大切な物は失くした時に気付く
一度、約束を破った人は二度と信じない事にしている。というよりも信じようと思って行動しても、どうせ約束は守らないんだろうな、と心の奥底で思ってしまっているのだ。だから実際に約束が破られても、やっぱりね。と思うだけだ。だからと言って、約束が守られたとしても驚きはない。そうなんだ。その程度の感想しか抱かない。
「まあ、王子殿下がいらっしゃるの?」
「はい、先触れが参りました」
「そう、ならば時間になったら教えて頂戴」
「畏まりました」
第一王子殿下とは幼少の頃からの幼馴染みである。それと同時に王子のお相手として目されている令嬢のうちの一人だ。父からはそれとなく探りを入れられた。
「嫌だわお父様、恐れ多くも幼少より多くの時間を共に過した王子殿下を私は弟のように思っていますのよ」
私を可愛がる父は私の望まない事はしない。そのお陰で私には未だに婚約者がいない。
別に王子殿下が嫌いな訳では無い。ただ私的で破られても良い約束しかしたくないのだ。婚約という契約はそれぞれの家と思惑が絡まってくる。簡単に破棄できない契約を、信用していない人とする気は無い。
「ね、」
王子殿下が初めて約束を破ったのは十二歳の時だった。それまでもちょっとした嘘をつかれたりはあったが、私がはっきりと王子殿下との約束を信じなくなったきっかけは間違いなく十二歳のそれが原因だ。
その時既に互いの両親は婚約させるつもりで二人を見ていた。二人で観劇に行かせたり、ピクニックに行かせたりと提案し促した。王子殿下は興味のない観劇に嫌気がさしていたのだろう。お迎えの遅刻は当たり前になり、いつからか忙しく迎えが難しいからそっちが来てくれと頼まれ、そしてある日王子殿下を迎えにあがると、王子殿下は別の用事を入れてその場にいなかった。所謂ドタキャンだ。
その日から私は迎えに行くことをやめた。それから暫くは観劇等のお出掛け自体もなくなったのだが、恐らく周りが促したのだろう。また誘いが来るようになった。
既に遅刻ばかりで、ついにはドタキャンまでする様になった王子殿下のお誘いの優先度はかなり低い。




