悪役令嬢はどこまでも悪役でありたい
中心人物として全てを滅茶苦茶にしたい気持ちもあれば、他人事としてただ傍観してしまいたい気持ちもあった。今の私の立場は、そのどちらを選んでも、最後に待っているのは破滅の道だろう。
「退屈ね」
独り言を拾う人はいない。私は孤高の公爵で、華麗な悪役令嬢で、全能のラスボスなのだ。
この世界には神も天使も悪魔も神獣も魔物も亜人も存在するデタラメな世界だ。そんなデタラメな世界で、私は世界を滅ぼす力を持つ最強の乙女なのだ。
ただその事実を知る者はこの国にいない。私とて、部外者だからこそ、ただ知っていただけだった。
彼女の真実の一部を切り取った、人生に比べれば、ほんの短いゲームの悪役令嬢でありラスボスのオリビエ・ラ・グレイゼン・ラクレウド。それがこの体の物語。私はただそのゲームをプレイしたことのあるだけの、ちょっと捻くれた一般人だった。ただ他の人と違うのは、気が付いた時にはオリビエとして生きていた。ただそれだけだった。
オリビエは孤独だ。母親は産褥で亡くなり、それ以降塔で隔離されて過ごしている。幼い頃にはいた乳母やメイドはオリビエのある能力が開花するとともにここに来なくなった。通常であれば多少は成長したとはいえ、幼い子供一人が生活できるような環境ではなかった。しかしオリビエは普通の子供ではなかった。その開花した能力は影人。意思はなく言葉も話さないが、オリビエの望むままに動く人の形をした影だ。きっかけは些細な事だった。生まれたこと自体を歓迎されていないらしいオリビエは誰からも敬遠されていた。塔に通うメイドは少なく、仕事の負担は大きい。オリビエは優しい心を持っていた。メイドが大変そうだから手伝いたいという思いから開花した能力だった。
しかしオリビエのその能力は恐怖の対象でしかなく、人々はますますオリビエから離れていった。そしてついにオリビエは塔に一人きりになった。一人が寂しかったオリビエは影が遊び相手だった。それはとても悲しいものではあったが、多くの影の特性を知る良い機会でもあった。オリビエは影を小さな動物の姿に変えて塔から出した。影は意思もなく言葉も話さない。しかし音を伝え映像を映すことができた。オリビエは塔にいながら、様々な情報を手に入れた。
それらの情報はいずれオリビエを自由にする宝石のようなものだった。
この国の末の姫として可愛がられていた母は、大層美しい姫であった。求婚は後を絶たず、父である国王は国の繁栄と姫の幸せ、そのどちらも求めた。そうして数年をかけて漸く纏まった縁談に国を挙げての祝祭の最中、母は名もなき神の手籠めにされた。




