乙女ゲームじゃなくて、イケメン収集型のスマホゲームに転生しました。
2018.08.08
乙女ゲームはしないけど、イケメンな絵が好きなので。
モブ転生。展開は考えてない。
出会いは唐突だった。
いかにもメインでしかも初期ヒーロー兼サポート役の彼の名前はアレン。赤い髪に赤い瞳と整った顔立ちだけでは気付かなかっただろう。だっていくらゲームの世界だとはいえ、二次元と三次元ではよほど色合いを派手にするだとか、口調に癖をつけるだとか、髪型を奇抜なものにしたり、服装を民族衣装にしたりと特徴を付けなければ殆ど同じ顔だ。イケメンに書かれていたらなおさら。
「(ここってあの世界なの?いや、でもまだ他人の空似の可能性だってあるよね)」
この世界に生まれて十五年、両親のカラフルな頭髪や目の色に異世界転生チート主人公いやっふぅ!!と興奮したのもつかの間。周囲が魔法を使う気配もなければ、自分が魔法を使えるような兆候も一切ない。それならば内政チートとか魔石開発マイウーと楽して金儲けウハウハしてやると意気込んでも、肝心の魔石が見当たらない。というか多分存在しないのかな。
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最近、森の獣たちの様子がおかしいらしい。
森に狩りに行っても、鳥やウサギ等の小動物を見かけなくなったそうだ。イノシシやシカはまだいるので、そのあたりを見つけて狩ってはいるそうだが、それとなく落ち着かない様子で何か別のものから逃げているようだったらしい。
森の中にはクマや狼などの捕食者もいるのだが、それらのマーキングの跡が最近酷いらしい。子育ての時期でもないのに、荒々しいマーキングの跡がそこかしこに残っているから、下手に踏み込めないとも言っていたそうだ。
「何か別の獣が新しく森に入ったんだろう。森の奥にはいかないように」
「はい、わかりました」
私が行くのはいつも森に入ってすぐの場所ばかりだ。山菜や薬になる草等を採取している。
「やっぱり今日は森に行くのはおやめなさいな。来週には仕事もひと段落つくから、来週みんなで一緒にとりに行きましょう」
「でももう薬草の在庫も少ないわ。今週はまだ仕事が忙しいのだし、なくなったら大変よ」
「でも一人で行かせるなんて、心配だわ」
「昨日も、一昨日も山菜を採りには行ったのだもの。絶対に奥にはいかないわ」




