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初クエスト2

ここまで読んでいただきありがとうございました。区切りは良いとはいえないのですが、文章や構成の実験ではじめたためこの話で終わらせていただきます。

別作品のゼロ・ヘリテージもよろしくお願いします。

「で、いっぱいって何匹だったの」

「手前に斥候が5匹。奥は伐採してるのとか訓練してるのとかいっぱい」


 それを聞いて焦ってクルミの腕を引っ張って止める。


「ごめんちょい待った。斥候5匹って奥にどんだけいるのよ」


 平地だったら魔法障壁を展開して、得意のエネルギーボルトで仕留める。シャルの決まった動きで普通のゴブリンでも30匹、進化したゴブリンウォーリアやゴブリンマジシャンでも10匹くらいは楽勝だ。

 手前に斥候5匹。ということは東西南北で20匹。全体で100匹くらいはいるんじゃないのかと予測する。


「数えてない、ていうか数えきれないから見てほしくて急いだ」


(狼100匹の感覚はあるはず。そのクルミがいっぱい???これ住処の大規模移動とかだったら―)


「わかった数だけかぞえに行こう。それだけ多くて取り逃がしたら町にも残党いって迷惑かかるから冒険者集めて討伐になるだろうしね」


 という建前をクルミに提示して戦略的撤退を慣行したい。


 ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!


 樹上の枝で奇声を発しているゴブリン。それに呼応して周囲からもギャギャギャと威嚇する声があがる。


(黙れ、光の矢(マジックアロー)


 慣れて親しみのある魔法は詠唱の必要すらないのがこの世界の理。

 フッとシャルの肩元に白く発光する球体が浮かぶと同時にそれは射出されゴブリンの腹部を打突する。骨が押し砕かれる鈍い響きと共に「くの字」になって吹き飛んで森に消えた。

 シャルは視線をゴブリンに移す前に空中に光球を7つ用意すると共に魔法障壁(マジックシールド)を展開するために詠唱した。


魔法障壁(マジックシールド)展開!」


 慣れているが親しみが完全ではない魔法。それは言葉にすることで発動する。とっさに使える魔法が数個は持っているのは魔法使いの嗜みである。

 通常であれば使い手の精神性や意志によって形状や性質が変化する。しかしシャルの魔法障壁は光魔法の達人クラスも相まって、その屈折により視認できない。


「クル・・・」

「ん?」


 ジャラッと手のうちで小石をもてあそんでいるクルミ。

 振り返るとそこには頭部に穴が空いているゴブリン4匹が倒れていくところだった。


「あんた斥候に尾行されてたんでしょー」


 声のトーンを下げた怒りのクレーム。


「ご、ごめん。あと狼より弱くてよかった。シャルの魔法も格好よかったー」

「クルミも魔法使えたはずでしょーが、てか声の音量さげてーおねがいー」

「私の魔法ほとんど見えないからいいなって思ったの」

「とりあえず進もう」

「うん、ここから見えてるけど行くのシャル?」


(レンジャーいないと自分で偵察しなきゃいけないのはわかってたけどヤダナー)


「え、今なんて言った?」

「ほら、あっち」


 クルミが森の奥を指さすが視力の差のせいか『緑』しか見えない。


「いっぱいいるでしょゴブリン」


 緑の意味を理解してしまった。コクコクと頷いたシャルは絶句し血の気が引いていくのが体感できた。

 付与術で足を速くして逃げるとしても魔力が尽きたら終わり。力場支配でゴブリンの動きを弱らせている間にクルミに頑張ってもらう?こんな広範囲は制御できない。光魔法で姿を消してみる?ゴブリンシャーマンがいて魔法消去(カウンターマジック)されたら当分は使えなくなる。


 心臓の鼓動が速まり体を動かす準備を意志に関係なくはじめる。本能は優秀だ。


「シャル、どうしたの。顔色悪いよ、真っ青」

「―・・・・・」


 クルミの袖を掴み、息を殺して静かに後退をはじめる。こちらを見るクルミに首を振り意志を伝える。


「でも、もう囲まれてるよシャル」

「嘘!?」


 遠巻きにゴブリンが二人を囲んでいるのがわかった。それも明らかにゴブリンシーフであり、それは森の奥に上位種ゴブリンがいる可能性が高い事を示していた。


 撤退が難しい状況になり、未知のクルミの可能性に賭けたい気持ちだったが、如何せん戦士型のクルミが数百のゴブリンを相手にその体力が持つとは考えにくかった。


「シャル、やるしかないよねこれ?」

「・・・・わかった、付与術(エンチャント)してあげるから暴れてきて」

「シャルは逃げ切れる?」

「魔法で姿隠してなんとかする」

「わかった!じゃあお願いします」


 高速詠唱と無詠唱を使い、2つずつ魔法の加護を付与していく。


 腕力増強、脚力増強、体幹増強、視力上昇、聴力上昇、回避率上昇、武器重量軽減、武器射程増加、武器鋭さ増加、防具耐性増加、肉体防御力増加、知覚速度上昇・・・


 重ねがけという高等テクニックができないシャルは良し悪しにかかわらず思い出せる魔法を全てクルミにかけた。短時間に魔力を消耗しすぎて息があがり、額からは脂汗がにじむ。


「負けたらパーティー解散だぞ!いってらっしゃい」

「ありがとうシャル、いってきます!」


 ばん!背中を叩かれたクルミはそのまま走り出すと、シャルも光魔法で光を屈折させてその場にいないように偽装する。魔法解除をもつゴブリンシャーマンが怖いので注意は怠らない。


「■■■■■■■■」


(は?古代魔法を詠唱??)


 冒険者カードに『雷魔法Lv7』『木魔法Lv7』とはあったものの無詠唱や高速詠唱がないクルミ。魔力と素養は強力だが、オツムは弱いことが判明する。


 囲んでいた数十匹いたゴブリンシーフがギャギャギャっと言いながら草木に絡まれていた。


(これなら楽勝)


 位置がばれないように、自分から離して大量のマジックアローを生み出すとゴブリンシーフを打ち抜く。


 クルミはそのまま緑の塊に突き進んでいた。その姿は速すぎて即座に小さくなる。


(そのあと全部斬る・・・の?)


「■■■■ ■■■■■■■■ ■■ ■■■■■■■」


 チッ・・・ジィージィー


 大気が視認できるほど帯電している。木の葉がぱぱっと小さな雷電で散っている。


「あーこれは嫌な予感しかしない。多重(マキシマム)魔法障壁(マジックシールド)展開」


 完全にほふく前進の格好になり両手で頭を守りの状態にす――その瞬間、紫の光で世界が覆われると遅れて衝撃が木々をしならせる。

 シャルの魔法障壁が薄いガラスのようにパパパパパパッリィンと弾けた。衝撃の嵐が過ぎ去るとその障壁はたった1枚しか残されていなかった。


「魔力使いすぎて、起きてらんな・・い。おやすみクルミ」


 後日、この魔法のせいで不本意な二つ名がシャルにつくだろうということはまだ知らない。

少なからず評価していただいた方ありがとうございました。

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