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道しるべ
「哀れだわ、中身が違うことに誰も気付かないだなんて」
孤独なルーシェ。苛烈で、刺々しい言葉を使い、気に入らなければ鞭を振るった、激しい気性の美しき公爵令嬢。彼女にとって、身分の低い者は人ではなかった。皆が幼いルーシェの機嫌を伺い、誰もルーシェに逆らわなかった。ルーシェを溺愛した祖父はただ甘やかすだけで、口煩かった両親は祖父に逆らえないが故にルーシェにとって少し遠い存在になった。
ルーシェは一度死んでいる。
私はルーシェの中でそれを見ていた。朧げな夢のようにずっと昔から、何年も、その死の瞬間まで、ルーシェを見ていたのだ。
彼女はどこまでも傲慢で、気高く、孤独であった。それは死ぬときも変わらない。彼女は自分の生き様を間違っているとは思っていなかったし、後悔もしていなかった。
私はそれでも自己を確立して生きるルーシェが、とても格好良いと思った。だからこそ決めたのだ。ルーシェが絶対にしないことは、私もしない。私は私ではあるけど、ルーシェの生き様を蔑ろにすることはない。
ルーシェになることはできないけど、彼女の気高さを損なう行いはしない。ただそれだけは心に決めて、私はルーシェとして生きていく。
「」




