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第六幕「幽霊とは価値観が違います」

お待たせしてすみません。中々更新できていなくて申し訳ないです。

これから頑張りたいと思います。


第六幕「幽霊の価値観とは違います」



 あの後レイヤさんが物置の鍵を取ってきてくれて私達は無事脱出する事が出来た。逃げる時に犯人の人達と遭遇しなかったのは幸運だと思う。


 帰り際、レイヤさんが本条くんの耳元で何か囁いていたのが気になった。








「分かっているわよね?」


 レイヤは和人の耳元で囁いた。愉快そうなその声を聞いて何故か和人の背筋がゾクリと寒気が走った。


 和人はそれを悟られないように微笑みを貼り付ける。


「もちろん、分かっていますよ。レイヤさん。二度とこのような事がないようにしますし、奴らにはそれ相応の処置を取らせてもらいます」


「それでいいわ」


 あっさりと引くレイヤに和人は引っかかりを覚えた。もう少し喚くか怒るかするかと思ったのだ。


「でもね」


 一旦言葉を切り、レイヤはにっこりと笑みを浮かべ、


「もう一度こんな事があってごらん?君にもあの青い悪夢を見せてあげるよ」


 ねぇ?と和人の頬をするりと一撫でする。



 ゾッとした。和人の顔色が若干青ざめる。



 異様に冷たい指先が、妖しい光を帯びる蒼い瞳が、目の前にいる人物が人ではないと和人に教える。レイヤの顔が整っている分、人外じみた雰囲気があった。


 和人は冷や汗を掻いた。レイヤは確実にキレていると言っていい。静かな怒りが底が見えなくて恐ろしい。和人は珍しく恐怖を抱いた。


 和人はぐっと感情を微笑みの下に隠す。


「ええ、それでいいですよ。こんな事、二度とないでしょうから」


「……そう。じゃ、アタシはこれで。レイコちゃん待たせているからね」


 ひらりと手を振り、レイヤが和人から離れ、礼子の元へと行く。




「怖いな。ヒトであってヒトでないモノは」



 和人はポツリと呟いた。



















 今日は本当にいろいろあったなぁと私は一つ欠伸をした。


 時刻は既に夜の10時を指しており、子供は寝る時間になっていた。私は布団に潜りながらも眠れずにいた。眠気のねの字もない。……困った。


「レイコちゃん」


 レイヤさんがそっと私を布団の上から撫でる。そしてゆっくりとリズムを刻みながら私の背を撫でた。それは小さな子供を寝かしつけるような母の手を思わせた。


 レイヤさんの声は、幽霊とは思えないほど温かく優しい。私はついうとうとと眠気に誘われる。


「レイコちゃん、昼間はごめんなさいね」


「……えぇ?何が?」


 レイヤさんの声が沈む。私は眠気に逆らい、ベットに腰かけているレイヤさんを仰ぎ見た。……心なしかしょんぼりしているように見える。うーん。その憂い気な伏し目とか色気半端ないデスナー。まつ毛長いです。私は思わず遠い目をした。



 ヒヤリ。



 手首に触れる冷気に一気に私の意識が覚醒する。眠気とか遠い彼方だ。


 驚いてレイヤさんの方を見ると、唇を噛み、悔しげな表情を浮かべていた。冷気の正体はレイヤさんの手で私の手首の縄の跡を指で撫でていく。


 こういう時。私はレイヤさんが生きてないんだな、って唐突に思う。レイヤさんがベットに腰かけても音はしないし、布団も彼の体重で沈まない。何より冷たい体温がそれを語る。



 レイヤさんの手は氷のように、冷たい。



「何が?」



 レイヤさんは低い、不機嫌そうな声で呟く。そして喉の奥でクツリと笑った。私は恐る恐るとレイヤさんの顔を下から仰ぎ見る。……やべっ、地雷踏んだ?


「ねぇ、レイコちゃん。貴女、あの状況がどれだけ危険な状況だったか理解できてる?」


 私は冷や汗を掻いた。ああ、レイヤさんって悪霊だったんだ。どこか冷静な私が心の中で思い出す。


 レイヤさんの蒼い瞳がどろっと濁って見えた。暗い底が見えない深淵。それが垣間見えた。


 レイヤさんの手が私の首筋を辿る。ヒヤッとした温度は、レイヤさんの冷たい視線と相まってとても恐ろしかった。美人の無表情って下手な怪談よりも怖い。絶対。


「……レイヤさん?」


 私は怖さのあまり涙目だ。なぜこうなった、と床に手と膝をつき崩れ落ち叫びたかったくらいだ。リアルorzだ。


 レイヤさんは私の目じりに溜まった涙を指ですくう。少し、苦笑するかのように蒼い瞳が細くなる。


「ごめんなさいね。レイコちゃんが悪いわけじゃないのは分かってるんだけど。どうしても、ね」


 やるせなくって。そう言うレイヤさんは私の知る、優しくて、綺麗で、オネェな幽霊だった。


「アタシがレイコちゃんを守れなかっただけなのにね。八つ当たりね、これは」


 ごめんなさいね、レイヤさんはもう一度謝った。自嘲するかのように唇の端を上げて。


「……レイヤさん」

「なぁに?」

「レイヤさんは何を怖がっているの?」

「……アタシは知っているのよ」


 私の疑問の声に答えるレイヤさんの声は、ぽつりと空気に溶けてしまいそうな声だった。小声じゃなくて、普通の声量であるはずなのに。


「人が簡単に死んでしまう事を、経験上ね」


 とても達観したように語るレイヤさんはどこか虚ろだった。



 私は今度こそゾッとした。背筋に走ったおぞましさは、言葉じゃ到底説明できないモノだった。


 衝動のままにレイヤさんに私は頭突きをした。



 ガツンっという音と共に私の瞼の裏に星が散る。とても痛いです。レイヤさんの石頭。心の中で私は文句を言い、レイヤさんに向き合う。


 レイヤさんが頭を抱えて呻いていた。……あれ?威力強すぎた?しかし私の方が被害が甚大だ。


「いったぁー。レイコちゃん、酷いじゃないの」


「それはこっちのセリフッ! レイヤさんいきなり何? ここに正座!」


 レイヤさんのいくらか茶化すような態度に私はほっとしたやっぱり私の頭突きが効いたに違いない。でも私は怒っているのでベットを指さし、レイヤさんに正座するように言った。


「あらやだ」

「……」

「わかったわよ。そんなに睨まないで頂戴」


 私の無言の訴えにレイヤさんは肩を竦め、正座する。


 シングルベットにちょこんと正座する推定身長180cmの青年。うん、カオスだ。私は頷く。しかもレイヤさんは並大抵の美貌じゃない。カオスが増すばかりだ。


「ああ。説教の前に手首、見せてくれない?」


 手を差し伸べるレイヤさんに私は素直に右手を差し出す。


「ん。ちょっとごめんなさいね」


「へ?」


 レイヤさんは私の右の手首を両手でつつむ。ヒヤッとした冷たさの後にじんわりと熱が伝わってくる。


 確かな熱に私は驚き目を見開く。真正面のレイヤさんを見ると苦笑を浮かべていた。


「ふふふ。驚いてるわね。うーん……。こんなものかしら?」

「え?」

「はい、これで治ったはずよ」


 にっこりと笑みを浮かべ、レイヤさんは私の右の手首から手を離す。


 手首からは縄の跡も、擦り傷も跡形もなく消えていた。


 私は驚きのあまり口が半開きになっていた。え?なにあれ?え?と内心パニックになる。


「はい、次は左ね」


 レイヤさんの促すまま、私は左手を差し出す。驚きでまともに言葉が出ない。


「聞きたそうね?」


 可笑しそうに笑いを含むレイヤさんの声に私は全力で頷く。ちなみに左も右手首の時と同じくレイヤさんは両手でつつむ。


「あはは。レイコちゃんは素直ねぇ。うーん……」


 楽しそうに笑い、レイヤさんはやや考えるように小首を傾げる。


「アタシ、これでも中々強い方なのよ」


 うん。知ってる。私は相槌を打つ代わりに頷く。


「ついでに言うと幽霊歴も長いのよね。だから芸達者なのよ。長く幽霊やってるから力の使い方は嫌でも覚えるのよね。これはその一つ」


 へぇ。


「人によっては霊力とか言うけど、まあ、それを使ってちょっとした怪我なら治せるのよ、アタシ」


 ほうほう。ってあれ?


「ん?なんで帰る時にそれやらなかったの?」


 私は疑問をそのまま口にした。だってあの時にそれがやれると分かってたら本条君の怪我も治せたはずなのに。本条君も言わなかったけど私と同じ怪我をしていたはずだ。


「え?ああ……」


 一瞬きょとんとしたレイヤさんは不意に私から視線を外した。


 そして何事もなかったかのように微笑んだ。


「ふふふ。動揺してたから忘れちゃってたのね。きっと」


「ふぅん?」


 なんか釈然としないけど私は頷いた。レイヤさんの笑顔はそれ以上踏み込ませないものだったし。



 外した視線を私に戻した時。その一瞬の蒼い瞳が冷ややかだった気がした。


 流し目ってあんな感じかなぁ?と私はぼんやりと思った。



今回はぼやっとした感じで。

こう、レイヤさんがやんでれ……?と皆様に思って頂ければ私の勝ちです(←

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