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最果ての世界で君を待つ
私には知識があっても記憶がない。
私にあるのは、ただ誰かを待っているのだという想い。
「ああ、今宵も月が綺麗だ・・」
青白く輝く大きな月の影に、控え目に自身を主張する白い月がある。
それに違和感を覚えるのは、脳に刻まれたようにある知識の所為だ。
「兎のいる月とは、何だろうか・・」
記憶の中では淡く黄金色に輝く月と一緒に、兎が楽しげに餅つきをしている景色が浮かぶ。
私の中には様々な形をした、見たことの無い動植物や現象が在る。
その記憶は無為にこの世界を歩き回る私の丁度良い暇潰しになる。
その記憶とこの世界が同一なのか、その情報を私は持っていない。ただ記憶にある世界は「地球」と呼ばれていて、この世界は「最果て」という名称であるという事実は知っている。
「なんて、美しい・・」
何年も歩いて、歩いて、漸く辿り着いたその場所には大きくて美しい湖があった。
ターコイズブルーの美しい湖。




