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第六章 襲来 「何が?」 「――世界が」

 晴れて親友となった私とエディ、そしてテオドールは、街に繰り出して飲み歩いていた。

「ご主人様、もう一杯どうぞ」

「フン、寄越せ。ああそれと、こういう場では立場は気にするな。今は俺は貴様の主人ではない」

「それは有り難い。ではテオドールと呼び捨てにさせてもらっても?」

「構わん! おいエディ、貴様ももっと飲め!」

 テオドールが剛毅な性格で助かった。まあ礼儀がどうこう言うようなタイプでもなさそうだし、こちらとしては万々歳だ。

 

 エディもまた気さくな魔族で、私はすっかり打ち解けていた。

「僕のこともエディと呼んでくれ、カズキ君」

「うむ。では普段通りいかせてもらおう。私はどうも堅苦しいのは嫌いでね。もちろん仕事の時はきちんと使い分けるが」

「ははは、それでいいよ親友。いやあそれにしても、異世界人だというのに見る目があるねぇ。コトネ君の良さがわかるとは!」


 エディもテオドールも酒には強いようだが、かなりの量を呑んでいるだけあって、すっかり出来上がっているようだ。

 まあ、素面でする話でもない。私はまだ未成年だが、こちらの世界では問題ないらしいので頂いておく。

「確かにあれは素晴らしい。小柄な体にも関わらず、あのけしからん胸はどうなっているのだ」

「む、むむむ胸とかいやらしいなカズキ君は! 違う違う、あのクールな雰囲気がいいんじゃないか!」


 立派な角と羽を生やしたインキュバスが、赤くなって否定する。初心なインキュバスとはまた珍妙な。

 酒の力を借りて下卑た話題をする男衆。これはどこの世界でも共通らしい。

 エディはいやらしいいやらしいと繰り返しながら、ペロペロと酒を舐めるようにして飲むテオドールに話題を振った。 


「なぁテオ。君もそう思うだろう? 胸だとか尻だとか太ももだとか、大事なのはそういうんじゃないんだよ!」

「そうだな。俺は脇が好みだ」

「ちょっ、君はそういうキャラだったか!? 長いこと一緒に戦ってきたが、初めて聞いたぞそんなこと!」

「特に汗の匂いがたまらない」

「君そうとう酔ってるだろ!? エイミー君ことをそんな目で……いや鼻で嗅いでいたのか君は!」


 そうとう頭の悪い会話の応酬。これが楽しくてたまらないのはどういうことなのだろう。

 私に、友達などいなかったからかもしれない。

「おいカズキ、貴様はどうだ。どの部位が好みなんだ?」

「部位限定かね……そうだな、私は全てが好みだが、強いて挙げるなら鎖骨だな」

 リーネの鎖骨は特に良い。喉元から恥ずかしがるように一瞬だけ覗かせるあのラインは例えようもないほどだ。

 

「そうか、鎖骨と来たか。カズキ君、やはり君は――只者ではないようだね?」


 それは、まったくの不意打ちだった。

 思わず肯いてしまいそうになるほどの、何気ない一言。自然な流れのようで、誘導されていたのがわかる。

 だが、その答えに詰まってしまった時点で、私は自白しているも同然だ。

 しかし同時に、やはり来たか、という思いもあった。救世主などという大層な看板をぶら下げておいて、疑うなという方が酷だろう。


「どうしてそう思う? 私はただのしがない異世界人だ。取るに足らない凡俗だよ」

「自己評価が低いんだね。実は君が寝ている間、こっそり森を調査したんだ」

「……ほう」

「その結果、膨大な魔力の残り香が見つかったんだけど……どうもおかしな話でね、エイミー君の魔力反応ではなかったんだよ」

 

 そんなことまで調べられるのか、という驚愕を私は浮かべていたのだろう。私の顔色を観察していたエディが、突然噴出すように笑った。

「ふふ、嘘だよ、魔力反応なんて。でも、今の反応は気になるなぁ。まるで心辺りがあるようじゃないか」

「さて、どうだろうな」

 しまった、カマをかけられたか。我ながら迂闊な。


 とはいえ絶対バレてはいけない秘密というわけでもない。リーネの思惑が分からない以上曖昧に濁しておくが、彼らに感づかれたとしても対して支障はないだろう。

 多分。


「おいエディ、何を言っている? カズキは異世界人だろうが。そもそも魔力を使えるのか?」

 テオドールは馬鹿馬鹿しいとばかりに言い放った。

「じゃあこの辺にしておこうか。悪かったね、騙すような真似をして」

「いいや、私なら気にしていない」


 包み隠さず明かすべきなのだろうか。私は友だと認めてもらった彼らに対して、不義理を働いているのではないか。

 そんな感慨に耽る。だが、例の視線がどうしても気になって仕方がない。


 ――いや、ギュスターヴは死んだ。私が殺した。褐色の美女はあれから気配を感じない。ならば残るは後一つ。

 いっそのこと、炙り出してみるべきか?

 相手がもし卑徒なのだとしたら、いずれは相対する定め。釣り出してやるのも一つの手だ。

 

「フン。カズキよ、お前も男ならば鍛えておいて損はないぞ。俺の使用人というならばなおさらだ。ともすれば、本当に救世主の器なのかもしれんからな」

 明日は覚悟しておけ、とテオドール。我が主人は脳筋だから困る。

 私はそんな文句ごと、酒を飲み干すのだった。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 明くる日。ウワバミのようにしこたま飲み明かした私たちだが、皆一様にケロっとしていた。魔族はアルコールには強いのかもしれない。

 ただテオドールやエディが強いだけかもしれないが。ちなみに、私は酔えない体質だ。

 私が用意した朝食をペロリと平らげたテオドールは、そのまま私を連れて修練所へと向かった。またこのパターンである。


 昨日の晩の話をしっかりと覚えていたようで、彼は私を鍛えるのだと息巻いていた。

「エイミーは……いないか」

 辺りを見回して呟いたテオドール。私はしっかりと耳にしていたが、聞かなかったことにしておく。

 

 と、そこへ駆けてきた一つの影があった。黒い軌跡を描いてしなやかに着地したのは、少し幼さを残した猫耳の少女だった。

 そして、ビシッと敬礼する。

「テオドール隊長! 本日もご苦労様であります!」


 これまた美少女である。テオドールと同じ黒い毛並が美しく、くりくりとした瞳が快活そうな雰囲気を醸し出している。

 ホットパンツのような服から生えた尻尾が非常に愛らしい。体のほうはまだ発展途上といったところだろう。

 私と目が合った黒猫少女は、好奇心に目を輝かせて挙手した。

「あ、あなたはもしや、救世主殿ではありませんか!?」

「いいえ。私はただの使用人ですよ、可愛らしいお嬢様」

 

 私が言うと、少女は照れたように笑った。素直に受け入れられたのは喜ばしい。

「ご主人様、こちらの方は?」

「こいつはミラージュ。俺の部下であり《黒の隊》副隊長だ。まだまだ未熟だが、よろしくやってくれ」

 とは言いつつも、テオドールからはミラージュへの絶対の信頼が窺える。このツンデレ狼め。


 ミラージュもまた隊長への信頼、忠誠は見れば分かるほどのものだ。長年に渡り気付かれてきた信頼関係だろう。ぽっと出の私では、まだまだ届かない領域である。

「……ところで、ミラージュがどことなくエイミーに似ている気がするのは私の気のせいでしょうか?」

「お、おい。何を口走っているか貴様! お、俺にそんなつもりは断じてないぞ! 絶対にだ!」


 怪しい。ミラージュは結構露出度が高い上に脇が出ている。趣味で副隊長にしたんじゃなかろうな。

 とはいえミラージュの身のこなしは今しがた見たところだ。実力に関して疑う部分は欠片もない。

 わざとらしく咳払いをしたテオドールが、仕切りなおすようにして言った。

「どうだミラージュ、カズキと模擬戦をしてみるつもりはあるか?」

「よ、よろしいのですか隊長! 救世主殿と手合せさせていただけるとは、これほどの幸福はないであります!」


 またもやキラキラと目を輝かせるミラージュ。そんな目をされて断れる男はいない。

「私は構いませんよ。できれば手加減して下さるとありがたいのですが」

「いえいえいえ滅相もないであります! 自分如きが、そんな大それたことを! ですが是非とも、手合せ願いたいであります!」

 そして敬礼。元気がよくて大変よろしい。


 私とて強くなりたいというのは本音である。実際のところ、魔力を使わない肉弾戦では私の実力などしれているのだ。

 だからこそ意味がある。もし魔力の通じない相手に出会えばそこで終わりなのだから。

 使い勝手のいい力に酔いしれていれば、いつかのように誰かを危険に晒す羽目になる。それだけは避けたい。

 もちろん、魔力のコントロールの訓練は日課としてこなしている。いざ戦闘になれば頼らざるを得ないのもまた真実だ。

 しかし、肉体を鍛えることにもまた意味はあろう。戦闘経験を積むという意味でも。

 

 さらに言えば、美少女とくんずほぐれつしたい。寝技とかかけて欲しい。

 

「では、僕が審判を務めよう」

 と、どこからともなく現れたエディが申し出た。風もないというのに揺れる長髪が悩ましい。

 相も変わらずの美男子っぷりである。隣にはコトネの姿があった。さては私をダシにして連れ出したな?

 コトネはクールにこちらを眺めている。私の一挙一動を見逃さぬという体だ。

 

「あわわ、エディ副隊長にコトネ隊長まで……! き、緊張するであります……!」

 身震いするミラージュ。恐らくは武者震いというやつだろう。緊張よりも、ワクワクしている様子だ。

「では僭越ながら、お相手させていただきます。もっとも、期待を裏切らせてしまうことになるでしょうが」


 私は半身になって構える。左手を前に、右手を胴に。そして全身を脱力させる。

 向こうも準備が整ったようだ。グローブを嵌めたミラージュがボクサーのようなファイティングポーズをとる。

 今回は決闘ではなく試合であるため、開始の号令が入る。エディが右腕を掲げ、地下に響き渡る美声を上げた。


「では――はじめっ!」


 号令とほぼ同時、ミラージュの姿が掻き消えた。

「なっ――」


 私が満足に驚愕する暇すら与えてくれない。気付けば完全なミドルレンジ。俊足にて渾身の右フックを放つミラージュ。

 慌てて左手で払う。私の格闘スタイルは左手で牽制または防御を行い、カウンターの右を放つというもの。

 しかし、ミラージュはその隙さえ存在しない。

 払ったはずの右腕が折りたたまれ、肘打ちに変化。しかも軸足の力だけで跳躍して加速を乗せるという人間離れした動きだった。

 そういえば魔族でした。


「ぐっ、!」

 咄嗟に左手でガード。威力を殺しきれないが構わない。肉を切らせて骨を断つ!

 私はカウンターの右拳を繰り出した。手加減するような余裕もない。全力で放ったそれは、しかし為すすべもなくミラージュの左手に阻まれた。

 お互いに決め手を失い、膠着したかのように思われた――

 が。


「ぶべっ!?」

 紳士とは思えない間抜けな悲鳴を上げた私は、あえなく地面に横たわっていた。

 地面の感触を確かめてから、ようやく何が起こったのかを理解。ミラージュは折りたたまれた右肘を伸ばし、私の顔面に裏拳をお見舞いしたのだ。

 見事正中線を射抜かれた私は無様なものだった。あまりにも鮮やかな三連撃に、まるで対抗できなかったのだ。

 しかしこの程度でへこたれる私ではない。エイミーからパンツを奪った男だぞ、私は。


「復っ活!」

「おおっ! 流石は救世主殿であります! 自分の軟な攻撃ではビクともしないのでありますね!」

 そんなことはない。ただのやせ我慢だ。さらに言えば、体内魔力のおかげで傷の回復も早い上にタフなのである。

 情けない話だが、やはり魔力に頼らざるを得ない現状か。

「もう一度こい、ミラージュ!」

「はい、であります!」

 

 なぜか熱血な二人だった。まあ実はこういうノリも嫌いではない私である。

 その後も何度か打ち合ったが、まるで付いていけない。ミラージュ――正しく幻影のように、彼女の姿は掻き消えてしまうのだ。


 スピードを活かしたヒットアンドアウェイ。派手さこそないが、堅実かつ確実な戦い方だ。

 さらに言えば、汗に濡れたショートカットの黒髪や贅肉のない肢体がたまらない。ぐふふ。

 エロスが私の体を突き動かし、一矢報いるべく特攻するものの成果はない。まるで小悪魔に弄ばれる童貞のようだ。

 

 ミラージュを視姦しながら戦っていると、エディとテオドールの会話が鼓膜を叩いた。

「……エディ。貴様はあれに本当に何かあるとでも? 見ろ、あのザマを」

「落ち着きなよテオ。仮にもあの魔王様がご召喚なされたんだ。それに、君だって何かあると思ったから認めたのだろう?」

「……まあ、な」

 そういう会話はもっと小声でするべきではなかろうか。

 すると、エディが手をメガホンのようにして叫ぶ。


「カズキ君、ミラ君、魔力の使用を許可する! 思う存分に戦ってくれ!」

「ほ、本気でありますかエディ副隊長殿! じ、自分などが救世主殿の全力を引き出せるとは思えないのであります! ほら見て下さい、あの表情を……余裕どころか、ニヤついた笑みさえ浮かべているであります!」

 ミラージュが怯えたように言う。そんなに怖がらなくてもいいだろうに。ほら、もっとぶっていいんだよ? ハァハァ。

 などと変態的な思考に沈んでいた私だが、真面目な顔つきでミラージュへと向き直る。


「……ほう、魔力を使ってもいいのかね?」

「……っ!」

 瞬間、ミラージュは後方へ飛びずさっていた。天性の勘とでも言うやつだろうか。危険を察知したのかもしれない。

 まったく大したものだ。私は別段、魔力を使ったわけでもないというのに。

「はは……流石は救世主殿。自分は、ゾクゾクしてきたであります!」

 しかし、ミラージュは興奮したように吼えた。そして魔力を迸らせる。完全な臨戦態勢。スイッチが入ってしまったらしい。


 ならばこちらも乗じるべきだろう。

 やはりここらで釣ってみるのも一興だ。肉弾戦で手も足も出なかった課題に関しては、追々なんとかしなくてはなるまいが。

 私は大仰に構えをとると、右腕に魔力を集中した。


「む……!」

「へえ……!」

 テオドールとエディの嘆息が聞こえる。コトネは変わらず鉄面皮を崩さないが、切れ長の目がさらに細まったのが分かった。

 ミラージュの毛が逆立つ。来るなら来いと言わんばかりの表情だ。正面から受けて立つつもりであるらしい。

「はぁああああああああああああ……!」

 私はとても大げさに叫び、そして瞳をカッと見開いた。そして、適当にそれっぽいポーズ。


「味わうがいい……我が必殺の奥義を!」

 右手を強く突き出す。ミラージュが即座に反応し迎え撃とうとする、が。

「……な、何も起こらないでありま――っ!?」

 それは、彼女にあるまじき油断であった。しかし誰もミラージュを責められまい。これほど派手なパフォーマンスを行っておきながら、異変は彼女の背後から沸き起こったのだから。


「ちょ、何でありますかこれはー!?」

 ミラージュの悲鳴が心地良い。背後から出現した触手が彼女の肢体を絡め捕り、扇情的な格好にさせる。

 ギュスターヴの攻撃を真似しただけのものだが、攻撃力は一切ない。消費した魔力も微々たるものだ。ミラージュの実力ならば簡単に脱出できるだろうに、パニックに陥って冷静な思考が働いていないようだ。


「ぐふふふふ……素晴らしい眺めだなぁ」

「あっ、ん……やん! ちょ、く、食い込んでくるでありますぅううううううう!」

 愉快なり愉快なり。やはり触手に襲われるのは美少女でなければなるまい。

 うーむ、もうちょっと食い込ませてみるか?


 などと下卑た笑みを浮かべていると、隊長たちの呆れ果てた顔が目に入った。

「……エディ、後生だ。頼むから教えてくれ。エイミーは何故あいつを気に入っているんだ……?」

 と、テオドール。

「……僕も、ちょっと自分の見る目を疑わざるを得ないかなぁ……」

「……最低、ね」

 さらにエディとコトネが続く。口々に批判される私。男がエロスに生きて何が悪いというのか。可哀想だと思うのなら助けてやればいいのだ。


 それにこれは試合である。むしろ対応できなかったミラージュにこそ責がある。私に非などない。

 ということでもっとやろう。魔力を使うのなら有効活用しなくては。

「い、いやぁあああああああああああああああああああっ!!」

 劈く乙女の絶叫に酔いしれていたその時、突如として脳内に直接響くかのような声がこだました。


『こちら偵察隊、高魔力反応を感知! 繰り返す、高魔力反応を感知! 卑徒の眷属と思われる個体が四体接近中! 至急応援を!』


 ――来たか。偶然にしては出来過ぎなタイミング。

 それが魔力を用いたテレパシーであると私が感づくよりも早く、彼らは行動に移っていた。


 真っ先に駆けだしたのは隊長であるテオドール、コトネである。二人は矢継ぎ早に指示を出しながら部隊を率いて外へ。

 その場にいた魔族たちの目の色が変わる。ミラージュはいとも容易く触手を引きちぎると、テオドールに続いた。

 エディたち《紫の隊》は城の警護に当たるようで、それぞれが持ち場へと散っていく。

 そんな中、私は一人歩き出した。


「カズキ君、どこへ行く気だ!? 危険だから君も非難した方がいい!」

 エディの静止を背に受けながらも、私は歩みを止めなかった。目指すは魔王の間。そしてリーネに会うために。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 果たして、魔王は玉座に鎮座していた。その美貌を歪め、苦悶の表情を浮かべている。

 リーネは私の姿を見るや否や、クスリと笑った。まるで待ちかねていたとでも言うように。


「一つ提案があるのだが、聞いてくれるかね魔王様?」

「ええ、喜んで。素敵な提案だと期待しておきましょう」

 この状況下で呑気に傍観などしていられるものか。一度世界を奪うと決めたのならば、立ち止まっている暇はない。

 私の憶測が正しければ、相当に危険な賭けになるはず。今の私が信頼に足る力を有しているのかと問われれば、首を横に振らざるを得ないだろう。

 それでも、リーネはとても嬉しそうに微笑んだ。太陽のような、温かい笑み。


「あなたを信じます、カズキ。どうか――私たちに勝利を」

 平穏ではなく、勝利が欲しいか。この魔王もまた貪欲者であるらしい。だがそれでいい。私たちは似た者同士、二人で世界に牙を剥こう。

 全てを喰らい尽くす、その日まで。

  


 

 

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