序章
序
この世界では、人は誰でも1つの魔法を持つ。
動物は「バリア」の魔法を持つ。
人間のみ幼少期には皆「バリア」の魔法を持つが、大人に近づくにつれ「バリア」は薄れ、
血筋や生い立ち、環境、思想、思考様々な要因により違う魔法を持つようになる。
しかも「バリア」の魔法以外は原則、無機物に対してしか発動しない。
特定の物に触れて、初めて魔法が発動できるのである。
なので、呪文を詠唱して何もない空間から火の鳥が出てきたり、
杖の先からレーザーが出たり、空から無数の隕石が落ちることもない。
何もないところから、何かを生み出すのは不可能である。
存在するものに魔法の力を足す、それがこの世界の魔法である。「バリア」の魔法以外は。
ある者は、魔法で作物を育て、
ある者は、魔法でモノを加工し、
ある者は、モノに魔法を込めて商売をし、
ある者は、モノに魔法を込めて職業適性を高める。
個人差はあるが平均して20歳前後で個人の魔法は確定する。
大人の魔法、これを「特技魔法」または「職業魔法」という。
しかも大人の5割から6割が、魔法石を動かす魔法になるという。
魔法石。少し山へ分け入って、地面をほればザクザク出てくるあの脆くて黒い石である。
これを硬くなるよう加工して、道具にはめ込む形にするのも、
そういう職人の「職業魔法」である。
これはそんな世界に住む、二人の少女の話。