ドライアド
「え、いらない?」
いらない。
どんなに力があっても生きるって大変で面倒だし、人任せにできる権力があっても人間関係って面倒。
「なら動物は?聖獣とか、最強の竜とか、何にでもなれるよ?」
生物である以上新陳代謝は止められないとなるとお風呂も入んなきゃだし、ご飯も食べなきゃだし、それも面倒臭い。あと勝手に祀り上げられる感じがなんかやだ。
「じゃあ植物は?世界樹とか、幻の花とかなんでもなれるよ?」
意識あるのに動けないのもやだし、なんか勝手に採取されるのもなんか気持ち悪い。
「じゃあ無機物は?聖剣とか」
誰かの持ち物にされるのもやだし、なんか勝手に加工された感があってヤダ。
「ええ〜、キミ自己が確立してて、面白そうだと思ったんだけどな」
いらない。このまま消える。次があるとしても、それは私じゃない。私は消えて、まっさらになる。
「それじゃつまんないんだよね」
私は何もしない。物語を見るのは好きだけど、私はそういう登場人物にはなれない。話が進まない。
「とりあえず、君の転生先は決めたから、とりあえずそこで生きてみるといいよ」
やだ。本当にいらない。面倒臭い。
「聞こえな〜い」
やだ。いやだ。面倒。やっと終わったのに。
私の意識は、そこで途切れた。
「・・・態とらしすぎない?」
「や、あれくらいでいいよ」
意識がある。感覚はあんまりない。包まれてる?生まれる前みたいだ。音は聞こえてる気がするけど、ただの耳鳴りのような気もする。記憶はそのまま残っているから、人の形を意識してしまう。体は、あるような、ないような、よくわからない。死んではいないようだ。寒くも暑くもなく、すぐに死ぬような環境でもないらしい。苦しくもないし、まだ私はぼんやりしていたい。




