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鬨の声
この世界には過去7度の侵略を受けたと言われている。国ではなく世界そのものが、である。
「お伽話よ」
そう認識している者は多い。事実その侵略を正しい形で侵略だと認識していたのは、侵略の根幹に関わった者だけだとも言われている。その為真実を知る者の絶対数も少なく、同時に侵略の事実さえ知らない者が多い。
それ程までにその侵略は狡猾でよく仕込まれていたのだ。
「だからこそ、真実を知る者達はこうして継承してるんだ」
「はい、お父様」
恐らく多くの者は狂信者がまた有り得ないほら話をしていると思っている。多くの者にとってはそれこそが真実であり、史実にもそう記されている。
「馬鹿みたい」
父は従順で忠実な兄ばかりにかまけて、屁理屈ばかりの私をまるでいないかのように扱う。
「そんなことを言ってはなりませんよ。お前にもいつか分かる時が来ます」
「母さま・・」
そんな母も狂信者の一人だ。
父も、母も、兄も、皆私の周りは狂っている。
「異世界の侵略者は時に英雄として、時に魔王としてこの世界に現れる。魔王であれば分かり易いが、その分被害は甚大だ」




