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ネタ帳  作者: とある世界の日常を
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個別の自由

 いつも、誰にも期待できない自分がいる。

 期待できないのは、落胆したくないからで、最終的には自分が傷付きたくないからだ。

 それでも人に優しくするのは、面倒事が嫌いだからだ。面倒事はいつも人との関わりを長引かせる。だから優しくする。そうして優しく突き放す。


「あ、お久しぶりです!」

「あ~本当ですね、お久しぶりです!元気そうですね、仕事は順調ですか?」


 私の言葉は嘘が多い。本当は名前どころか顔も記憶にない。勿論何処で会ったのかも。

 他人に興味がないのだ。昔はまだマシだったと思うが、気が付いた時には他人を直ぐにはを覚えられなくなっていた。


 まあいいか。


 他人に興味が持てないという事にさえ、当時は無関心だった。今もそれは変わっていないが、原因を探るようになり、他人に興味が持てないのは、自分に興味が無いからだと知った。

 最低限は気にしている。寒ければ服を着て、暑ければ服を脱ぐ。お腹が減れば食事を摂り、眠くなれば赴くがままに、生きていくための最低限は熟した。身が汚れればそれなりに整え、暇を持て余せば暇潰しになるものを適当に見繕った。

 一応は人らしい生活を送っている。


 しかしそこに個を主張する確固たるものはない。


 やはり、興味がないのだ。

 こだわりを持つという事は、他に依存するとちう事だった。依存の出来ない私にとって、それをしなくては維持できないこだわりなど持つ必要のないモノだった。依存してまで持ちたいという魅力のあるモノではなかった。


 物に執着はない。全ての物は世の中に溢れていて、大抵の物は代替が利く。手に入れようと思えば簡単に入るのだ。

 誕生日プレゼントに形ある物を貰うと、何とも言えない気持ちになる。大切にしなくてはならないと思うからだ。ただ思ってはいても心はそれに付いて来られずにその品を持て余す。その何とも言えない居心地の悪さはその品を贈った本人に向く。

 つまりその人を何となく面倒だと思うのだ。


四捨五入して四十年、正確に言えば恐らく三十九年。自分の年齢にさえ興味はない。因みに思い出にも興味はないからか、あまり昔を思い出せない。とはいえ全てを忘れている訳では無い。

傷付いたり後悔しているような後味の悪い思い出は何故か忘れられないものなのだ。それご正確な記憶かは定かではない。でもそれらは私の中に記憶として残っている。


他人にも自分にも興味が持てないなりに何かと行動は起こしていた。一時期は婚活も活発に行っていたし、何度かは結婚を前提にお付き合いという話になった。しかし結局毎回フラれて終わった。ある時、僕に興味を持っていないように見えると言われて気付いた。今までフラれた理由もそれに近い理由があるのだろう。

それから数度の婚活はしたものの、その時の言葉がしこりのように頭の隅に残っていて、付き合いが続く事もなければ、婚活も辞めてしまった。


人との関わりがより面倒になって、人を避ける様に総人口の少ない県の少し栄えた場所からそう遠くない中古の家を購入し、そこに隠居するように引っ越した。逃げたのだ。煩わしい事から。

あれから私の心は一応の平穏を保っている。

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