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黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第一章 最初のメインターゲット 大魔導士、ウィザー=アルヴァレン編

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第27黒 蒼光剣士カイラン VS 元魔王カイゼル

 

 ――再侵入、禁忌の導線――

 夜の魔都エルヴァーネ

 静まり返っていた王国魔法協会本部に火が放たれレジスタンス達が突入する。


「私に続け!!!我々で協会の魔の手から王都を解放するのだ!!」


 リーダー・ライラの号令にメンバー達も雄たけびを上げながら後に続く。


「レジスタンスに栄光あれ!!」


 だがこれは本命ではない。


 狙いは陽動、相手の目をこちらに集中させること、

 だからこそ出来るだけ派手に動いているのだ。



「向こうも始まったみたいね。私達も行きましょう。」


 リィナ達は協会の地下、表の地図には存在しない“歪んだ通路”を進む。


「……ここよ」


 先を歩くのは、ヴェルミナ=ブラッドムーン。

 黒と深紫の魔女服が、結界の残滓(ざんし)を弾くように揺れる。


「……この協会、無駄に増築を繰り返したせいで“死んだ導線”が多いの」


 指先で空間をなぞると、空気が歪み、隠されていた階段が露わになる。


「禁呪保管庫へ繋がる、廃棄ルート。

 今は誰も使ってない――だから、誰も警戒してない」


「……合理的ですねぇ」

 シルフィが感心したように(ささや)く。


「静かです……巡回も、ありませんよぉ」


「そりゃそうよ」

 ヴェルミナは肩をすくめる。


「“内側”が一番、安全だと思ってる組織ほど、こういう場所は盲点なの」


 リィナは無言で歩きながら、周囲を見渡す。

 魔力の流れ、結界の継ぎ目、足元に残る術式が摩耗している。


「……これはルシオの魔法の残滓」


 低く呟く。


「ええ」

 ヴェルミナの声が、一瞬だけ硬くなる。

「あなたが以前空けた穴、その“穴”がまだ塞がってない」


 彼女は立ち止まり、振り返る。


「つまり――」

「ここから先は、魔法協会にとって“想定外”」


 シルフィが短剣を握り直す。

「ふふ……いいですねぇ。

 想定外って、だいたい楽しいですからぁ」


 通路の奥、青白い光が揺らめく。

 魔法陣の制御中枢――本部深層。


「だけど、気を付けることね。」

 ヴェルミナが歩き出しながら言う。



「ルシオが死んだことも、私達がまだ生きて再び狙っていることに向こうも気付いてる。

 建物内部はきっと罠が待ち構えてあるはずだから。」



「分かってる」

 リィナは即答した。


「…ウィザーならきっとそう考えるから…」



 魔法協会本部・地下中枢へと続く回廊。

 青白い結界灯が一定の間隔で灯り、静寂が張りつめていた。


 その中央に――

 一人の男が立っていた。


 白と青の魔法協会正装。

 腰には細身の剣、刃には淡い光属性魔力が脈動している。


「……残念だったな」


 低く、落ち着いた声。


 カイラン=ブルーム。

 蒼光剣士隊長、そして――

 ルシオと共に戦場に立ち、彼の死を目の当たりにした男。


「退け」


 剣を抜かずに告げる。


「これ以上、進ませるわけにはいかない」


 リィナは足を止めない。

 赤い瞳が、感情を排したままカイランを映す。


「……邪魔よ」


 その一言で、空気が張り裂けた。


 次の瞬間――


 光が走る。


 カイランの剣が抜かれ、蒼い軌跡を描いて振るわれた。

 同時に、リィナのダーク・リベリオンが闇を引き裂く。


 ――激突。


 金属音が重なり、衝撃波が回廊を震わせる。


「っ……!」


 カイランが一歩踏み込み、連撃。

 光属性を帯びた剣が、正確無比に急所を狙う。


「相変わらず速い……ですねぇ」

 後方でシルフィが息を潜める。


「この剣技、相当鍛えられてる……」


 だが、リィナは退かない。


「……()()()()()、という噂は本当らしいな」


 カイランが歯を食いしばる。


「だが――悪党に成り下がった剣じゃ、俺には勝てない!」


「違うわ」


 リィナの声は、冷たい。


「私はただ”回収”してるだけよ…」


 その言葉を聞いたカイゼルが、嬉しそうに笑うとリィナの前に出る。


「さて、ここからは俺が相手しよう。」


 黒い外套が揺れる。


 その身体から、じわりと闇の魔力が滲み出した。


「お前にはやるべきことがある。それに…」


 視線が向く。蒼光剣士カイランへ。


「こんな美味しそうな獲物、そうはいないからな。」

 カイランの瞳が細くなる。


 その時、リィナは短く言った。


「分かったわ。」


 迷いはない。

 仲間と共に、先へ進む。


 石床を叩く足音が遠ざかる。


 カイランが口を開く。

「前に会った時は気付かなかったが…この魔力。お前…()()だな?」

 

 剣をゆっくりと構える。


 カイゼルは肩をすくめた。

「まぁ…()だがな。」


 その瞬間。


 カイランが笑った。


「ハハハッ……!」



「これは傑作だ。自分を討ち取った相手の()()になるとはな。」


「魔王も随分と落ちぶれたもんだ。」


 空気が冷える。


 カイゼルの笑みが消えた。


「…おい。勘違いするなよ。」


 カイゼルの足元に黒い魔法陣が展開する。


「俺とリィナはあくまで協力者の関係。

 くだらない減らず口を二度と言えなくなるように俺の力をその身に刻み付けてやろう」


 闇の魔力が腕に巻きつき、黒い稲妻が走る。


「面白い、やってみろ!!元魔王!!!」


 カイランの目が燃え、剣を振り上げる。




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