冷たい聖女は今日も言の葉の刃を磨いている
「数日、仕事ぶりを見ていましたが、あなたは兵士に向いていませんね」
「あ、え・・と、その」
「物事ははっきりと正確に伝えて下さい」
「わ、わたし、は・・」
「この程度で怖気付いて、前線で動けるとは思えません」
「聖、じょ、・・さまっ!」
「貴方には後方へ下がって貰います」
「お、お願い、です!」
「戦線も無理。見張りも任せるのは不安。伝令も無理。この戦場に今の貴方を配置できる先はありません」
冷めた目で見下ろせば、憐れな兵士は怯えた目をこちらに向けてくる。確信する。やはりこの男には無理だと。
「下がりなさい」
この世界に来たばかりの頃は、勝手が分からなくて言われるがままに従っていた。その結果起きたのは不適切な人事による死傷者。
「相変わらずですね」
「それはこちらの台詞です。相変わらず、未熟な兵士が紛れ込んでいるではありませんか」
「前線は常に人手不足なのです。多少の未熟さには目を瞑って頂かなくては」
「私の戦場に未熟な者は不要です。私に教育は出来ません。ならばせめて最低限は出来る兵士を送り込んで下さらなくては困ります」
「一応最低限の訓練は終えているのですがね」
「それでも紛れ込むというのなら、その訓練法が間違っているのです。無能な味方は有能な敵よりタチが悪いのです。勝利が欲しいなら見直しをして下さい」
「仰せのままに、聖女様」
わざとらしい程に恭しく頭を下げて男はその場を後にする。
(嫌な男だ。でも役に立つ)
もう何度も、身近すぎる距離で、沢山の人間が死んだ。名前どころか、顔さえも覚えていない様な子供が、何度も、何度も、私のいる戦場で死んだ。
(戦争なんて、くだらない)
無能な一人のせいで、多くの味方が窮地に陥る。そんな事が一度だけあった。失ったのは有能な味方。
「・・・」




