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ネタ帳  作者: とある世界の日常を
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逃げてもいいじゃない

 現実から、嫌な事から逃げるという行為の何がいけないというのだろうか。


 辛い仕事から逃げずに我慢して頑張り続けた何処かの誰かは、自らの体が上げる悲鳴から耳を塞いで遂には過労で死んでしまった。


 朝は早くに起きて、すし詰め状態の満員電車で人の肉に揉まれ漸く会社に辿り着いたら、既定の始業時間よりも随分と早く仕事を始める。昼食さえ摂る暇もなく仕事に打ち込み、漸く人心地着いた時に腹に入れるのはインスタント食品か栄養補助食品だ。水分補給は主にエナジードリンクで賄い、疲れた体を奮い立たせる。それでも仕事は終わらない。仕事が終わる頃には終電間際だ。それでもこれはマシな方だ。今日は会社に泊まらなかったのだから。

 朝よりもは幾分かマシな密度の電車に揺られ家路につけば、片付ける暇も余裕もなく散らかった部屋に溜息が出る。買いだめしていたカップ麺が切れている事に気が付いて、また溜息を吐いた。

 近くのコンビニで弁当を二つと缶ビールを一つ購入する。

 弁当をかき込みビールを飲んで、軽くシャワーを浴びれば泥水の様に眠るだけだ。何か趣味を見つける余裕はない。そんな事をしている暇があるのなら、少しでも多く眠りたい。恋愛も同じだ。発展どころか出会いを探す暇さえない。

 何のために、働いているのか。


 彼らはこう考えている。私がやらなくては、仕事が回らなくなる。

 彼らは真面目すぎるのだ。とてつもなく優しすぎるのだ。


 私が彼らと同じ立場に立った時、私は彼らと同じ考えには至らないだろう。

 私がいなくとも、仕事は回るのだ。多少は滞るだろう。しかし、私の代わりはいくらでもいる。それこそその辛い仕事でも仕事が欲しいという人は何処かしらにいるのだ。つまり私が仕事を辞めたとしても、直ぐにとは言わずとも、何処かしらで人員は補充されるのだ。

 そんなに都合良く行くかと思うかもしれない。そうだろう。もしかたら人員は補充されないかもしれない。皆辛い仕事を避けてもっと割の良い仕事を探しているかもしれない。ほら、辞められないじゃないか。彼らはそういうかもしれない。しかし考えて欲しい。それは私に関係のある事だろうか。私がいなくなった後の人員補充は、私の関与するべきものではない。全くの無関係だ。

 彼らはこう言うかもしれない。無関係じゃない。辞めれば穴が開き、上司、先輩、同期、後輩、部下、それぞれに迷惑が掛かる。どうやら彼らは随分と周りの社員に恵まれているらしい。彼らと同じ会社に勤める社員は彼らに仕事を押し付けている訳ではなく、皆等しく多忙な被害者らしい。それならもしかすると経営者もただのブラック企業ではないのかもしれない。出た利益は社員に還元し、社長や役員も自ら積極的に時間外労働をしている、成長中の企業なのかもしれない。それで有ればきっと頑張る意味はあるだろう。会社が苦しい時に助けてくれた、頑張ってくれた社員をそんな会社が見捨てる訳がない。きっと彼らがつらい時にその会社は助けてくれるはずだ。

 しかし良く考えて欲しい。

 本当にその会社は善良か。社員から奉仕される事が当たり前になっている会社ではないか。善良であればそのまま皆で共に頑張る事も勧めよう。しかしそうでないなら、彼らは社員と共に辞めてしまった方が幸福になれる。一人で辞める事がつらいのならば、一緒に辞めれば良い。

 社員を大切にしない会社などに尽くす意味等無いのだ。人生の無駄だ。


 そんな会社からは、何時でも逃げてしまえば良いのだ。

 しかし手順を間違ってはいけない。少なくとも自らに被害を受けるやり方は賢くない。

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