忠誠の騎士
目が覚めて、最初に私を迎えたのはどこか頼りない男の子だった。
「お嬢様!目を覚まされたのですね!良かった、良かった!!」
「・・・ぁ」
上手く声が出ない。体も重い。
私は、何をしていたんだっけ。
「医者を、医者を呼んで来ます」
待って、貴方はだれ?
引き留める言葉さえ出ないまま、握られていた手がスルリと離れる。
頭が痛い。口の中が酷く乾燥している。
ここは何処だろう。水を飲みたい。
体を起こすだけで軽い息切れがする。なんでたろう。体が凄く重い。ふと違和感を感じて左腕を見ると、ガリガリの腕に点滴が付けられている。
「お嬢様!ご無理をなさってはいけません!先生、お願いします」
「まさか、本当に・・」
老齢の医者は戸惑いながらも診察し、筋力が低下している以外に特に異常はなしと診断した。
「徐々にリハビリをしていきましょう。何せお嬢様は5年もの間、目を覚まさなかったのですから」
二人の話す内容に現実味はなく、私は夢を見ているのだと思った。
「お嬢様、お疲れになりましたか」
「仕方あるまい、5年ぶりの目覚めなのだ」
◆
「お嬢様、ご気分はいかがですか?」
「・・良い」
あれから数日が経った。声は多少出るようになったものの、出し難いし、何だか喉も痛い。ほぼ半月声帯を使わなかった時よりも酷い。はっきりと衰えている事が実感できる。
流石にそれだけ経てばここが夢ではなく現実なのだと理解もしたが、よく分からない状況である事に変わりはなかった。
「それならば今日はベッドから出てみましょう」
「・・ええ」
「今日は曇りで光も弱いですから、窓を開けましょう」
「・・ええ」
衰えていたのは声帯や筋力だけではない。視力というべきか、日の光が目に痛く、眩しくて目を開けていられなくなっている。味もよく分からない。濃い味でなくては、感じられないのだ。耳も遠くなった気がする。少し頭がぼんやりしているからか、言葉が上手く聞き取れない。だから反応が遅れる。痛みにも鈍くなった。
五感全てが衰えているのだろう。多分骨も脆くなっているはずだ。実感できない部分もきっと衰えている。回復には少し時間が掛かるだろう。




