冷遇なにそれ、おいしいの?
生まれた時から意識があった。
よくある転生というやつだと思う。意識は当然大人として別の世界で生きた記憶があって、視力も聴力も赤ん坊とは思えないほど発達していた。日本語でもない聞いたことのない言葉を理解できるのは、所謂異世界特典というやつなのだろう。
そんな訳で、比較的直ぐに私の誕生が喜ばしいものではないことは理解できた。母はどうやら明るく美しい、公爵家の光のような存在で、私を生んで産褥で亡くなったそうだ。異世界悪女あるある。母殺しの汚名で家族に疎まれ愛されないパターン。乙女ゲーム系だったらメンヘラ構ってちゃんで益々疎まれループになるやつ。
あれ思うんだけど、そんなに疎ましいならとっとと養子に出すなり捨てるなりすれば良いのにって思うのよね。まあ私が今そんなことされたらソッコー死んじゃうからその謎設定は有り難いんだけどね。
体面がどうのって言い訳あるけど、冷遇ネグレクトも体面は宜しくないと思うから一緒だし、ぶっちゃけ生まれてすぐ死産だった事にしとけば問題なさそうだし、法治国家でもあるまいし、バレないと思うんだよね。
冷遇とはいえ、乳母も侍女もつけられ、家族が全く会いにこないという事を除けば平穏な生活が続いた。
というか家族に無視されるとかあるけど、貴族って親が子育てしないとこが殆どっていうし、基本的には会わないのが普通だと思うんだけど。ネットで拾ったりマンガとか映画、小説でちらっと見てなんとなく覚えてただけの情報だから本当かどうかは調べてないけど、間違いではないと思う。
だから全くもって気にしていないのだけど、どうやら私の乳母は私のそんな状況が心苦しいらしい。
「お嬢様は、もう10歳になられましまのに・・」
「ええそうね。あと数年も経てばデビュタントもあるわね」
本来であれば5歳。どんなに遅くとも7歳になれば本邸に迎え入れられ生活をしている年頃だ。10歳まで別邸で育てられるのは、婚外子や庶子だけだ。この経歴は良くないものとして見られる。
(結婚するつもりのない私には関係ないのだけど)
それにこの別邸は完全に私の支配下にある。少し田舎の爽やかな自然に囲まれた広々としたお屋敷。家族が会いにこないだけで、乳母に侍女、執事に使用人と手足となって使える人材がいる上に、そのお給料は父が支払っている。その上品格維持費として私個人が管理できるお金まであるのだ。その品格維持費を一部事業や投資に回して、品格維持費以外の収入も少しずつだが増えてきている。
この別邸近くの開拓を進め荘園としているのもその事業の一つだ。この権利は私のものにして良いと書面で貰っている。たった7歳の子供の、しかも身内の提案だ。父は思っていたよりも簡単に許可を出した。
「お嬢様、また公爵様に会いに行きましょう!」
家族はここには来ない。だが何回か私は本邸へと足を踏み入れている。
一度目は5歳、家庭教師を派遣して貰うために。
二度目は7歳、荘園の運営許可と権利を貰うため。そしてその労働力と慈善事業も兼ねて、孤児の教育。




