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王女は侍女  作者: 大木鈴
1/3

前編

この作品は息抜きのつもりで書きました。予定では前編後編の2部作です。

「フラン、姫様のご様子はどうだった?」


「お元気でしたよ婚儀への準備もばっちりと言った所でしょうか」


「本当に良かったわねぇ、一時はどうなるかと思ったけど姫様の婚儀が決まってしかも相手はあの大国アクルスの皇太子殿下なんて」


先輩侍女サマンサは本当に嬉しそうに言った。


「アクルスって大国ですかただの小国だったような…」


「なに言ってるの、このこは全く無知なんだから腕っ節だけで王女付きになったからって勉強をおろそかにしたら駄目よったく」


先輩侍女にそう答え怒られてているのはフランは今現在この国グランダルタ国の王女付きの侍女をしている。

この国は小さい国ながらも資源が豊富でなおかつ古くからの歴史を誇る国、アルクス国は山を二つ越えた所にある国でここ10年で急激に成長した国だ。その事は一般常識なのだがこの事はフランは知らない知らされていなかった。


そんな常識と少しずれた彼女にはある秘密があるのだがこの事は誰にも伝えていなかったりする。


(はあ、これでやっと家に帰れる、ここ12年間お父様達にお会いできなかったのが心苦かったけど姫様も兄様と結婚される事になったし私も大手を振って帰る事が出来るわ)


その秘密とはアルクス国の第2王女だったりするのだがここではこの事実を知っているのは彼女のみだった。


それは12年前の事だった。


「フラン、僕の悩みを聞いてくれるかい?」


彼女の兄である第1王子ハロルド=アルージェは人気の少ない場所にフランを呼び出した。


「なんですか?お兄さま」


普通ならば悩みを聞くだけなのにこんな場所に呼び出すなんて何かあると考えるかもしれないが当時まだ6歳になったばかりのフランはその事に気づく筈がなかった。


「僕は先週の夜会に参加したんだがそこに運命の人が現れたんだ」


ハロルドは興奮した様子でその運命の出会いをフランに熱弁した。


「にいさまいいなぁ、すてきですわ。将来はその運命の方と結婚されるのですね」


フランがうっとりとした表情で言った。


「それが出来ないんだ」


ハロルドは今にも泣き出しそうな表情で言った。


「なぜなのです?」


「彼女にはもう既に婚約者が居たんだよ」


ハロルドはその場にへたり込んでしまった。


「にいさまげんきだして」


フランは純粋に励ましていた。


「それでも僕は諦めきれないんだだからフラン手伝ってくれるかい?」


「はい、わたしにいさまのためにがんばる」


後に彼女はこの事をもの凄く後悔する事になったのだがこの当時の純粋無垢な彼女はころりと兄に騙されたのだった。



それからのことは語るも涙聞くも涙なお話という訳ではなく、単純にその一週間後に身分を平民と偽ってグランダルタ国に侍女見習いとして働く事になった。


ハロルドはフランにサーシャ姫様の様子を報告するよう頼んだ。出来れば婚約者との仲も邪魔する様にとのこと。

正体がばれるとまずいので平民からの出発コネも金も一切使わないでだ子供ながらの浅はかで無謀な作戦だった。


フランは魔力の高さが認められ王女付きの侍女候補になったのは潜入してわずか半年後のこと王女様付きは2種類に分かれている。

一つは姫様の身の回りの世話役もうひとつは護衛だ。フランはその護衛枠の候補になった。


一般的に貴族、王族は魔力が高いがフランの国では女性は戦わなくていいと風潮があるため魔力を使った事がなかった。

グランダルタでは女性でも魔力があれば戦える魔力が強ければ男女関係なく騎士や魔導士になれた。


候補になってからというもの朝から晩まで剣術と魔術づけの生活初めこそは嫌嫌だったが、王女付きになれれば兄様の助けになれると信じ、日々努力。


剣術や魔術が上達すると段々と楽しくなって来てさらに努力する様になった気がつけば1年と半年後にはわずか8歳ながら屈強な戦士でも勝てない程の腕前になっていた。


当然、王女付きの試験はパス侍女になってから2年で王女付き侍女という異例の事態が起こった。


それから10年、フランが不在の間にさらわれた姫をたったの一人で救い上げただとか、盗賊撃退、他国との剣術と魔術の交流試合で優勝したりとか伝説を作り続けた。


成果としては上々だ、毎日の様に姫様の様子や近況を書いた手紙を兄様に向かって届けているのだが、不思議な事にフランが9歳の時からぱたりと返信が来なくなっていた。


それでもめげずに毎日報告は欠かさずしていたのだが、一向に返信が来ない、フランは段々と不安になっていた私の事を忘れているのかと、でもそれは杞憂に終わった今年ついにサーシャ姫とハロルド兄様が結婚する事になったからだ。


これで帰る事が出来ると安堵した、でもまだ不安は残っていたなぜなら結婚の報告は兄様ではなく姫様に直接聞いたからだ。




_____



結婚はもう翌日に迫っている、昨日のうちにアルクスに到着し準備万端だ。


「フラン、明日いよいよね。ハロルド様は一体どういうお方なのかしら?絵姿では素敵な方だったけど」


姫様は不安そうなでも少し楽しみにしているような表情で言った。

サーシャ姫とハロルド殿下の結婚は急遽決まった、元々サーシャには許嫁が居たが今はその国ごと無くなったためその約束は無効となった。本来こんなにすぐ次の相手が見つかる訳がないのに見つかったというか向こうが求婚してきたのだ相手は大国アルクス、王様は大喜びだった。


だが、何の挨拶もなければ一度も逢わずに結婚する事になったのにも関わらずサーシャは文句一つ言わない。


一度フランが不服はないのかと聞いたが答えは…


「元々私はおじさんと結婚するはずが美丈夫で有名なハロルド殿下と結婚出来るのよ文句なんてないわ」


と本人が言っていた。元々結婚自体誰と結婚しようがどうでもいいとのこと。


「さあどうでしょう、傲慢で横暴な方ではないでしょうか」


フランはもう兄には幻滅し不信感を抱いていた当たり前だ、姫様とは良好な関係を築いていて今の現状に不満は全くないとはいえそれはそれこれはこれだ。


「また、そんな事ハロルド様のファンに聞かれたら殺されてしまうわよ」


姫様は茶目っ気たっぷりに言った。


「そんな事より姫様、私姫様に大事な話があるのですがよろしいでしょうか?」


「そんな事よりって…クスッ…プライベート?」


姫笑いながらした質問にフランはこくりと頷いた。


「じゃあ、夜に寝台で…」


フランと姫は本当に仲が良い。夜みんなが寝静まった後に二人で話したりするその時は二人とも姫と侍女ではなく、ただの友達として話す。

もっともこんなことが出来るのは寝るとき同じベットで寝ているからだが理由は防犯のためだ。



「え〜〜!!」


姫は驚きのあまり大声を出してしまった。


「姫様!!しー」


フランは唇の前に人差し指をあて静かにしろとジェスチャーする。


「だって本当なのそれ?」


「はい、残念ながらですが本当の事です。私はアルクス国第二王女本名はフローラル=アルージェです」


フランは自分の正体なぜここに来たかの経緯をすべて話した。


「じゃあ、フランは私を騙していて監視してたって事?」


「そうなります…」


フランは嫌われたく無いと言いたげな泣きそうな顔をして言った。


「そんな顔しないで私は貴方を嫌いにならないから、でもどうも納得できないのよね…だいたい私、フローラル第2王女の絵姿を拝見した事があるけれどフランではなかったわよそれに…「私の今のこの姿はお兄様の呪いですから」


フランはサーシャの話を最後まで聞かず割って入る。


「呪い?」


姫は興味津々に聞いた。確かに今のフランは昔とは全く真逆の姿をしていた、フランは女神と崇められていた母親に良く似ていて天使だとか存在だけが奇跡と言われる程の美幼女だったのだが潜入するにあたって兄が魔法を掛けた。


魔法を掛けられたフランの姿は今までとは全くの真逆その姿は人々からゴーレムだと恐れられでいていたくらいだ、そんな姿だからか幼少の頃から子供扱いは受けずにおかげで異例のスピードで出世できた訳だが…


その事を説明し終わっても姫は未だ納得のいっていない様子だ。


「証拠ならありますよ、これを見てください」


フランは右の胸が見える様に服を開けさせたそこには入れ墨もしくは痣の様に見える、姫は見覚えが会った様子で納得がいった様子だった。


「それは知っているわ、アルクスの王族の証ね」


アルクスの国民は体の一部に自分の血族の証が生まれつきあるという王族は王族の貴族は貴族の大体のデザインは同じだが細かく違ったりする分かり易く言えば家紋みたいなものだろう。


「わかった私はあなたを信じる。でもおかしいわね?」


「なにがおかしいのでしょか?」


姫はフランの質問にはっきりとした口調で答えた。


「私が聞いた話だと確かフローラル王女は死んでいるのよね」


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