鏡面
何一つその人の事を知らない状態で、その人が善人だと判断する事は出来ない。
けれど疑っているばかりでは何も始まらない事を私は知っている。
だからこそ、私は覚悟を決めて人と関わるんだ。
「アンタが、アイリスなのか?」
追い詰められて切羽詰まっている。誰もが彼女は面倒事を抱えているのだと簡単に想像できる。そんな表情を隠す事も出来ずにここまで来てしまった少女に、アイリスは嫌な顔一つせずに微笑んで見せた。
「どうされましたか?」
「今の状況を変えたいんだ。自分じゃどうする事も出来なくて、人に相談したらアンタを勧められたんだ!」
まだ10代前半で有ろう少女は薄汚れており、マントの様に羽織っているボロ布の隙間からは打撲や裂傷の様なものが見え隠れする。
「生憎、私はただの場末の給仕でしかありません。ですがどうにもお疲れの様子ですね、お話を聞く位しかできませんが、休んでいかれませんか?」
「・・・そう、か。そうだよな・・・アンタ、どう見ても普通の人だもんな・・・」
落胆の色を隠せない少女の顔は暗く沈む。席に座る事を促せば、少女は大人しくそこに座った。
「何があったんでしょうか?」
「・・・うちは、凄く貧乏なんだ」
少女はその身の内にある不安を紛らわす様に言葉を次々とこぼしていく。




