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ネタ帳  作者: とある世界の日常を
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理想の無人島生活

乙女ゲームの事後の世界です。

悪役令嬢転生で結末を回避せずに受け入れた後のお話。

 流行りの悪役令嬢よろしく、婚約者である王子に婚約破棄され、孤島の管理という名目で追放された侯爵令嬢、ユリアナ・リュ・マクファーレン。そう、彼女は異世界転生者である。


「呪うなら、愚行を犯した己を呪うのだな」

「・・・」

「絶望に言葉も出ないか。今更後悔しても遅い」


 この王子は案外暇なのかもしれない。原作には孤島まで王子が付いてきたなどという描写はなかったように思うが、なかっただけで実際はそうだったのかもしれない。


「せめてもの情けだ。月に一度はこれと同等の支援をやろう」


 小麦が一袋に、ジャガイモ一袋、小さな岩塩に硬くてまずいパンが数個。

 明らかにひと月分もない。いや、支援があるだけマシというものか。


「せいぜい残りの人生で悔い改めよ!」


 それが言いたいがためだけについてきたのだろうか。

 ユリアナを港に置き去りにして、一行は王国へと帰って行った。


「あ~。せいせいした!」


 ユリアナは早速食料を持てるだけ持って、港よりずいぶんと遠くに見える屋敷へと向かった。


「ていうか、一応管理って名目なら家まで案内しなさいよね!」


 プンスカ文句を垂れながらも、ユリアナの足取りは軽い。


「それにしても、思ってたより結構よさげな無人島ね。広さも十分にあるし、これ何らかの動物もいるんじゃないかしら。ウサギだったら有難いわねぇ」


 足取りが軽いどころか、楽しそうである。

 これは何も状況を理解できていないからという訳ではない。


「うふふふ、まさか念願の無人島生活が異世界に転生してから叶うなんて、なんて幸運なのかしら!」


 軽いどころか、スキップまでし始めた。


「まずは何から始めようかしら。ああ、でも楽しむより先に居住環境を整えなきゃよね」



「あら、随分と傷んでますのね」


 辛うじて屋根に穴は開いていないものの、家自体も古くかび臭い。歩くたびに床はギシギシと悲鳴を上げているようにも聞こえる。


「掃除だけで事足りますかしら」


 不安はあってもここに住むしかないのだ。あいにくこの世界には魔法というものが名残程度にしか存在しない。というか本当に魔法なのか疑問に思うくらいだ。それくらい魔法にしては不便なのである。

 一応それらしきものは王家が所有しており、神具と呼ばれている。日本でいう三種の神器のようなものだ。神話として語り継がれているが、実際にその力を持つかどうか確かめられるのは王族しかいない。一応婚約者という立場であったので神具については調べることも出来たし、触る事は出来なくとも見せてもらう事は出来た。

 見ただけでそれがどういうものかもわかるわけがなく、はっきり言って象徴のようなものだと思っている。実体はないのだろう。


「一応、一通りそろっているようですけど、使えるのかしら・・」


 幸い今日はまだ日中で快晴である。


「まずは洗濯と日干しからですわね」


 大きいとは言えない家のあちこちから使えそうな物をかき集めどんどん日干しする。


「この洗濯桶、穴が空いていますわ」

「これは使えますわね」

「あら、小さいし荒れてるけど、畑までありますのね!」

「まあまあまあ!種かしら?何の種かしら?」


 洗濯桶に穴があいてはいたものの、直ぐに代わりになりそうなものも見つけた。先に家の中にあったカビ臭い布類を洗濯して干してしまう為にもユリアナは素早く行動した。


「このカーテンはまだ使えますわね」

「これは作業着かしら?」

「これは雑巾にしてしまいましょう!」

「意外と色々ありますのね」


 洗濯が終われば今度は拭き掃除だ。取りあえずキッチンと寝床だけは綺麗にしておかなくては。


「竈が暖炉代わりですのね、それならベッドをリビングに移動してしまった方が過ごしやすそうですわね。どうせならワンルームみたいにしてしまいたいですわ」


 家は公爵令嬢として過ごしてきたお屋敷よりもは随分と小さいが、前世で過ごしたワンルームマンションよりもはかなり広い。

 お風呂はないが、トイレはある。ボットンみたいになってはいるが、下にはなにもない。外から見たら柵と小屋があったので、恐らく豚か何かを飼っていたのだろう。


「今は豚などおりませんから、改良が必要ですわね」


 そのまま肥だめにしてしまうという手もあるが、臭いが酷いことになりそうだ。豚がいれば捕まえて飼いたいけど、野生化していると仮定するとかなり難易度が高い。前世みたいな箱罠があれば多少は違うだろうが、そもそも野生化した豚がちゃんと飼えるのかどうかも不安だ。


「取り敢えず、帰省本能を信じて柵は直しましょう」


 柵の中に餌場を作って、柵自体を強化して入り口を開閉式にすれば大きな箱罠の役割を果たしてくれるかもしれない。柵の形は工夫が必要だろう。何せ豚は以外と怖い生き物なのだ。養豚農家で豚小屋内で倒れた農場主が豚に食われたという事件は何件か知っている。映画でも死体処理で豚に食わせるというシーンもあった。家畜として改良された豚でそれなのだから、野生化した豚はもっと危険度が上がるに違いない。


「餌場と寝床は分けるべきですわね」


 子豚も飼う事も想定して、足元の隙間は小さくしなくてはならないだろう。こうして見ると下は小動物が余裕を持って通れる位には広い。


「・・折角構想も上がりましたし先にやってしまいたい気も致しますが、先ずは私の生活空間の確保を優先しなくてはね。使えそうな材料を確認しながら作業を進めましょう!」


 やるべき事は多すぎる程にある。こうして言葉にするだけでも物事は整理され頭はスッキリとする。


「あら、こんな所にシミが。これはきっと雨漏りね。余っていた樽を置いておきましょう」

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