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黒のカサブランカ ――裏切られし女勇者、闇に堕ちて魔王となる――  作者: 小鳥遊 千夜
第一章 最初のメインターゲット 大魔導士、ウィザー=アルヴァレン編

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25/38

第25黒 会長死亡、そして天才魔導士が頂点へ――蒼光塔に広がる疑惑 

 



 (セイクリッド)(アズライト)塔・中層通路。

 翌朝。夜の戦闘の痕はまだ生々しく残っていた。


 砕けた石床に焦げた柱。

 魔導灯の破片が床に散らばり、青白い光が弱く瞬いている。


 その通路に、三人の影が立っていた。


 蒼光剣士隊長 カイラン。

 蒼光僧兵長  リオネル。

 暗殺部隊隊長 ヴァレン。


 重たい沈黙の中――

 廊下の奥から一人の協会兵が駆け込んできた。


「報告します!」


 息を切らしながら膝をつく。


 三人の視線が一斉に向いた。

 兵士は一瞬だけ躊躇い――


 そして言った。


「本日未明、蒼光本部上層会にて……」


 喉を鳴らす。


「魔法協会会長、セラフィム=ルクレール様が死亡」


 空気が凍った。


「なお、現在……

 蒼光の大魔導士ウィザー=ヴァレンタイン様が…」


 一瞬言葉を選び、


「新たな魔法協会の最高責任者として、全塔に通達が出されました」


 兵士はそれ以上言わず、頭を下げたまま固まる。


 最初に声を出したのはリオネルだった。


「……は?」


 完全に間の抜けた声だった。


「ちょ、ちょっと待て」


 杖を持つ手が震えている。


「会長が死んだ……?」


「で、ウィザー様が……トップ?」


 兵士は静かに頷いた。


「はい……」


 それだけ言って、兵士は退がっていった。


 残されたのは三人の長い沈黙。


 最初に口を開いたのはヴァレンだった。


「へぇ……」


 壁にもたれたまま、短剣を指先でくるくる回す。


 カチ、カチ、と軽い金属音。


「そう来たか」


 リオネルが顔を上げカイランを見る。


「……おい、これって……おかしくないか?」


 カイランは腕を組み、しばらく何も言わなかったが

 やがて、低く頷く。


「……ああ」


 リオネルが一歩踏み出す。


「だろ!?」


 声が荒くなる。


「会長がいきなり死亡で、その直後にウィザーがトップ?」


「そんな偶然あるかよ……」


 ヴァレンが小さく笑う。


「ないね」

 あっさり言った。


 リオネルが振り向く。

「やっぱりそう思うだろ!?」


 ヴァレンは肩をすくめる。


「十中八九、ウィザーがやったんだろうね」


 その言葉に空気が重く沈む。


 カイランの眉がわずかに動いた。


「証拠はない」


 それだけ言う。


 リオネルが振り返る。


「いやでも――」


 カイランは遮りわずかに目を細める。


「だが、状況だけ見れば……そう疑われても仕方ない」


 リオネルの顔がさらに青くなる。


「……マジかよ」


 杖を握る手が震える。


「そんな奴がトップに立ったってことか……」


 視線が揺れる。


「次は……俺たちじゃないのか……?」


 不安が滲む。


 カイランはゆっくりと剣の柄を握った。


 蒼光の刃がわずかに光る。


「俺は蒼光剣士だ。誰が協会長になろうと関係ない」


 カイランは続ける。


「協会がある限り、俺はそれに尽くす」


 その言葉には迷いがなかった。


 リオネルは驚いた声で叫ぶ。


「……正気かよッ!!上司殺すような奴だぞ?」


 カイランは答えない。


 ただ前を見ている。


 その横で、ヴァレンが笑った。


「…いやぁ~。相変わらず真面目だねぇ」


 短剣を回す。


「俺には無理だな」


 リオネルが聞く。


「じゃあお前はどうするんだ?」


 ヴァレンは少しだけ考えるふりをして

 天井の魔導灯を見上げる。


 そして――にやりと笑った。


「さて、どうしようかな。」


 ヴァレンの視線が、蒼光塔の奥へ向く。


 そこにいるのは――


 新しい支配者か。


 それとも。


 塔を崩す女帝か。


 ヴァレンは小さく呟き口元が歪む。


「この塔で、誰が最後に笑うんだろうね」





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