第一章 5
激しい頭痛が京介を襲った・・。
現実を否定したい思いと現実を理解し始める、心から来るものだった
「時期に・・この頭痛も慣れてくるもんなやろか・・・」
馬鹿な事を呟きながらジャニスから渡された、薬を手にした。
見た目は、ちぃに渡していた薬と見た目は一緒だった
「・・・」
薬を飲むと頭痛は治まり始め、
呼吸も整い始めた・・・
「この感覚は・・ちぃも味わっていたのだろうか・・」
自我・・本体の意識の中の葛藤や交差は想像を絶するものだったに違いない・・
ちぃの事ばかり考える、女々しい自分に気がつき始めた・・・
「今更・・何を考えているんだ・・・俺は・・」
駅に着いた・・
新幹線のチケットを買いに 窓口へ・・
窓口は人が大勢並んでいた
「皆、何所に行くのだろう・・・」
「俺には時間が沢山ある・・行き先も何となくしか分からない・・のんびり向かうか・・」
最後列に並んだ・・
しばらく離れる東京・・
自分が東京へ出てきたばかりの事を思い出した・・
関西に居れない状況になり身を隠すように関東へ出てきて小さな会社に就職・・
それでも、尚、関西のしがらみで纏わりつく黒い影
その中でしか 意気揚々としか出来なかった。
そのうち、過去は理解され、和解し
関東の闇にのめり込んでいった自分・・
闇の世界で生き続け、裏の力も金も好き放題にし、いくつもの「傀儡」を作り犠牲者をだした・・
そのこと自体にも罪悪感もなく使い捨ての人形的にしか思って無かった
心など必要無い・・
感情など無意味だ・・
いつの日か思い込んでいた
ちぃとの出会い・・
最初はプラン進行の為の「傀儡」としか考えていなかった・・
羞恥を与え、そこに絶対的なものを植え付ける・・
薬、催眠などを使う、一番ハードな「禁じ手」をぶつけていた事に
今更ながら気が付いた・・
感覚麻痺・・・プラン遂行の為の行動・・・
最初の頃であったら、この手法は躊躇してであろう・・・
心を理解し始めると自分が破滅する・・
分かっていたはずだ・・
ちぃは恐らく京介を理解し始めたのであろう・・・
最後・・
『ありがとう・・こんなんで・・ごめんね・・』
傀儡を作り、取り込まれていたの自分・・・。
いや違う・・ちぃは傀儡なんかじゃない・・
全て俺が悪いんだ・・・全て・・
過去を振り返るとちぃとの時間のフラッシュバック
後悔と切なさどうしても 「IF」を考えてしまう・・。
それが フラッシュバックや頭痛の原因でもあった・・。
「今更・・・」
新幹線のチケットを購入し新幹線乗り場へ向かった
人込みに揉まれながらホームへ・・
京介は新幹線を混雑の為一本遅らせた
「急ぎの用ではない・・からな・・」
先立つ新幹線をぼんやり眺めていた・・・
「・・・」
京介は新幹線の中の、ひとりの女を見ていた・・
「ちぃと同じくらいの歳かな・・髪型、服装・・似てるな・・」
遠目で見る女は、本当にちぃに似てるかどうかは分からない
・・いないはずのちぃを無意識に探していた。
新幹線が出る時、その女は窓際へ座った
女は視線を感じたのか京介の方を見た
発車の合図と共に新幹線は走りだした・・
「グォォォー・・ガタンガタン・・」
ゆっくり走り始めた
新幹線の女は目で追うように京介を見ていた
京介も、その女を眼で追っていた・・
「ジロジロ・・見すぎてたかもな・・・」
京介は夕焼けの写真とちぃの写真を眺め、次の新幹線を待った




