嵐
本当は、特に興味が無かったのだ。
自分の人生にも、誰かの人生にも。
全て、どうでも良かった。
ただ、苦しいのやら、辛いのやら、痛いのやら、大変なのは嫌いだった。
ただ、それだけだ。
「私が、聖女?」
目が覚めればまるで夢でも見ているのかと思ったのだが、どうやら夢ではないらしい。
「はい、貴方様は尊きお方」
「聖女とは、どんな役割なんでしょうか」
「聖女様はこの世界に救いと恵みをもたらす、神より遣わされし奇跡にございます」
「具体的には?」
「聖女様はそこに有るだけで良いのでございます」
いまいち良く分からない新興宗教に拉致されてしまったのだろうか。
皆、コスプレの様な格好をしている。
「私、帰りたいのですが」
「残念ながら、還ることは出来ないのです。歴代の聖女様も、この地にて生涯を過ごされました」
つまり一生監禁なのだろうか。
「私はどんな事をさせられるのですか?」
「何一つ不自由無きよう、取り計らわせて頂く所存です」
「私は何も知りません」
「お望みでしたら、指南をさせて頂きます」
「お願いします」
宣言通りなのか、粗雑に扱われる事はなかった。誰も彼もが丁寧に、親切に接してくる。指南役は質問した事に対して誠実に答えてくれているように思う。
それによって分かった事は、ここが新興宗教の本拠地などではなく、異世界だという事だ。知識だけだと信じられなかったのだが、否定すれば逆上される可能性もありただ教えられる知識を受け入れていた。
だが数日経ったある日、空を沢山の竜が飛んでいたのだ。それには人が乗っていたらしく、驚いて眺めていれば、指南役は竜が降り立つ所が見える場所へと案内してくれた。
「初めて見ました」
「竜は人が魔力を与え卵から孵すと、人を親だと、仲間だと思うのです」
「だから背に乗る事が出来るのですね」
「はい、他にも騎乗できる種族はいますが、竜が一番適していると言われています」
「凄い、格好良い・・」
それが異世界である事を信じた日であった。
「新しい指南役を紹介致します」
「地上に救いと恵みをもたらす御身に感謝を。お目にかかれて光栄です。マリンナートと申します」




