表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネタ帳  作者: とある世界の日常を
38/178

世界の中心

精霊に愛された少年が、死の間際に時の狭間に閉じ込められ、箱庭の中で繰り返される時を生きるお話し。

「知らないのね、この世界は彼を中心に造られているのよ」


 矮小で愚かな、傲慢な王。

 馬鹿げた彼の要求に、誰もが粛々と従うのは見ていて不愉快にさえ思えた。


「今まで、この世界の誰もが何もしなかったと思うの?」


 その傍らでいつも身を削る様に政務を熟していた彼女を、何とか助けたいと思った。


「ここから、誰も逃れる事は出来ない。目を逸らす事さえ愚策なのよ」


 こけた頬に一滴の涙が伝う。


「本当に何も知らないのは、王だけよ」


 精霊に愛された王の為に、精霊により作られた世界。

 そこに人間の道理など関係ない。只ひたすらに純粋な王は、素直な気持ちで人を憎み、羨み、その感情の赴くままに治世を行う。それは治世というには余りにもお粗末で、子供の児戯に等しかった。


「王は王でなくてはならない。せめてこの世界に影響を与えぬように退位を促した。でもそれでは駄目だった」


 幾度も繰り返される世界で、彼女はずっと王妃だった。


「心が擦り切れそうよ。王妃にならない道も模索したのに、彼はおそらく心の底で私が王妃である事を求めているの。意味が分からないわ。彼は私を愛しているわけでもないのに。どうして私が王妃でなくてはならないのか」



「おそらく、当てつけなのだろうけど。ここに来る前の記憶はもうほとんど残っていないわ。けどそこでは私は彼の存在さえ知らなかった。何があったのかは覚えていないわ。けれど彼にとって許せない何かがきっとあったのでしょうね。だから私だけは毎回の記憶を保持して繰り返している」


 王は王妃に一切手を出していないそうだ。数多の愛人を毎夜抱き、まるで王妃に見せつけるように多くの子をなしている。子を産まない王妃を蔑む側室も少なくはない。それでも王は王妃に王妃であることを求めている。


「繰り返される歴史の中で、最初の数回は抱かれた記憶があるわ。それ以降は、気まぐれに時折。王が興味を持たないのであればと私も愛人を持った事もあるけど、そのすべてが殺されてしまった」


 子をなさないからと臣下に下げ渡す事もせず、ただ飼い殺している。


「国王は、彼はあなたを愛しているのでは?」

「・・・どこに愛があるというの?あるのはただのいびつな執着だけだわ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ