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ネタ帳  作者: とある世界の日常を
131/178

記憶喪失の人魚姫

 苦しい。


「ガボッ」


 なに。


「っ!」


 水だ。

 体全体が浸かる程の水。

 しょっぱい。これは、海だ。


 息が吸えない。死ぬ。


 精々、水を吸ってしまわないように、息を止める事しか出来なかった。今いる深さも、上がどちらなのかも、何も分からない。


 死ぬ。ああ、溺死なんて。


 嫌だ。そう思った時、クンと体が何かに引っ張られる。何だろう。それは凄い速さで、私の体をグイグイと引っ張る。

 瞬間、頬を冷たい風が撫でた。


 ああ、酸素だ。


「ガヒュッ、ヒューー」


 肺いっぱいに空気を送り込む。

 ああ、助かったのか。


「はぁ!はぁ!はぁ!」

「・・・熱いわ、これが人間なのね」


 表現しようのない、美しい声。私の体はその声の持ち主に持ち上げられて、水面から半分ほど出ている。


「陸までは送ってあげる。その後は、好きにしなさい・・」


 誰?そう聞こうとして声が出ない事に気が付く。


「声は出ないそうよ。人になった代償ね」


 人になる。何を言っているのか、私は初めからただの人間だ。


「この声は、人魚だけのもの」


 いつの間にか浅瀬におり、砂が足に触れた。


「っ!!!」


 痛い。小さな砂粒ひとつひとつが、まるで足を刺しているようだ。

 叫び声さえもあげられないことに対してか、人魚だと名乗る不思議な女性は私に憐れみの眼差しを向ける。


「痛みは時期になくなるそうよ」


人魚は波打ち際まで体を運ぶと、苦しそうな、泣きそうな顔で名残惜しげに海にかえっていく。

痛みで朦朧とする意識に、何も考える事も出来ずにその場に蹲った。

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