星に願いを
ある時一組の男女が出会った。
男は所謂成金で、女はただ美しいだけが取り柄だった。
「どうしてあの男なんかの為にここまでする?」
「あの人だけよ。見返りを求めず私に全て与えてくれたのは」
最初はどうせ他の男と変わらない。少し経てば当然のように見返りを求めてくると思っていた。でもいくらお金を使おうと、男は女に何も求めて来なかった。
「どうして何も求めないの?」
「君が言ったんじゃないか。恋愛感情はないと、そういうものは苦痛だと」
「言ったけど、本気にする人はいなかったわ」
「そうか、それは残念だね」
不思議な男だった。
「明日は沖縄に行ってくるわ」
「何をするんだい?」
「ダイビングの予定よ。あと鍾乳洞を見て回るの」
「そうかい」
男はそばに居る事さえ求めない。
ただ男との間には一つだけ約束があった。それは5年後に結婚する事だ。ただそれだけ。
「そういえば、最近株を始めたみたいだね」
「ええ、昔からしてたものの延長だけどね。結構楽しいのよ」
「そうか、ならいいんだ」
結婚してもそれは殆ど変わりなかった。
「ねえ、私と結婚して、どうしたかったの?」
「ただ君が他の人のものになって欲しくなかった」
「・・そう」
誕生日を迎える度に私は尋ねた。
「欲しいものはある?」
「ただ君とずっと一緒にいたい」
「そう」
男は女の嫌がることは一切しなかった。ただ一緒に居ることを最後まで望み続けた。
「そうね、貴方が望むなら、してみましょうか」
薄暗い部屋の中、一人の女が微笑む。顔立ちの整った女の笑みはとても美しく、無邪気だ。
「さあ、貴方の望みを叶えましょうか」
◆
遠い東の果てにある島国には、流れ星が落ちた場所がある。そこは神秘に満ちた場所で、願いを叶える力があると言われている。
「ねえ、考え直してよ!大体そんなお伽話、本当に信じるなんてどうかしてるわ!!」
「うるさい・・」
「それに本当に島があるかどうかも分からないのよ!それを目指すだなんて・・」
東の果てへ向かうには、魑魅魍魎の跋扈する大海原を渡らなくてはならない。
「じゃあ着いて来るなよ」
「そんなこと今更出来るわけないでしょ!」
こうして幼馴染みが賢明に引き留める程度には、お伽話らしく不確かで曖昧な伝承しか残っていないものが、俺の旅の目的地だ。
「どうしてエキルはそんなに意地悪ばかり言うのよ・・」




