何がそうまでさせるのか
異世界転移ものですが、呪い的なものが・・・
誰も信じなかった。誰にも心を許さなかった。
心に燻る寂しさから目をそらし、独りでも生きていける。独りでいる方が楽だと自分に言い聞かせた。本当は孤独を恐れている事を理解していながらも、信じてしまう事の方がもっと恐ろしいのだと、自分自身が感じていた。
「(本当は、信じるという事ではなく、信じた自分が裏切られる事によって自分が傷付くのが怖いのよね)」
何故自分が人との信頼関係を築けないのか、考えた末の答えはいつも最後は「自分が傷付きたくないから」だった。
「(自分は傷付かない安全な場所にいて、相手には傷付いてでも私からの信頼を勝ち取れなんて、酷く自己中心的な願望よね)」
何故こうなったのか、はっきりとした原因は今もわからない。記憶に残る過去を振り返っても、トラウマと呼べるようなトラウマは存在しない。ただこれは恐らく原因の一つであろうという出来事は幾つもある。ただその程度の経験は誰しもしていそうな経験ではあるし、特別な原因だとは思えない。それに今ではその出来事に折り合いをつけてはいる、と思う。
「(表面上は愛想も良いし、社交的だから気付かれないっていうのも問題なのかしら・・)」
基本的に初めて会った人であっても気安く話しかける為に、相手も何となく打ち解けやすさを感じるのか周囲から見れば初めて会った者同士には見えないらしい。だからこそ、本当は人見知りなのだと言っても誰も信じてはくれない。
「(本職でも副業でも、基本初めて会う人ってのはこれから共に働く会社の人か、取引先とかのお客様なのに、人見知り発揮して黙っていて良い訳がないじゃん、だから親しみ持てるように話するのは仕事としても当然だと思うけど・・他の人はそうじゃないのかね)」
仕事以外で初めて会うとしても、約束して会うとか、出会いを求めてそう言った場に行くとか、色々な初対面があると思うが、基本的にそんな場所で人見知りと言って黙ってしまえば目的は達成できない。だからこそ人見知りを隠して愛想を良くし積極的に話を振る。
街中で赤の他人に愛想はふらない。そもそも目も合わせないようにしている。特に男と目線が合えば声をかけてくるような輩がいるからだ。人との距離を詰められたくないから満員電車にはなるべく乗らないし、人が多い祭りやイベントも遠くから楽しむ事が多い。
「(そもそも、人と出かける事自体が面倒・・)」
何をするにしても独りが好きだ。独りで決めて、独りで行う。それが楽でいい。
本当にそう思っていると思う。人に合わせて予定を決めるのは面倒だし、人のペースに合わせるのはたまにならいいけど毎日は絶対に嫌だ。自分の行動を阻害されるのは何よりも嫌だけど、人とそれについて喧嘩するのも面倒で嫌。話し合いをすれば良いというが、否定しかしないであろう人物と平行線の議論を続ける事の無意味さと疲労は何よりも味わいたくない。
「(逃げてるって事になるんだろうなぁ・・)」
人はそんなに馬鹿でも鈍感でもない。数回会えば何となく私の本性にも気付いているだろうとも思う。でもそれを私から話そうとは思わないし、あからさまにそれを見せようとも思わない。指摘された事が合っていれば否定はしないだろう。取り繕う事はするだろうけど。
「(本当に、何がどうなってこんな面倒な性格になっちゃったんだろ)」
もう長年、変わろうと思いながら自己分析を進めては変えられるところから改善している。
人見知りは直したし、なるべく嘘は付かない。他人を傷つけないように言葉には気を付けているし、相手を否定するような事は言わない。悪い事にも手を出さない。
「(最終的に、この飽きっぽい性格がネックなのかも・・)」
飽きっぽさに伴い新しい事に興味を持つ好奇心の旺盛さも身に着けた。しかしいずれも自分のすべてをかけてでも続けたいと思えるようなものではない。




