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ネタ帳  作者: とある世界の日常を
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異世界に転移しましたが、モブッてます。

誰もが行動を起こす訳じゃないですよね

 案外、普通なんだな。

 それが異世界に来たんだと認識したときの感想だ。


 確かに剣と魔法の世界ではあるらしいが、想像していたよりも現実的で、その有り様は幻想とはほど遠い。

 別にそれが悪いという訳ではないのだが、拍子抜けするというか、ガッカリしてしまうというか、とにかく多くの人にとって期待外れであることは間違いないだろう。


「お兄さん、これとこれ、一つずつ下さいな」

「あいよ、夕飯かい?」

「ええ、あと明日の朝食に」

「朝はこれを食べるとスッキリするぜ。サービスしといてやるよ」

「いつもありがとうございます」


 逆に期待を裏切らない部分もあった。

 それは言語が通じるという事である。在り来たりなご都合主義だと思っていたが、まさか本当に日本語を使っているとは思ってもいなかった。もしかしたらここは異世界というよりは、いつかの未来の日本なのかもしれない。


 そんな状況だったからか、すんなりと馴染む事が出来た。


「この街にも南からの難民が流れてきてる。戸締まりには気を付けな」

「気を付けます」


 仕事は慣れから、東京にいた頃と似たような仕事を中心にしている。違いと言えば道具と服装くらいだ。人種は混合しているが、それは東京でも似たようなものだったと思う。

 戦争は遠い国の出来事で、ここは日本と同じくらいに平和な国だと感じている。ただ一つ違う事と言えば、ここは大陸の中にある国の一つで、島国ではないという事だ。

 奥まったこの都だからこその平和を享受しているけれど、多分日本ほどは戦争が他人事ではない。恐らくここはそんな場所なのだ。


「お兄さんも気を付けて」

「おう、ありがとな」


 それでも、元々が平和であった世界から来ている私にとっては実感し難い事柄ではあった。


「(治安が悪いって言われてもな、裏路地とかスラム行かない限り絡まれる事もないし、態々そんな所行かないから実感わかないなぁ)」


 観光地ではスリやひったくり、置き引きという窃盗は日に何度もおきているらしいが、観光地には数度行った程度で被害に遭った事もない。観光地以外でもたまにあるらしいが、聞くことはあるもののやっぱり被害に遭うことはない。

 被害に遭うのは大抵、気が緩んでいるか警戒心が足りない者ばかりだ。誘拐に遭うのは探して貰えるだけの人望のない者や旅行者そして子供が殆どで、私のような中途半端な年齢の者は余程の事がない限り狙われる事はない。


 つまり総合して、自ら面倒ごとに巻き込まれようとしない限りは、私は今の生活を続けられるという事だ。


 感覚的には異世界と地球との大きなギャップはない。見た目こそ中世ヨーロッパ風ではあるものの、家具家電については魔道具というものが代用品として普及しているし、服装もシンプルなものが多いけれど地球でも通用しそうなセンスも多い。


「ただいまっと・・」


 返事をする人はいない。というよりも一人で暮しているのだから、返事があった方が恐ろしい。

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