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わがまま令嬢は未来を知る
私の父は仕事が忙しく、あまり家に帰ってこない。
たまに帰ってきても忙しいからとすぐに自室へ逃げ込み、ほとんど会話らしい会話をした記憶はない。
母は私で父の関心を引こうと、私に完璧を求める。会話に親子らしさはなく、まるで私は母のお人形だ。
そんな両親よりも、私を誉めそやしてくれる祖父母に懐くのは必然だったと言えるだろう。
「おじい様、おばあ様!」
「私の可愛い子猫ちゃん、こちらへおいでなさいな」
祖父母はただひたすらに孫を可愛がった。
祖父母に叱られた事はない。だからこそ、居心地が良かった。
「可愛くない子ね」
自分に懐かないだからだろう。母はそう呟いて一層キツく私を叱りつけた。
「旦那様からも叱って下さいまし」
「家の事はお前に任せている」
父は相変わらず無関心だ。
私の中で両親への関心は失われつつあった。




