ける私よりもは、随分と幸せではあるのかもしれないわね)」


 稀人の研究は多いに進んでいる。元々は先祖である種族なのだ。それは国主導で大掛かりに、そして時には密やかに進められた。現在の王侯貴族の殆どは過去の富裕層や権力者がそのときの環境に適応して目覚め、そして国を創ったと記されている。勿論公式な記録などではなく、一部の者しか知らない史実としての記録でしか残っていない情報だ。民も同じくそのときの環境に適応させた後に野に放たれた過去の人間である。

この世界は核戦争で壊滅した地球のその後。

現在繁栄しているのはその核戦争をかろうじて生き延び、そして進化した動植物。それとシェルターに非難して一時難を逃れたり、度重なる核戦争により汚染されていく地球になんとか適応しようと人体実験を国単位で繰り返した結果何とか適応した者たちや、一時的に冷凍睡眠などで非難し同じく遺伝子改良などで適応した人類などで構成されている。


稀人は冷凍睡眠などで眠っていた人類が何かがきっかけで出てくる減少である。主に人類の存続を目的に行われた行為であるため、同時期に比較的近い場所で複数人が目覚めるのが普通であるが、時間経過による劣化や自然災害による破損なども含めた被害により、時折ポツリと一人だけ発見されることもある。それは時代を超えるごとに確立が上がっており、現在では複数人で発見されるほうが稀。


初期は宇宙シェルターにて眠るものたちの目覚めのほうが多かった。その世代の者たちは多くが権力者で現在の王侯貴族の祖先となっている。現在目覚めているのは実験体としての特殊な遺伝操作された固体が殆ど。

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