箱庭の国
ここは箱庭。人が、人のエゴによって、人の為に造られた歪な箱庭。
「海の向こうには何があるの?」
「海の果てさ。何もない」
迷い込んだのは記憶を持ったまま転生した幼子。
「どうしてこの街には船がないの?」
「船は神の持ち物なのさ」
この世界の海は凶暴な魔物に溢れており、海を渡る事は出来ないという。この街どころか、この世界に海を渡る為の船という乗り物は神話でしか存在しない。
「魔法使いは空を飛べるのに、どうして海を越えられないの?」
「アンタは知りたがりだねぇ、魔法使いの魔力じゃ、果てまで持たないからさ。始まりの魔法使いは魔力が切れて溺れそうになるのを、神の船に助けられて命辛々この国に戻って来たのさ」
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それは人が働かずに済む時代。労働の全てが機械化され、一般の中流家庭にもアンドロイドが普及した時代。人々は小さな箱庭を作った。金持ちの道楽で作られたエゴの塊の様な箱庭。そこには色々なものが実験的に作られていた。
獣の脳を人に近づけた実験体。人の遺伝子を操作して動物と融合させたり、異種族の動物の遺伝子を掛け合わせたキメラ。一部を異常に発達させられた歪な人や獣。無理矢理起こされた退化とも言える進化は、様々な歪みを生じているにも関わらず、彼らはそれさえも放逐した。
箱庭、というのはいささか優しすぎる表現だったかもしれない。そう、そこはまさに人の業のおもちゃ箱。
これは、そんな世界の物語り。
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魔法はある。
ナノマシンにより起こされる現象である。現象には鍵となる言葉がある。
ナノマシンの行使には適正があり、それにより扱える魔法の量が変わる。
島の大きさはオーストラリアくらい。かなり広い。
ぐるりと島を囲む電子結界があり、その内部でのみ魔法の行使が可能。
内部はナノマシンによりモニタリングされており、外部の人間はさしずめドラマや映画の様に世界を楽しんでいる。
時代設定は人気のある中世ヨーロッパで、ファンタジーである。出資者の中には日本マニアの者もおり、江戸風の日本も存在する。出資者は勿論富裕層であるので、結構色々な国の有名な時代が元になった街が幾つも存在する。西部劇の様な街や、ヴェネツィア、エジプト、中国と様々な特色の街がある。好きなものと面白いもの、そして後ろ暗いものを隠している様な国。
前述の通り、動物実験は勿論、遺伝子改良の人体実験。クローンも勿論存在している。
金持ちは自分のクローンを箱庭の貴族や権力者にして、まるで別の人生を歩んでいるように楽しんでいる人もいる。ただし、そのクローンは自分がクローンである事を知らない。
人口の数はある程度管理されている。増えすぎたら疫病をはやらせたり、魔物に混ぜて魔物型アンドロイドで人を殺したりしている。その場合は大抵魔物型アンドロイドを操作する人がいて、ひと時の狩りとしての趣向もある。かなり下種な箱庭である。
箱庭の存在は殆ど知られていない。都市伝説のようなものとされている。
開発に関わった人間で反倫理的だと排除する動きをする団体も密かに存在している。
子供は普通にセックスすれば生まれるが、王侯貴族や上流階級の子供は神の木の果実から生まれる。腹から生まれる人種は下等だとされている。ただし、セックスは普通にある。
災害や天災の多くは人為的に起こされるものであり、自然発生のものは殆どない。一応たまに自然発生のものもある。戦争や魔物の大量発生も同様だ。
「たまにはヒーローがいた方が面白いだろう」
「じゃあ、悪役もいなくちゃ」
「ヒロインも必要よ」
複数の思惑で、同時期に別の場所で似たような事が起こるのは必然と言える。
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人間ほど、残酷で非道な生物はいないだろう。
欲に溢れ傲慢で怠惰。人間とは、かくも醜いものなのか。
同じ知的生命体である種族を見下し、搾取し、蹂躙する。
特に悲惨なのは獣人に対する扱いだ。人間は獣人を人だとさえ思っておらず、ペットや家畜のように扱う。奴隷は勿論、性奴隷、毛皮、食肉と様々な分野で彼らは利用させる。扱いは凄惨を極めている。
拷問に近い形で殺し、加工する事もあれば、生きたまま毛皮を剥がれる事もある。強制的に肥え太らせ、内臓の一部を高級品として売りに出しているものもあった。一部の獣人の胆には薬効があると生きたまま胆汁を搾り取られたり、あるいは生き胆が最も効果的だと言われ生きたまま内蔵を抜かれる事も稀ではない。
食肉として飼育されている獣人は狭い空間に押し込められ、ペットとして人気の出た獣人は強制的に妊娠を繰り返させられ、体が障害を負っても母体として機能する限りは死ぬまで利用される。健康な状態で母体としての役割を終えてもその後の扱いは酷いものだ。極端に食事を減らされる事もあれば、直ぐに殺される事も少なくはない。
オスは直ぐに殺される事も多い。大概は去勢後に奴隷か食用だ。奴隷は飽和状態で殆どが食用に回されるようになっている。メスは活用法が多いので存外丁重に扱われる。
値段としては生理のある若いメスが一番高い。見目と稀少性により値段は変動する。オスでも稀少であれば高値が付く。オスはある程度体が出来ている青年位が一番高い。子供は安いが育成のコストがかかるので、大人になる前に捨てられる獣人が多い。捨てる理由は可愛くなくなったから、が最多である。勿論見目が重視される。大人になっても可愛い種や、美人、美形に育ったモノはそのまま飼い続けれらる事もある。又は転売されるか。ブサカワというのも一定の人気があり、愛嬌のある不細工はソコソコの人気がある。ただし造形は限られている。しかも扱いは乱雑で嘲笑の対象としてのペットなので屈辱に塗れている。捨てられた方がマシなレベルの場合もある。因みにオスのブサカワは人気がない。ブサカワを可愛いというのは女性だけで、しかも異性のブサカワよりも同性のブサカワを望むからである。ブサカワを買うのは女性のみ。男性は良くも悪くも正直である。平凡な顔が一番人気がない。
見目が良ければ食用から愛玩用になる事も稀にある。
生まれた時の扱いはほぼ同じ。ただし美形同士で交配させられ生まれた赤子は別枠。
まずはオスとメスに分けられる。
その後顔の造形で美形又はブサカワに育ちそうな個体の選別が行われる。
オスの選別は殊更に厳しい。
ある程度の3歳まではほぼ同じ環境で育てられる。
愛玩用の奴隷は更に分類され、教育を受ける者とそうでない者に分類される。
大体美形が教育を受ける側、ブサカワは無教育で愛嬌と従順性を伸ばされる。
一応大枚をはたけば自分好みのペットを早々に見つけ、どう躾けを施すかの方針を決める事が出来る。ただし選択肢は多いのでする人は滅多にいない。
食用は普通と不細工に分けられ、不細工から加工されていく。子供の肉の方が柔らかいのだ。
食用は食材となる部位によって育成工程が分けられるようになる。
食用は教育を施されない。薬によって思考力を奪い、無気力にし、ただ生きているだけの状態にする。




