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それでも嫌いになれない
人間とは、賢くも優しくて、そして弱く強かで儚い生き物である。
硬い鱗も、分厚い毛皮も、鋭い爪と牙も、大きな体も、早い足も、優れた五感も持っていない。何も持たない筈の人間は、その強かさで知識を蓄積し今に至る繁栄を手に入れた。
同族と手を取り分け合いながら助け合い、時には見捨て、騙し合い競い戦い奪い合う。今日まで繁栄し続けている人間という種族。
それが醜くも美しい人の生き様。
私もそんな、人間の一人として生を受けた。
(私はこの世界ではほんの少し異質だわ。違う理の生を一度受けているから)
異質ではある。でもこの世界に影響を与えるほどの知識を私は持っていなかった。だから考え方、感じ方は違えど違和感さえ持たれる事なく、私はただの普通の町娘だった。
聖剣などと呼ばれるモノを抜いてしまうまでは。
「えっ、やばっ、壊しちゃった?!」
それは聖剣の試しと呼ばれていたものの、建国以来誰もが挑戦し、唯の一人として抜いた事のないオブジェクトだった。それは街の中心にあり、誰もが知る有名な口伝であったから、観光客は必ず一度は試すモノだった。




