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母と子
かみさま、わたしはなにを捧げればしあわせになれるのでしょうか。
「れんげ!早く来なさい」
「はい、おかあさま」
2020年のオリンピックも近いというのに、私の母は自分が世界の中心だと信じて疑わない。
お嬢様というものに憧れでも持っていたのだろう。成金の父と結婚した母は金にものを言わせて好き放題にしている。最初は本物のお嬢様というものになるための努力はしたのだろう。雇っている家庭教師たちは皆一度は母に教えた事があるらしかった。
「この私も先生方に教えて貰ったのよ」
自慢げに話す母は教えられた事が身についているようには見えなかった。
早々に諦めた「本物のお嬢様」の姿は自分の娘に投影する事に決めたらしい。物心つく頃には幾人かの厳しい礼儀作法の先生がそばにいた。




