第34黒 理論を壊す――凡才の意地が天才を超えた瞬間
――蒼光の最深部、ウィザーの秘密の研究室。
――瓦礫の中。
「……はぁ……ッ」
ヴェルミナが膝をつき、視界が揺れる。
(重い……)
ただの一撃で、内臓まで揺さぶられた。
アポクリファがゆっくりとこちらへ向き直る。
ギチ……ギチ……
肉と骨が擦れるような音。
「……冗談じゃないわね」
血を拭いながら、吐き捨てる。
「こんなの……魔法の範疇じゃないでしょ」
ウィザーの嘲笑う声。
「当然よ」
リィナと斬り結びながらも、余裕すら感じさせる。
「既存の理論を超えているんだから」
「……相変わらずね」
ヴェルミナが苦笑する。
「“理解できないものは排除”だったかしら?」
ウィザーは淡々と返す。
「ええ。だから作ったの…”理解できない”存在を」
アポクリファが踏み込み
ズンッ!!!
と床が沈む。
次の瞬間――
≪虚喰爪撃≫
空間ごと抉る一撃。
「ッ!!」
ヴェルミナは影に沈む。
≪影潜行≫
だが――
影ごと“引き裂かれる”。
「なっ……!?」
地面から引きずり出されるように弾き飛ばされ、
血塗れで地面を転がる。
「かはぁッ!?」
受け身を取ったものの、
肋骨が折れ激痛が走る。
「まさか、私が見えてる……?」
動揺するヴェルミナにウィザーが笑みを浮かべ答える。
「当たり前でしょ?」
「それ、元々“私が編み出した理論”なんだから」
ウィザーが淡く笑う。
「私の技術を頑張ってアレンジしたみたいだけど、所詮は凡才。」
「紛い物が“本物”に勝てると思う?」
ヴェルミナの表情が歪む。
「…っ!」
「昔も今も、あなたは私の後ろを追いかけることしか出来ないのよ。」
沈黙。
そして――
「……はは」
血を吐きながら、ヴェルミナが笑った。
「やっぱりムカつくわね、あんた」
杖を構え直し、影が広がる。
「でも…」
目は鋭い。
「それは“基礎”の話。だからそこから”応用”したのよ!」
≪幻影歪曲≫
その瞬間――影が“歪む”。
不規則に、予測不能に。
「……?」
ウィザーの眉が僅かに動く。
「何それ……?」
ヴェルミナが笑う。
「応用したと言ったでしょ?”凡才”にだって維持は意地はあるの。」
アポクリファが再び咆哮。
≪断罪連撃≫
連続斬撃。
だが――
ヒュンッ!!
ヴェルミナは“紙一重”で回避する。
「……!」
さっきより、見えている。
(それも……動きだけじゃない)
ヴェルミナの視線が走る。
アポクリファの“胸部”。
黒い核が一瞬だけ、脈打つのに気付く。
「……あれね」
次の瞬間。
ズドォン!!
再びアポクリファの攻撃で、吹き飛ばされるヴァルミナ。
「ぐっ……!!」
だが――
その口元は、笑っている。
「……見えた」
「ヴェルミナ!?」
離れた場所で戦っていたリィナが叫ぶ。
「聞きなさい!リィナ!!」
ヴェルミナも血を吐きながら叫ぶ。
「コイツには――“核”がある!!」
ウィザーの目が細くなる。
「……」
「あの胸の黒い塊!」
ヴェルミナが指を指しながら続ける。
「あそこが魔力の源よ!!」
リィナの瞳が鋭くなる。
「……なるほど」
だが――
ウィザーが口を開き冷く見下す。
「気付いたところで、
届かなければ意味がないわ」
アポクリファが前に立ちはだかる。
「そうね」
ヴェルミナが笑う。
「だから――」
影が広がる。
「“届かせる”のよ」
リィナが構える。
「……やれるの?」
ヴェルミナが肩をすくめる。
「誰に言ってんのよ」
一瞬、視線が交わる。
「行くわよ」
「ええ」
同時に踏み込む。
ヴェルミナが呪詛結界を展開。
≪影束縛・歪曲展開≫
影が“空間ごと歪める”。
アポクリファの動きが一瞬だけズレる。
「今よ!!」
リィナが加速する。
≪黒百合斬!!≫
闇を纏った高速の斬撃を放つ。
アポクリファも迎撃の構えを見せた。
≪虚喰砲≫
だが――
軌道が“歪む”。
「なっ……!?」
ウィザーが初めて声を上げる。
ヴェルミナが笑う。
「予測できないでしょ?」
「“あんたの理論の外側”よ」
リィナが懐へ突っ込む。
「終わりよ!!」
剣が振り抜かれる。
≪黒龍断閃!!≫
ザァァァァッ!!!
闇の刃がアポクリファの核を、貫く。
一瞬の静寂。
そして――
ビキィッ
亀裂が全身に走る。
「……!」
ウィザーの瞳が揺れ
アポクリファが、崩れていく。
「馬鹿な……ありえない……!」
ヴェルミナが息を吐き静かに言う。
「あるのよ」
「“あんたの知らない答え”がね」
アポクリファが完全に崩壊し爆発。
煙が晴れる。
そこに残ったのは――
ウィザーただ1人。




