悪の花道
何度繰り返しても根性は変わらない。
寧ろ展開を知っている分、悪知恵を働かせ上手く立ち回るようにまでなってしまった。
しかし処刑の未来は変わらない。
これは何度処刑されても根本的な行動は変えようとしない、根っからの悪の令嬢の物語。
全て、何もかもが気に入らない。
私に優しくしない地位と顔の良い婚約者も、その婚約者に群がる蠅共も、小言を言ってくる両親も、何もかもが気に入らなかった。
「リーシェン、勉強部屋にも行かないで何をしているのですか!」
「まあお母様、そんなに大きな声を出さないで下さいませ」
王子の婚約者になってからというもの、母は勉強をサボると殊更煩く小言を言ってくる。
リーシェンは両親よりも甘やかしてくれる祖父母の方が好きだった。
「それにこれからお祖母様にお茶に誘われてますの、わたくしにとってはそちらの方が大事ですわ」
「リーシェン、貴女は王子の婚約者になったのですよ。貴方には立場と共に責任が課せられるのです。良く学ばなくてはなりません」
「分かっていますわ、ですが本日はお祖母様とのお約束を優先したいんですの」
「リーシェン!」
母の甲高い声は頭に響く。
小さな溜息をひとつ吐いて、母の耳元に口を寄せる。
「ねぇお母様、私存じ上げておりますのよ。ご友人との観劇と称してどなたとお会いしているのか」
「・・何を言ってるの。可笑しな妄言など聞きたくありません」
一瞬の間は命取り。直ぐに持ち直したようだけど、駄目よ。普通の子ならそれで良かったでしょうね。そもそも普通であれば知り得ない情報だけれども。
「ねぇお母様、黒い毛並みがそれ程お気に召した?それともサファイアブルーの柔らかな瞳かしら」
母よりも一回りは年下の男爵家の四男、それが母の燕だ。
本来であれば若い燕の一人や二人、囲った所で問題などない。しかしそれらは派閥や生まれでまた変わってくる。
「それとも背徳感がお気に召していらっしゃるの?」
得体の知れないものを見たかのような、恐れと驚きの混じるその目は、子供、まして娘に向けるものではない。




