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ネタ帳  作者: とある世界の日常を
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切実に異世界補正を求めます。

 ここ最近飽和状態の異世界転生やトリップものでは、当たり前に主人公として活躍できるだけの能力を持っていたりして、主人公は当たり前に博識で異世界無双をしちゃってた。

 私はその爽快感が好きで、良くそういった小説や漫画を読み漁っていた。

 異世界にもし行けたら能力は何もいらないから、ただ旅行がしたいな、そうやって意味のない妄想を繰り広げては、現実の旅行計画を立てたりしていた。



 不意に肩を揺すられる衝動で目が覚めた。


「わっ?!」

「*******!」

「え、何?」

「******」

「?」


 健康的な日に焼けた肌の東南アジア系の女性は何かを言って去って行く。結局何を言っているのかは分からなかった。座っていたらいつの間にか眠ってしまっていたらしい。


 うん、そしてまだ目が覚めていないらしい。


 ノバラはヨーロッパ風の街並みに見惚れながら、数年前に一年程ヨーロッパに滞在していた頃の思い出に浸る。


「夢にしてははっきりしてるなぁ」


 夢で好きなように動ける事はこれまでもあった。覚えている夢は映画の影響を受けることが多くて、昔はよくホラー映画を観た後の夢で散々な目に遭っていたのだが、最近は行きたい方向に行ったり、自分の思い描く展開に持って行けたりと楽しむ事が増えた。もどかしかったシーンを夢で改変したりと、結構好き勝手に出来るのは嬉しかった。


 ノバラは座っていた木箱から立ち上がると、人で賑わっている方向へと足を進めた。


 旅行していた時の思い出から夢が構成されているんだなとノバラは思った。

 ヨーロッパの古い町並みをそのまま綺麗に古臭さだけを無くして再現したかのような街は、まるで観光地の様に綺麗ではあったが、現代的なものが排除されている感じだ。人も絵画に描かれている様な恰好をしているが、何となく小綺麗に見える。昔のヨーロッパは排泄物を窓から投げ捨てていたという知識はあるし、お風呂に入る習慣もないから、現実ではもっと汚いはずだ。

 まさにここは理想の中世ヨーロッパの景色と言えるだろう。


「どうせ夢なら言葉も分かるようにしてくれればいいのに」


 文句を言っても仕方がないが、そう思わずにはいられなかった。

 街の中心部は小高い山になっており、その山の上には立派なお城が建っている。こういう山の上にあるお城は別荘の意味合いが強かった記憶があるが、そのお城は大きくて少し変わった造りをしている様に見えた。


 気楽に観光をするノバラとは違い、街の住人は一見男の様な格好をしているノバラに好奇の目を向けている。男の様な、とは言ってもノバラの来ている服はただのパンツタイプのスーツだ。オーダーメイドで足形から作ったお気に入りのショートブーツを履いている。


 ここはノバラの夢の中などではなく、ノバラのいた世界とは別の世界、所謂異世界と呼ばれるうちの一つだった。


 この世界では異世界人は「渡り人」と呼ばれており、世界に影響を及ぼす知識や技術をもたらす存在として保護という名の管理をされる。権利は最初に異世界人を保護した国に与えられるもので、各国は自国の国益の為に見慣れぬ服を着ている者を発見した場合は国軍への報告義務を国民に課している。その情報で国軍は動き「渡り人」の確保に動く。それが正しく「渡り人」であり、確保できた場合のみ情報提供者に褒賞金が与えられる。

 また「渡り人」を確保する理由はもう一つある。総じて「渡り人」は犯罪に走りやすいのだ。それもこの世界ではまだ行われていない犯罪。つまり手の込んだ詐欺等を行うのでそれを阻止する為というのもある。だからこそ、上記に当てはまらない者でも、国の管理下に置かれるのである。

 とは言え「渡り人」は名前は知られているものの、実際にそれを発見した人は非常に少ない。一部では作り話だと言う者もいれば、神の使いだと言う宗教団体もいる。


 ノバラの着ている服は少しこちらの世界の男性が着る服に似ていた。しかもノバラの化粧は薄目で髪型も前下がりのボブで短い為、一見中性的な美少年に見えなくもない。だから多少個性のある服を着たお忍びの貴族に見える。ノバラが「渡り人」と呼ばれる異世界人だと気付くのは中々に目聡い者だけであろう。


 そうこうしている内に日が傾いてきた。

 夢で有れば都合良く誰かの家に泊めて貰ったりも出来るだろうし、泊めて貰えなくても何だかんだでどうにかなるだろうと気楽に考えていた。


「・・・寒い」


 昼間は日が照っていた為に少し暑いくらいに感じていた気温は、今はもう下がってしまいスーツだけだと肌寒く感じてしまう。このまま一晩過ごせば確実に風邪をひきそうだ。


「結局、言葉分かんないし・・・」


 言葉が分からなければ話しかける事にも苦労するし、とてもじゃないが日本大使館も探せない。


「スマホと財布、ていうか荷物どこ~・・・」


 ノバラはいい加減、ここが夢の中ではない事に気が付いていた。

 とはいえ旅行に来た記憶はないし、夜になっても殆ど外灯もないここが現代だという事も信じられなかった。


「(発展途上国、って訳でもないよねぇ・・発展途上国でもスマホは何故か普及してたりするもんね。つか車もバイクも通らないとかありえないし)」


 それどころか、街中には自転車さえなかった。あるのは精々馬車が荷車だ。


「(異世界転移・・かもしれないけど、自動翻訳とか特殊能力とかないわけ~?)」


 どこぞの発展途上国よりも不便そうな街を見ながら、ノバラは小さくため息を吐いた。

 人気がない事が逆にありがたい。世界基準でここがどの程度の街なのかは知りもしないが、人が多ければそれだけ悪人の割合も増える。善人にしろ悪人にしろ、見つからなければ何も起きない。

 ノバラは寒さがしのげて身を隠せる場所を探しながらゆっくりと歩を進めた。

異世界転移⇒暫く気付かず日本大使館を探して動き回る⇒スマホや車どころか街灯もない事に不信感を覚える⇒どんどん暗くなる街に不安を覚える⇒騒がしい方向へ行こうとして、この世界のお金もない上に治安状況も知らない中で事件に巻き込まれたくないと思い、野宿が出来そうな場所を探す⇒人通りの全くない閑静な住宅街だと思われる区画に程よく物陰になっている場所を見つける⇒野宿に適した場所なんて実際知らないし、ここでいいやとそこに寝る事に⇒一応無事に朝を迎えるも、体中が軋んでいる⇒とりあえずお金がないことにはどうしようもないので、日の出と共に場所をうつる⇒適当に歩いていれば、徐々に人通りも増えてきた⇒とりあえず人の進む方へ足を向ける⇒朝市みたいな場所に辿り着く⇒朝市からそう遠くない場所に小さな噴水広場みたいなとこを見つける⇒とりあえずそこに居座り、人々を観察⇒噴水の水は飲んでも大丈夫らしいが、結局怖くて飲めない⇒人々の足の動きがゆっくりになった頃を見計らい、歌を唄う⇒初めて聞く異国の歌に人が集まってくる⇒帽子を手に歌いながらお捻りをねだり、そのまま足下に帽子を置く⇒歌い終わればお捻りが入れられる⇒頭を下げれば拍手がなり、また唄う⇒歌い終わればまたお金が投げ入れられ、また歌が始まる⇒そこそこ入ったところで帽子を下げて、締めの歌を唄う⇒拍手で終わり、市場に向かう⇒お金に数字が書かれていないので、幾らか分からないので暫く買い物する人達を観察⇒手元のお金と見比べてどれで何が買えるのか調べる⇒幾つかの価値が分かったので、腹拵えにそれを購入する⇒稼いだお金は数日分の食費にはなりそうだ⇒宿屋を探すも見つからずまた日が暮れそう⇒仕方なく前日と同じような場所を探して座り込む⇒野犬が現れて実害はなかったものの、怖い思いをした⇒絶対に宿屋を見つけると決意するも見つからす、道行く女性にジェスチャーで宿を探していると伝えるもイマイチ伝わっていないのか、スルーされるか、大まかな方角を指すだけで埒があかない⇒とりあえず指差された方角に進むもやっぱり分からず⇒子供が寄ってきて何処かに連れて行こうとする⇒宿を知っているかと聞くと笑顔で頷いて引っ張るのでついて行ってみる事に⇒しかし裏路地に入ろうとした所でおかしい事に気付き止まる⇒なおも笑顔で引っ張ろうとする子供の手を離そうとすると、複数の子供に囲まれる⇒あっという間にサイフをすられて、主犯の子供も何処かへ行ってしまう⇒しかも宿も分からず⇒落ち込んでいると優しそうな男に話し掛けられる⇒宿屋をしらないか聞くと男はこれまた知っているというふうに主人公を先導する⇒しかしジェスチャーは正確に伝わっておらず、主人公を娼婦と勘違いしていた⇒連れて行かれたのは連れ込み宿だった⇒直前で気付き断れば、優しそうな男は何やら悪態をついて去って行った⇒連れ込み宿で途方に暮れていれば、宿の番頭が何処かへの道順を教えてくれた⇒嫌な予感はしたものの、教えられた場所へ行ってみることに⇒案の定吉原とかを彷彿とさせる売春街だった⇒そこからそう遠くない広場でまた歌を唄う⇒周りにいる娼婦に比べれば健康そうで見目も清潔だからか、よく声を掛けられる⇒その中から身なりの良い男を選びホテルへ⇒結構良い感じのホテルに連れて行かれる⇒

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