巡り巡りて、また巡る
これは、彼女を巡る物語りー・・・
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吹きすさぶ風は寒く、熱く滾る体を覚ましてくれる。
温かな血潮を失いつつある体は、徐々にその体温を失っていく。
「ごめんなさい・・」
紅く滴る血は体を伝い冷え行く。
私は私のエゴでこの見ず知らずの人を殺した。求められるがままに残酷に。
言葉だけは謝罪しているが、分かっている。もう私の心は壊れていて、殺人は私にとっても快楽となりつつある。こうして触れる臓物は美しく、そして暖かい。
「あの人だけは、失いたくないの」
初めて人を殺した時の感覚は、もう覚えていない。
あの時感じたものは、何だったのかさえ、もう忘れてしまった。
男 優しさが取り柄の平凡な男。仕事は真面目に熟すが、特別出来る男という訳ではない。見目は特別ハンサムという訳ではないが、平均的な顔をしている。つまり目立たないが不細工でもない。よく言う優しいだけの男である。しかしその優しさと真面目さが功を奏して、女の心を遂に射止める。というか、付き合うだけなら良いかと思わせた。女のペースに合わせて関係を進め、女の嫌がる事は決してせず、女に何かを押し付けるような発言もしない。そして叱る事はあっても、怒る事はなかった。付き合ってからも何もかもが長かった。食事デートから買い物デート、お出かけデート、家デート。最初は手さえ繋いでもらえなかったが、男は本当に根気強く女に合わせた。南極の氷がゆっくりと溶け出す様に、女の心は徐々に開いていった。女が本当に可愛くなるのは、只一人、男の前でだけだった。長い時間を掛けて、漸く婚約し、遂にプロポーズからの結婚。
女 八方美人。人を信用出来ない。心から好きになれない。一人が良いと思っている。しかし愛想は良いので良く勘違いされる。面倒臭がり。恋愛に関しては殊更人を信用していない。貞操観念は低い。金銭ありの体の関係は幾つかあった。男からアプローチがあっても、何時もの事だと本気にはしていなかった。職場の人だという事もあり、やんわり断り続けていた。しかし少しずつ信頼を持ちつつあり、心が動いていった。しかし魂の因縁で呪いを受けており、本当に幸せを実感してその絶頂とも言える時に呪いは発動する。女は世界の敵としてこの世界に君臨する。
その呪いは自我を持っている。より女を苦しめるように、苛まれるように、女の意思の自由を奪う。
男を殺されたくなければ、女は別の命を自らの手で殺し呪いに差し出さなくてはならない。呪いは死を何よりも好み、狂っていく女を静かに楽しんでいた。
主人公 男、女とは何も関係ない。只のヒーローみたいな男。なんにでも前向きで




