疑問符と空白についてのメモ
疑問符に文が続く場合に、続く文との間に空白を設けるべきか否かという議論がある。
周知の通り、小説作法としては、疑問符の後ろに文が続く場合は空白を設けるべしとされている。その一方で、その理由が分からないからどうでもいい、もしくは設ける必要はないんじゃないかという意見もある。
まず最初に、疑問符とはどのような性質を持つものであるか検討したい。
1946年(昭和21年)に文部省教科書局調査課国語調査室(当時)が作成した『くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)』には、
一、疑問符は、原則として普通の文には用ひない。たゞし必要に応じて疑問の口調を示す場合に用ひる。
例 「えゝ? なんですつて?」
二、質問や反問の言葉調子の時に用ひる。
例 「さういたしますと、やがて龍りう宮へお著きになるでせう。」
「龍宮へ?」
三、漫画などで無言で疑問の意をあらはす時に用ひる。
と説明されている。
他方、ウィキペディアでは、『疑問符は元来の日本語の書法にはない。俗に、疑問文の最後に置かれるが、この記号が「文の最後を上げて発音する」ことを想起させるため、必要がなければ用いないこともあり、作家の中には自身の作品の会話文に決して疑問符を使わない人物もいる(笠井潔、石田衣良など)。逆に、疑問文でない文でも、末尾を上げて発音することをほのめかすために疑問符が用いられるケースがみられる。
現代における日本語の書法では、疑問符・感嘆符(!)は基本的に文章の終止を表すため、その後ろに句点は用いない。』と説明されている。
以上を踏まえると、疑問符は、
1 イントネーション(が上昇調であること)を表すために用いる符号である
2 文の終止を表す符号である
といえる。
例えば、"疑問符は文の終止を表す"という立場からすると、
「新しい?本は捨てたわ」
という文は、"新しい?"と"本は捨てたわ"という二つの文であると解釈するべきであり、"新しいかどうか自信ないけど一応新しいと思える本"という修飾的な解釈は不適切である。
また、
「これでいいのかな?って思ったのさ」
という文は、疑問符が文の終止を表すことを考えると、
「「これでいいのかな?」って思ったのさ」
という文の引用符(内側のカギカッコ)の省略などと見なさざるを得ない。
とは言え、上記の例文に類似する文はあちこちで見られ、そこでは疑問符の終止符としての性質は弱いか、考慮されていないものと思われる。
以上より、疑問符で文が終止している場合には、視覚的にそれを明らかにするために、続く文との間に空白を設けた方が好ましいと考える。
作文の練習でした。初稿20100701。