お嬢様は獣に弱い
「ジャンはどうしてあまり人の姿をとらないの?」
「こっちの方が落ち着くからです」
「そうなのね」
嘘だ。
獣人でありながら、人の前で獣の姿であり続ける人はほぼいない。獣の姿は今の時代、恥とされているからだ。
「人の姿も便利だと思うのだけれど」
「必要な時だけで良いのです」
「そう」
今はお嬢様の散歩に付き添っている。名目は護衛であるが、このご時世そうそう危険はない。その為獣姿でも十分事足りるのだ。
湖畔に着くとお嬢様はピクニックシートを広げてそこに座る。
「ジャン、おいで」
お嬢様はこちらを見て膝を指し示す。
いつもの事だ。お嬢様は動物がお好きで、特にフワフワモフモフした姿を持つものを好まれる。それを知っているからこそ、俺はこの姿を取り続ける。
「柔らかいわ」
「お嬢様が手入れをして下さいますからね」
「ふふっ」
俺はお嬢様が好きだ。
だからこそ、獣の姿の時と人の姿の時の態度の違いに直ぐに気が付いた。獣の姿の時はほんの僅かに距離が近かった。もっと近くにいたくて、いつの間にか獣の姿を取ることが多くなった。そしたらどんどん距離は近くなって、お嬢様はたまに俺を撫でるようになった。
それが今ではこう。お嬢様は多分その変化に気付いていない。




