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ネタ帳  作者: とある世界の日常を
145/178

権利と義務

があると同時に、死を選ぶ権利があります」


自殺者が増加する中、誰も着手しない『死を選ぶ権利』を主張して、選挙に立候補した。私が公約したのはただ、その一つだけ。にも関わらず私は当選し、そしてその権利を認めさせる事が出来た。


「しかし同時に、家族や友人そして恋人には、それを止める権利があります」


この世界にはそれほどまでに、死にたい人が多いのだろう。


「しかしそれは本人の権利を侵害して強行して良いものではありません。また家族でも友人でも恋人でもない赤の他人には、それを止める権利すらありません」


安楽死法案

・第三者立ち会いの元、本人の希望が確認できた場合のみ履行可能である。また執行場所は行政指定の施設、または執行許可証を持つ立会人がある場合のみ在宅での執行も可能である。

・この権利を侵害することは、人権侵害である。ただし行政指定の施設以外での本人の独断による執行はこれに該当しない。

・家族、友人、恋人はこの権利を侵害する権利を持つ。その権利は執行までの一週間与えられる。衣食住へ影響を及ぼしてはならない。またこの権利で与えられるものは言葉の説得のみであり、執行人の管理下で行われる。

・安楽死の権利を行使する者は、遺書を残す義務を課す。

・この権利を行使する者は、意思確認より執行までの一週間、希望があれば執行施設での保護を受ける事が可能である。

・安楽死法案に申し込みした場合、家族はそれを知る権利がある。その権利保護のため、通知を行う。


私を支持する層は死んでいく。だから政治生命は長くはないと思っていた。しかし執行人は直ぐに増やせるものではない。執行許可証を持つだけで心無い人や人権がどうのと支離滅裂な言葉を声高々に叫ぶ団体に人殺しの許可証だのと営業妨害をされたりとマイナス面が目立つからだ。


「彼らは安楽死法案の希望者の権利を守り叶える誇り高い方々です。ご存じですか。安楽死法案が成立して、日々の自殺者の数は激減しました。権利を行使し安楽死を選択した方々を含めても、減少しているのです」


そもそも本当に死を選択する人は、限界までその全てを身の内に溜め込む。気軽に死んでやるとか何だとか言って自傷行為を繰り返す人は、案外強靭な精神を持っていて、結局死を選ばない。

自殺を選ぶ人を例えるならば、決壊寸前の放流システムが壊れたダムだろう。限界まで溜めて、決壊。そしてその決壊は自殺という事だ。限界まで下流の川は平穏である為、多くの者はまさかそんなという思いが残る。

安楽死法案はその決壊寸前のダムに新しい放流口を作るようなものだ。彼らは安楽死法案に申し込むことにより、一旦は溢れる思いを鎮めることが出来る。


法案が成立し、体制が整い、希望者の受け入れを始めた日。サーバーは直ぐに落ちた。

興味本位でホームページを見た者も多かったのだろう。しかし予想を超える人数が、そのホームページにアクセスし、申し込んだ。


一日の自殺者が減ったのにはこれにも訳がある。

まず第一に安楽死執行許可証を持つ医師の不足。それにより申し込みから立ち会いありの意思確認までに期間を要する。

第二に家族や友人や恋人による説得。安楽死法案への申し込みによる通知。この法案がなければ何も知らずに死後面会するしか出来なかったであろう事案が減少した。それにより本来打ち明けることのなかった事実を打ち明け、それに対する説得や解決策の提案は本人に生きる気力を与えた。勿論それがあっても安楽死を選ぶ者はいる。しかし留まる者もいるのだ。結果、数は減った。

第三に遺書だ。死という安寧を前に言葉を綴る事は、本人に思いもよらぬ結果を与えたらしく、そこで思い留まる者も多かった。


自殺者へ与えられた安楽死という光は、思っていたより良い結果が得られた。


病気

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